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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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81/201

81.プロポーズ拒否から始まる首フェチ取材!フェロモン青年のディープな世界にクラクラな変態悪女、なのです!?

 さて、そんなこんなで3月(マルティウス)は5日。


 旅行から戻ってさほど日が経たないうちに、アリメンティス公爵家に向かった父と、私ことエリザベート・クローディス、そして単なる従者のフリをして髭メガネでプチ変装しているシドさん。


 現在、父はアリメンティス公爵様ご夫妻と気まずくお話し中。

 リジーちゃんは、ラズール青年と雪に覆われたお庭を散策中。

 シドは2、3歩下がって歩きつつ、そんな私たちにジト目をたっぷり注ぎ中、でございます。


 なぜこういう運びになったかといえば、それは。


 お断りと謝罪自体は、とってもスムーズだったのです。


 グァン家からいただいたプロポーズの証拠物件を並べ 「スミマセン実はこっちの方が若干早くて」 などと、捏造した経緯を語る父。


 これまで清廉潔白、品行方正な人だと信じていたんですが……


(嘘をつくときでも、その清々しい佇まいのままってマジですか!?) と、娘からの見る目は若干変わってしまいましたよ、ええ。


 それにも気付かず、父はキレイなハンカチを取り出して涙など抑えておりました。


「このような有難いお話しをいただきながらっ。

 しかし、ジンナ帝国は宰相家からの縁談を断るのも、また……」


「それはそうでしょうとも!」 ウンウンと頷くアリメンティス公爵夫妻。


「国際関係にも響きますから、当然のご判断です」


「そのようなこととは露知らず、失礼いたしましたわ」


 口々に言って下さいました。


 意外といい人たちのようですね!

 ちょっと前に 『権力をかさに着て』 みたいな誤解をしてゴメンナサイ。


 ……と感心したリジーちゃんでしたが。


 なぜかシメに。


「お帰りになる前に温室を見ていらしてね?」


「そうそう、それがいい! ラズール、案内して差し上げなさい」


 またしても口々に言って下さった、というわけなのです。


 どうして、この後に及んでまだ 『後は若いお二人で』 的シチュエーションに持っていこうとするんですかね?


 ちょっとばかし、イラっとしますね!


 ……けれど。

 さすが公爵家のお庭、雪に覆われていても見事なものです。


 凍った池に映り込む、ナナカマドの赤い実とそれに群がる小鳥たち。

 賑やかな上に、雪とのコントラストも美しいですね!

 きっと、四季折々を計算して造られているのでしょう。


 そして今、リジーちゃんたちが歩いているのは、モミの林。


 遠目には、雪の下から覗く深緑も鮮やか。

 中に入れば、張り出した緑の天井から下がった氷柱が目を惹きます。


 ほんの時たま、ポタリと溶け落ちる水滴に若干、春の足音を感じますねぇ……!


 そんな林の中の、雪が薄くて歩きやすい道をサクサクと行きつつ、リジーちゃんとラズール青年が真剣な顔で話し合っているのは……。



「うーん、首フェチかぁ」


 この寒さでもマフラーなどしていない首に手をあて、リーゼロッテ様と同じ角度で小首をかしげるラズール青年。


「ええ。取材も何度かしたのですけど……書けるほどのネタが上がらないのですわ」


 ごめんなさいシドさん。

 内心で両手を合わせて背後を拝みつつも、利用できるものは利用しちゃうのですっ!


 やはりラズール ″鬼スズメ″ ユーベル先生ほどのエロアドバイザーさんはいませんからね!


 ……ほんとごめんね、シドさん。


 埋め合わせに、次の手フェチ取材こそは、シドだけに頼ろうと思います。


 と、それはさておき。

 リジーちゃんの言葉に、ピタリと足を止めるラズール青年。


「何度も取材? どうやって? よかった?」


「何度 『も』 ではなく 『か』 ですわ」


「で? ドコがよかったの? 言ってごらん?」


「そ、それは……」


 あうううう。

 どうやら、アドバイスとは別方向の好奇心を刺激してしまったようです。


 でも、答えられません。


『シドさんからだと、最近は、どこ愛でられてもロティーナちゃんが降臨して困ります』 だなんて。


「んん? 言・っ・て・ご・ら・ん?」


 ラピスラズリとタイガーアイの、キレイな双眸が、間近で妖しく揺れております。

 めちゃくちゃ嬉しそうですね!

