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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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79/201

79.おねだりですか?してません!美青年の誤解に惑わされている変態悪女、なのです!?

 皆様、いきなりですがすみません。

 私ことエリザベート・クローディス、なぜだか今、シドさんより熱烈なキスをいただいている最中でございます。


 前回と思い切りかぶっていますが、そうなってしまったので仕方ありません。

 生温く、目を逸らしてやっていただきたいと思います。


 ……と、どこかに向かって実況中継してみるリジーちゃん。


「どれだけ、おねだりさんなんですか」


 やっと解放してくれたシドが、ヤレヤレとでも言いたげに意地悪くツッコミを入れて下さってますが。


 勝手に誤解しといて、おっしゃらないでほしいのです!


 今回、目を閉じたのはですね、おねだりじゃなくて 「さぁ、ひと思いに()ってくれっ!」 という方なのですよ……っ!


 贖罪なんか、できない前世。

 自分がラクになることばかり考えて、他人に罪を犯させた。


 今世で大事な人が増えるほどに、悔やまれて仕方がない、そのひとの人生。


「つまりはその、生まれる前の記憶とやらの中のその(ヤロー)が」


 シドが、神殿の宿泊室を再びブリザードで満たします。


「そう。取り返しがつかないことを、してしまったの」 うなだれるリジーちゃん。


 もう一度、今度は目を閉じずにスタンバイOKです!

 さぁ、ひと思いに()ってくださいませ!


 凍えそうなシドの声が、耳に響きます。


「その(ヤロー)が俺よりイイ、と」


 …………………………。

 …………………………。

 ……………………………今、なんて?


 気のせいでなければ、びっくりする勘違いが展開されているような?



「どこをどう取ったら、そうなるの?」


「どこをどう取っても、そうなるでしょうが」 はぁー、と深く息を吐き出すシドさん。


「バカですねアルデローサ様」


「なんでそんなこと言われなきゃならないのよ」


「言いたくもなりますよ」


 シドが腕を伸ばし、ムニムニと意味も無く両側からリジーちゃんの頬をつまみます。


「もしその(ヤロー)のせいであなたが今つらい思いをしてるなら、俺がソイツ殺しに行きますから」


「ほほへ (どこへ)?」


「どこへですかね?」


 ……わかりません。


 前世の地球の日本ってどうやって説明すればいいんですかね?

 そもそも、どうやって行くんですかね?

 もう1回、死んでみる?

 死に方で行き先変わったり、するのかな。


 ほらね、とシドが頬から手を離してニッコリします。


「現状どうしようもないことで悩むなんて、バカなことでしょう?

 この世の誰も、知らないんだから」


「したことは消えないのに?」


「でも、ここに生まれてきたのは、きっとほかの意味があるんですよ」


 ……善女にしか似合わないような明るい台詞。

 クラクラきちゃいますね!


 そんなに簡単に浮上できるほど、健全な前世送ってませんから!


「ご不満そうですね」


「当然でしょ。悪女ですもの」


 頬を膨らませば、シドが両側からぷしゅー、と潰してきます。

 で、またムニムニ。


「でもほら、お嬢様みたいに色々と残念な方でも、ちゃんと幸せになってくれないと気にかけちゃう方が大勢いらっしゃいますから」


 うっ……。

 そんな人いない、って言いたいけど、そうじゃないことはもう、わかっているのです。


「だからこそ、あの人に対して、より申し訳ないというか……」


 再びうつむくと、おや。

 なんだか、シドさんの方もまた、超絶不機嫌顔に!?

 どうしてでしょうか……っ!?


「大体が、その(ヤロー)に義理立てして」 部屋中に、さっきよりもすごいブリザードがあふれる気配がします。


「俺の気持ちをないがしろにするなら、そっちの方が罪深いと思って下さい」


 ……………恐っ。


 けど、同時に甘やかされてるのもわかります。


「シドの気持ちって」


「ご存知ですよね」


 はい、知ってます。


 知らないふりができないくらいに、押し寄せてくる感情の波。


 ……困ったな。

 と思うのに、身体の芯が甘く痺れて、ますます困ってしまいます。


「どうしたら良いのか、分からないわ」


 呟けば、シドの両手が今度は優しく頬を包みます。


「俺だけ見て」


 こつん、と額があたって、思わず目を閉じます。

 もう1度開けたら、黒い瞳が間近で、優しい熱を帯びて微笑んでいました。


「ほかの誰のことも考えないで、俺のことだけ、考えて」


 どうしよう。

 独占欲剥き出しのヤンデレ廚2台詞に、泣きそうになるとか。

 大丈夫でしょうか、リジーちゃんったら……イヤ絶対、オカシイ。


「もしそれが罪になるなら、俺も一緒に償いますから」


 そう、ちっとも、大丈夫じゃありませんよ!


(すみません) 記憶の中のあの人に詫びて、ぎゅっと目を閉じます。


(ずっと私を許さないでください)


 どれだけ謝っても(あがな)えなどしない。


 でも、謝るしかなくて、心の中で何度も (すみません) を繰り返します。


 私は、シドを誰より、幸せにしたい。

 シドと一緒に、生きていきたい。


 ぎゅっと閉じられたままのリジーちゃんの目蓋に、シドの唇が軽く当たります。

 涙、舐めるの好きですね!

 ほんと、病的で悪女な変態さんですね!


「シド、大好き」


 やっとの思いで言ったのに、「知ってますよ」 と軽くいなされ、そのまま唇に、今日でいちばん、長いキス。


 がっつかれました。ええ。


「どれだけおねだりさんなんですか」


 唇を離したシドが、非常に意地の悪い笑みで、背に回った手をお尻の方に下ろしてきます。


 いや、あの。


 ここでロティーナちゃん降臨は、まずいでしょ……?


「ここ神殿ですよ」


 せっかく注意したのに、またしても 「知ってますよ」 と軽くいなされます。


「だから、絶対に声、上げないでくださいね!」


 イイ笑顔のシドさんに、どうしようか迷いつつ、とりあえず急所から少しずれた場所に膝蹴りをかます、リジーちゃんなのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)


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