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8.女王様化計画は天然下僕体質の前に初っ端から崩壊です!でも負けず、ペンで極悪最凶目指します。

またまたブクマいただき喜んで小躍りしております!ありがとうございますm(_ _)m

 5歳の誕生日前日。

 計画的通りにお友達……ではなく下僕、をゲットした私ことエリザベート・クローディス。


 まずは悪女らしく 「お前はわたくしのものよ」 と宣言して憎しみと反発の眼差しを浴び、次に、「あら何か文句があって?」 と、靴を脱いで彼の肩を踏み付け……

 そんなプレイを楽し……もとい、主従関係を叩き込む、予定でした。が。


「今日からはお嬢様が俺の主です。お好きなように呼んで下さいませ」


 (ひざまず)く姿勢も敬語も完璧な美少年あと2ヶ月で9歳。

 まさかの天然下僕体質であるようなのです……!

 調子狂っちゃいますよ、もうっ。


「で、では……」


 平然とした余裕の表情を作りつつ、必死に頭の中で『下僕っぽい名前リスト』を繰ります。

 ……相応しい名前、ねぇ。

 めちゃくちゃキレイな子だからルクス(光)とかレグルス(王子)とかがいいかしら?

 いやでも下僕だし!

 悩んじゃいますねぇっ………………


 お!?

 今なんか、とっても良い言葉が脳裏を走りましたよ!

 うん、これにしちゃいましょうっ 


 澄ました顔をキープしつつ宣言です。

(悪女は常に冷静なものですからね!)


「シドにするわ」


「古語のシデレウスからとったのかい?」 ニコニコと父が口を挟み、「ああっ」 と、思わず悲鳴をあげかけるリジーちゃん。


 ネタばらしはやめてお父様、なのですよ!

『シド』だなんて、せっかく下僕っぽい名にできたのにぃぃぃ!

 元が 『シデレウス = 星のように美しい』 だとか……イヤだ、恥ずかしすぎて知られたくないぃぃぃっ!


 しかし父の方は、そんなリジーちゃんの心情は全く意識していない様子です。


「でも君の本来の名前でも良いんだよ。ウチでは君の地位は奴隷でなくて従者とし、人としての権利と生活を保証する。名を棄てる必要はないんだよ」


 諄々(じゅんじゅん)と少年を諭しております。

 ……さてはこれ、リジーちゃんにも、言い聞かせているつもり、なのですね!?


 もしかして、こっそり言ったつもりの悪女台詞、聞かれていたかもっ……!


 でもきっと。

 父の中では 「リジーは幼いからお人形と間違えてるんだな」 的処理がなされているはず。

 そうに違いありませんっ!


 と、リジーちゃんの内心の焦りはさておき。

 その少年は、顔を上げてはっきりとこう言ったのでした。


「いえ。俺はお嬢様からいただいた名がいいです。どうぞ今日からシドと呼んで下さいませ」


 はぁぅぅぅぅっ!

 なんたる衝撃っ!


 だってだって!

 その、キレイなお顔に浮かぶのは、心底嬉しそうな微笑み、なのですよっ……


(おそるべし、天然下僕体質っ……)


 内心で呻いちゃいますね、もうっ!


 こんなのでは、両親に隠れてこっそり足で踏み付け調教できませんよ……。

 ガッカリ。


「では、あなたもわたくしを好きに呼んでいいわよ」


 仕方なく、こう言います。

 父の手前、友達感覚は維持しておきたいところですからね!


「え?」 驚いたように目をぱちくりさせる少年、名付けてシドさん。


 さて、彼の方は、どんな呼び名にしてくれるのでしょうかっ!

 ちょっとワクワク、ですねぇっ。

(だってリジーちゃんの思考、5歳1日前の脳ミソだから!)


「では、お嬢様で」


「いやよ。お嬢様なんて100万人はいるわ」


 いるかな、とぼそっとした父のツッコミ。

 いえ女の子はみんなお嬢様ですからね?

 あ、そしたら100万人どころじゃないか。


「じゃあリジー様で」


「ダメ。みんな呼んでるからオリジナリティが感じられないわ」


 主が一生懸命に下僕っぽい名を考えてあげたのですよ?

 下僕の方だって、頑張るべきなのです!


 と思っていたら、何だか目付き悪くこちらを睨み付ける美少年、シドさん。


 あれ、もしかして……無茶ぶりしすぎたかしらっ……!?

 だなんて、オドオドしたりしませんからねっ……なんたって悪女ですもの!


 ニラメッコ上等。

 笑い出すまで、そのキレイな漆黒のお目めを、ニラみ返して差し上げましょうっ!


 じーーーーっ……


 と、笑い出す代わりにシドの口からでてきたのは。


「アルデローサ様」


 おおおっ! 前世と今世であわせて初めて!

 ニックネームらしいニックネームをゲット、なのです!


 アルデローサ、すなわち、『炎の薔薇』

 ちょっと廚2……いえいえ、悪女っぽい。そういうことに、しておきましょうっ!


