88.こじらせカップルに注がれる、ハンパない酒の力!のはずが……さらに変態になった、悪女なのでございまふ!?
皆ひゃまこんばんにゃ。
前世ではアルコールけっこうイケる口だった、私ことエリザベート16歳。
ただいまワイングラス3杯で、完璧に酔っ払って、おりまふ。
どうやら今世のリジーちゃんは、可哀想な肝臓と消化酵素の持ち主のようですね。
前世と同じノリで飲んでいたら、あっという間に足元がふわふわして目の前をチカチカお星様が飛びはじめちゃったのですぅぅ、うふふふふ(笑)
と、誰宛にか分からない自己紹介をしてみるリジーちゃん。
いえ、本当はね、ヘルムフリート青年と王女殿下ことリーゼロッテ様を、イイ感じに酔わせる予定だったのでふよ。
そして2人とも心に溜まったモヤモヤを洗いざらい吐き出して、スッキリ仲直り♡
というシナリオを、描いていたのでごじゃいまふ。
が! フタを開けてみればなんと!
「いつの間に、リジーはこんなに飲んだんだい……もっと注意しておくべきだったな」 これは父がコメカミ押さえている声。
「わたくしも。うっかりしていたわ、ごめんなさい」 と天使様な母の曇り声。
両親がウッカリさんだったのもごもっとも。
だってリジーちゃん、普段はほとんど飲みませんからね!
酩酊感が好きではない、のです。
「ごめんなさい、ドンドンと注いでいただけるものだからお礼に注いで差し上げていたのが余計だったのね」
「私もです……申し訳ない」
これは王女殿下とヘルムフリート青年。
「いえ止めなかった俺が」 と、シド。
「「私たちも……申し訳のうございますっ」」
2人ハモっておられるのは、ナターシャとファルカさんですね!
「いいのよぉぅ……わたくひがウッカリ飲んじゃったのがイケないんですわぁ……うふふふ。さぁ、皆さまもっと、召し上がれ?」
これは? リジーちゃん!
ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん! 大正解、なのですぅ♡
なんでだか私1人が酔っているなんて、恥ずかしすぎますものね!
皆さんももっと召しませ、ドンドンと!なのでございます。
「シド、すまないがリジーからボトルを取り上げてくれるかな」
「かしこまりました旦那様」
ふっお父様にシドさん、その手には乗りませんことよ!
「いーやーでーごーざーいーまーすぅぅぅ♪」酔っていても逃げるくらいワケないのですっ
「リーゼロッテ様、失礼いたしますわねっ」
軽く押してテーブルと椅子の間を駆け抜ければ、「きゃ」と可愛らしく声を上げられる王女殿下。
ささっとすかさず受け止めるヘルムフリート青年。ナイスです!
「あら、ありがとう」少し頬を染めるリーゼロッテ様に「いえ当然のことですよ」とソツなくデキる男っぷりを宣伝するヘルムフリート青年。
ナチュラルな流れで寄り添う2人っ♡
読み通りですね!
リジーちゃん、イイ仕事してますね!
向こうで父が「誠に申し訳なく存じますっ」と這いつくばりかけ、天使様な母のお顔が青ざめてますが。
リジーちゃん、酔っ払いだからよくわかんないもんっ
「うふふふふ。さぁっ、お2人様ご案内ですわー」
ワインボトルをだんっ、とテーブルの上に置き、ズンズンズンズンと王女殿下とヘルムフリート青年を廊下へ押し出します。
「ファルカ、申し訳ないけれどデザート2人分は客用寝室に運んでね」
酔っていてもこの程度は気付くのですよ、どうだっ。
言い置いて再び王女殿下とヘルムフリート青年をズズズズイっと押すリジーちゃん。
「さぁ、客用寝室にご案内しまふわ♡2人きり、で思うさま、お話しあってくださいませね♡」
「えっ、そ、そんな……」
「あらーご結婚されるのでしたら、解きたい誤解を解ける程度の間柄になった方が宜しいでしょう、お姉様?」
「そんな、誤解だなんてされてないしっ」とリーゼロッテ様。
「そうですよ、誤解などしていませんが」こちらはヘルムフリート青年。
「あらあらあら」ちっちっち、と指を振るリジーちゃん。
酔っていると普段、思い掛けない言動が出てくるものですねぇ!自分でもびっくり、なのです。
折もよろしく、客用寝室に到達しましたし、ここはリジーちゃんがひとはだ脱いじゃいましょうっ!
「やめなさいナニ本気で脱ごうとしてるんですか」とシドさん。
そうだった、違った。てへ。
仕切り直して。
「ではわたくしが、王女殿下の代わりに真実を!暴露して差し上げますわ」ビシィッとヘルムフリート青年に扇を突き付けます。
「まずその1!ラズール様には、嫉妬するだけムダなのですぅ!悔しければ、ご自分があれだけの色気を身に付ければよろしいのですぅ!」
「え、それヤダ」
王女殿下が呟きました。
なんとな?フェロモンたっぷりのヘルムフリート青年より、今のままの鉄壁ノーブル様の方がイイのですか!?
愛、ですねぇ♡ほぉぉぉぉう(タメイキ)
「その2!王女殿下の美少年趣味は、タダの趣味ですぅ!ジュエリー蒐集となんら代わりはないのですから、割り切って認めて差し上げてくらさいませ、ねぇぇ?」
「そうよ、その通り!」と王女殿下。
「複雑ですね」とヘルムフリート青年。
「蒐集物が、その。殿下に恋しないとも限りませんし」
うぉぉぉ!そんなこと心配してるなんてアナタ!