 ケシカランのです……っ!


「う……それはっ!」

 これ以上近寄られると、何かヤバい。


 ここは、別方向へ逃げてみましょうっ。


「ちょっとゴリゴリ感のある男性らしい筋ですとか、キュッと飛び出た美味しそうな喉仏ですとか、キレイな鎖骨ですとかっ」


「ああ」 ふむふむ、とうなずくラズール ″鬼スズメ″ 様。


「聞いてるとちょっと萌えてきちゃったな」

 わざわざコートとシャツの胸元をはだけ、身をかがめて、お首を晒してくださいます。


「僕のもかじってみてくれる?」


「……………!」


 言うと思いましたよ!

 こういうお人なんですよ!


「ほら、遠慮はいらないよ? なかなかイイでしょ?」


 もう……!

 いっそのこと、食いついて、かみちぎって差し上げようかしらっ!


 ……ぎりぎりと、固そうな首筋を睨み付けていると。


『悲報! 公爵家の庭で起こる血みどろ殺人! 陰には愛憎うずまく三角関係が……!?』

 みたいな特報記事を、ジグムントさんが涙を流しつつせっせと刷っている様子が、脳裏に浮かんできました。


 ……うん、かみちぎるのはダメだな。……


 と、ここで。


「失礼」 背後からずずずいっと割り込んできたのは、シドさんです。


「申し訳ありませんが、俺の主は虫歯がまた増えて総入れ歯になったので、固い物はかじれないんですよ」


 黒い笑みを浮かべつつ、ラズール青年の胸元をひっつかみ、首に口を近付けています。


 きゃああっ! シドさん!

 アナタ、やっぱり彼のことが!?


 これは見たいっ!


 ……でも、どうしてでしょうか。

 同時に、胸の奥をチクチク突き刺されるような感覚が襲ってきます。


 あれ? 見たいのに、変ですね?

 だって美青年×フェロモン青年ですよ……っ!?

 絶対に、眼福だと思うのですが。


「俺で、ご容赦下さいね」


 シドの歯が今にも、ラズール青年の血の気が失せ鳥肌が立った首に当たりそうになった時。


「だめぇっ!」


 ―――ついウッカリ叫んでしまった、リジーちゃんなのでした。―――




「首フェチって実は、女性の方が多いんだよね」


 イロイロとしまって仕切り直し、再び林の中を散策しながら解説して下さる、ラズール ″鬼スズメ″ ユーベル先生。


「男性は?」


「うーん、僕に限って言えば、嫌いじゃないけど」 やっぱりイイ角度で、小首をかしげておられます。


「すぐ上に唇があって、すぐ下に別の首があるから、どうしても割愛しがちというか」


 ふむ。なるほど。

 どうやら首は、耳以上のスーパーサブ様のようですねっ!


「あ、でも、首というかね。うなじはイイかも」


「うなじ?」


「そう、ここ……って避けなくても!」


 ふっふーんだ!

 ザマヲミナサイマセ!


「ラズール様の行動パターンはお見通しですわっ」


「……そんなこと言ってると、また背後(ウシロ)の人が嫉妬するんじゃない?」


 シドを背後霊みたいに言わないでほしいですねっ。

 ……確かに、ジトンとした目線は感じますけど。


「とにかく、女性の首の萌えポイントは、うなじなのですね?」


「うん、頭の付け根のとこね。

 汚れが溜まりやすくて、独特のニオイがなんとも言えないよね」


 いきなりディープな世界を展開しようとするところ、さすがです!


 しかし汚れって……アナスタシア様には使えない気が。


「け、検討しますわ……」


「うんヨロシク。清楚な美女の汚れた部分ってけっこう、ソソると思うよ?」


 適当に言葉を濁すリジーちゃんにニッコリ微笑み、物凄くディープなダメ押しをしてくださる、ラズール青年なのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)


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