「よろしい」


 ツーン、と顎を上げて許可して差し上げます。

 なんだかドキドキしてるだなんて、絶対に、内緒ですからねっ!


 父が、少し驚いたようにシドに尋ねました。


「君、古語の教養が?」


「はい、ワケありなんで」


 言外に 「これ以上聞くな」 という雰囲気をにじませつつ、しれっと答えるシドさん。

 なかなかやりますね!

 悪女の下僕として相応しい活躍ができそうです!


 ……あ、そういえば。


 ふと気づいて、ポケットからゴソゴソと1枚の紙を取り出すリジーちゃん。

 先程の空き時間に書いておいた詩、ですね。


 下僕ができたら詠唱させようと、思っていたのでした!


「早速だけどシド、これ読んでみてくれる? 声に出して」


「はい」 受け取った紙を朗読しはじめる、シドさん。

 やはり文字も読めるようですね!

 やったあっ♡


「クローディス家を守護する神と精霊よ……」


 そして、なんと、どうやら!

 朗読の心得もある子のようです!


 少年特有のやわらかさを持つ声はよく通り、息継ぎ・節回しも完璧。

 いいですね!


 一方で、父は。


「リジー、いつの間に特殊紙を……」


 困惑してシドとリジーちゃんを、交互に見ていますね。

 さりげなく、手なんてつないで、差し上げましょうっ。


「お父様の書斎で見つけたのですけれど……黙って持ち出して、本当にごめんなさいっ!」


 ふふふ。リジーちゃんの豆知識。


 イタズラは、ヘタに誤魔化すより謝ってしまった方がいいのですよっ!

 その際にはボディタッチをしておくと、相手の怒りを若干やわらげる効果もあったり、ね♪


 両手で父の手を握り、瞳をうるうるさせながら見上げます。


「リジー、持って行っちゃいけないって知らなかったの! 今度からはちゃんとお父様にいうね」


「ああ、そうしなさい。お父様も書斎の管理が甘かったのがいけなかった……」


 うん。甘いですよね。

 甘いっていうか、ザルすぎですよね!

 特殊紙の総数くらい把握しときましょうよ、お父様?


「今、お父様の書斎の特殊紙は500枚ちょうどですわ」


 そうなるように200枚ほどくすねて差し上げましたから、というのは内緒。


 父の顔が、ぱっ、と輝きました。


「そうか! ありがとう! 今度からはお父様もちゃんと管理するよ」


 さて、程良いタイミングで。

 シドが詩を読み終わりました。


 なんなんだこれ、とか思っている顔ですね?

 みてらっしゃい、ふふふふっ!


 もしこれで、魔法が発動したならば。

 スケベオヤジ共が一斉に、裸踊りを披露する、はずなのですっ……

 女性ブース周辺に注目、ですよ!


 ……………………

 ……………………

 …………………… あれ。


 何も、起こりませんねぇ?


「何がいけないのかしら……」


 初めてだったから仕方ない?

 そんなはずは、ありませんっ!


 少々ガッカリしつつも、でも負けない、と握り拳を固めた、その時。


「ああっ?!」 「おおっ?!」

 一斉に上がる悲鳴。


 や り ま し た ね っ !


「一体何がっ!?」 「早く隠せっ!」


 成功ですっ!

 意気揚々と、そちらに目をやるリジーちゃん。


 と、視界に、いきなり。

 恰幅の良いおじさんの、チョロチョロと毛の生えた太鼓腹がっ……げぇぇ(吐)見たくありませんねっ!


 成功だけど。

 なんか、しまった。


 後悔しつつも、ざっと確認。 

 ……あれ? あまりいませんね、裸になっている人。

 ごく一部だけ、ですよ?


 それにそれに。

 踊っている人が皆無、なのです……っ!


「女性奴隷のとこにいる人全員が裸踊りをする予定だったのに」


 慌てた父に引っ張られるようにしてその場を退散しつつ、ブツブツとぼやくリジーちゃん。


「アルデローサ様」 シドがクスクス笑いました。

 こんな時ですけど、眼福ですねっ!


「あの詩には『踊る』とはありませんでしたね。それに、女性ブースにいるからといって全員が乙女を無下に扱っているかというとそうでもないのでは」


「あら本当」


 なんたる、落ち度でしょうか!

 初めて魔法を使うのにテンション上がって、つい細かな確認を忘れていました。

 ペンで物事を詳細に正確に、しかも美しく廚2で表すというのは、やはり至難の業なのですねっ……


 でも負けません!


 とりあえず、魔法が使えることは分かったのです!

 ならば今後は、これで極悪最凶目指すのみ!


 明日からも母のもと、シドも巻き込んでいっそう修業に励もうと決意するリジーちゃん、なのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)

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― 新着の感想 ―
[良い点] >アルデローサ、すなわち、『炎の薔薇』 やだこの子、幼いのになんて素敵なニックネームを……。(←厨二) 美少年奴隷、萌える!
[良い点] >「はい、ワケありなんで」 ガチ笑いました (∩´∀`)∩~♪ >太鼓腹 よびました? (;'∀')
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