そんなん言ってたら、ロティーたんに恋してる人なんてきっとメチャいますよ?
本音ではその人たち全部潰したいんでしょうね、ヘルたんったら!
ちっちゃいですね!ノーブルなんて上辺だけですよね!
笑っちゃいますよ、もうっ!
「やぁだぁ、ヘルたんたら、かぁわぁいぃぃぃいぃぃぃ!」
バシバシとヘルたんの胸元を叩いて大笑いしていると、ぱん、と手を掴まれました。
「やりすぎです、お嬢様」おや。シドったら。
嫉妬してるんですか?んん?
「主が申し訳ないことを。酔いが醒めたら改めて謝罪させますので」
おぉ!金茶の髪の鉄壁ノーブル青年に跪く黒髪の美青年!?
いやぁぁぁん!素敵!もっと見たい!
再び扇でびしいっとヘルムフリート青年を示すリジーちゃん!
「その3っ!従者扱いのままの方が落ち着くなら、はっきりそう言って差し上げるべきですわ!」
「え。い、いやそれは」ヘドモドされるヘルムフリート青年。
「婚約するからって、リーゼロッテ様のお髪を結ってはいけない、とかそんな法律はないと思いますわっ!」
「確かに無いわね」と呟く王女殿下。
ほらね。
「さぁ、本音をぶちまけるのですわヘルムフリート様!『いきなり扱いが変わるなんて寂しいっ!私は一生貴女の奴隷です』ですわよ、せーの!」
「い、いえ、一生奴隷とかはちょっと……確かに少しそんな扱いだったかもしれないけれど……で、でも!」
顔を赤くしてヘドモドしておられるのは意外にも王女殿下の方です!
はぅぅぅぅぅっ(感嘆)ビバ♡ギャップ萌え♡
「きゃぁぁぁぁあ!ロティーたんもかわゆいぃぃぃぃぃ♡」
立派なお胸に取り憑いてユスユスしていると、またしてもシドさんに首根っこ掴んで引き戻されてしまいました。
「なぁに?シドたん?妬いてるのぉぉ?」
「そんなわけないでしょう。バカですか」
「うーんーでもでもでも、心配しないでねっ」 んー、最近のリジーちゃんは、シドさんのこと考えると顔面崩壊しちゃいますねぇ!
バカって言われる、はずですねぇ!
だって。
「いちばん愛してるのはシドたんですからねぇぇ」
えへえへ笑いつつ、シドのお口にうちゅぅっっと……するには身長差がっ!
お酒には肉体改造の効能はないのです、残念。
仕方ないので、シャツのボタンを外して固いお胸をペロペロさせていただきます。
「ちょ、ちょっと、リジーちゃん!?」 と、王女殿下。
「と、止めないんですかシドさん!?」 こちらは、ヘルムフリート青年。
2人とも焦っておられるようですねぇ?
どうしてかなぁ?
「うん、美味しい塩味ぃぃ♡」
「いい加減にしなさい、お嬢様」
「ええ? いつもはもっとスゴいことさせてくれるのに……!?」
王女殿下とヘルムフリート青年が同時に息を飲んでいる気配。
「デタラメ言うな。バカですか」
「デタラメじゃないもぉん! シドたんのおカラダで触っていないところは、あとアレだけだもぉん!」
あ、ついでだから酔った勢いで触っちゃおうかな?
「コラやめなさい、人前で」
「えぇぇぇ? じゃあ、誰も見てなかったら、イイのぉぅ?」
「婚約もしてないのにダメに決まってるでしょう。バカですか」
カッチーン、と固まった感じの棒読み可愛いっ♡ 可愛いのですっ♡
「やだぁぁぁぁぁ! やっぱり、シドたんがいちばん、かぁわぁいいぃぃぃぃぃ♡ ふふふふふ♡」
ペタペタと胸やお腹を触っていると、笑いとともに温かい気持ちがこみあげてきます。
そっかぁ、愛ってこうして溢れて出てくる気持ちだったのね! くふふふふふ(笑)
「シドたん、愛してるからねぇぇぇ♡」
「知ってます」
リジーちゃんたちのやりとりに、リーゼロッテ様とヘルムフリート青年は、かなり引いているもよう。
そりゃそうですよね!
私だって、酔ってなければ引いちゃいますよぅぅ。
でも。
大事なことは何も言わずに、ただイイ人ぶってた前世は後悔することばかりだったもんねぇっ!?
チャンスは逃さず活用すべき! なのですぅっ
たとえ酔っ払っていようともぅっ!
「えーとジェット。あなたリジーちゃんと婚約するの?」
なんだか遠いめに、リーゼロッテ様のお声が聞こえます。
「はい」 と、これはシドの声。
「確か、ジンナ帝国宰相家にもらわれると噂では」
あー。きっとラズール青年経由なんでしょうね、その噂。
「ジンナ帝国宰相家? なぜそんな……」
ああ。ヘルムフリート青年の声がだんだん、遠のいていってますねぇ。
最後にシドの声が聞きたいな。
「お話すれば短いんで話し……」
おお。ちょっと本気で願ったら、望みが叶っちまいましたよ。
まるで安っぽい流行歌のようですねぇぇ……でも。
嬉しいったら、嬉しいなっ♡
そんなフワフワした想いを最後に、リジーちゃんの意識は、闇に飲まれたのでした。
読んでいただきありがとうございまふ。くすくす(笑)と、本文に合わせてちょっと調子に乗ってみました。