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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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78/201

78.いきなりですが、破滅に進むことになりました!?余生の希望はお掃除オバサン、な変態悪女でございます!

 皆様、いきなりですがすみません。

 私ことエリザベート・クローディス、なぜだか今、旅の仲間のシドさんより、熱烈なキスをいただいている最中でございます。


 どういうわけか、ジンナ帝国滞在途中頃から、部屋に入るとまずはキスをしてくる美青年。

 ついでにアチコチ撫で回したりもしてきますが、本日は神殿にお泊まりなのでそれは無いもようです。

(ガッカリとか、してませんよ?)


 なんだか拒否するだけの理由もなく、ついつい流されて今日この瞬間に至っております……けど、どうして、こんなイベントが。

 まるでユーベル先生著 ″ネーニア・リィラティヌス″ のネフト青年とロティーナちゃんのようですね!

 つまりは、恋人同士のようで……ん?


 んんん?

 んんんんんんん?……もしや?


 何度も繰り返されるキスからやっと解放されたリジーちゃん。

 試しに、シドさんに聞いてみます。


「ねぇシド」


「はい、アルデローサ様」


「わたくしたちって、もしかしたら、世間的にいうところの、その……」


 うわわっ……顔に血が上ってきちゃいました。

 耳まで熱くなっているのを感じつつ、下を向きます。


 これで、口に出して言うだなんて恥ずかしすぎ……でも負けない。


「その、えーと、あの」


「なんですか」


 シドさんったら、リジーちゃんの困り顔をたっぷり鑑賞しちゃって!


 もうっ。


「その……恋人同士、というやつなのかしら」


 ううううっ! カユい! カユすぎる!

 しかし、気付いてしまったのならば、1度は確認しておかねばっ。


 内心で悶絶しつつ外面は静かに固まっているリジーちゃんの前で、シドが、がくうっ、とうなだれました。


「…………………今までなんだと思っておられたんですか?」


「……何にも考えてませんでした」


 同じく、がくうっ、とうなだれるリジーちゃん。


 なんだか、シドを超絶ガッカリさせたようで、居たたまれないのです……!


 でも、だって。


 ―――なんだかんだ言っても、シドが傍に居るのって当たり前だったし。

 ジンナ帝国に行くことになった時にも、離れ離れになるとか考えられなかったし。―――


 ほんっとうに何にも考えずにホイホイくっついて来ちゃったけど、それって……と、やっと思い当たったところ、なのでございます。


 え? なに? 


 とすると、リジーちゃんの立ち位置は、彼氏の不在に耐えられず旅行にまでついてきちゃう束縛彼女!?


 どこまで、残念なんでしょうか……っ!


 そんなもの 「行ってらっしゃいませね! お土産ヨロシク!」 とでも言って朗らかに見送るのが、自立した女性というものでしょうに……

 でも、やっぱり、ダメですね!

 そんなの、考えられません……っ!


 ……どこまでも残念ですね、リジーちゃんったら……


 肩を落とす私の前では、シドがやはりうなだれたまま 「俺だけ盛り上がってたとか……」 などと呻きつつ、キレイな髪をクシャクシャにしています。


「じゃあ、どうして、婚約しようとか思ったんですか」


「流れで」


 だってそうでしょ?

 どう考えても流れだったじゃないですか!


 でも、シドがあまりにもガックリしてるので、言い訳をしてみます。


「だ、だって……お付き合いしようとか、1度も言われてないしっ」


 ……あれ。

 これじゃあ、シドが悪いみたいになっちゃいますね。


「ゴメンなさい、わたくしも全然、お付き合いするとか考えてなくて!」


「…………それ以上おっしゃらなくて、けっこうです」


 なんだかますます、しょぼくれてしまった感のあるシドさん。

 どうしようコレ?


 そうだ、とりあえず。


「……もう1回」


 目を閉じてキスをねだるなんて、自分の人生にあると思ってませんでした……!

 恥ずか死ぬ。


 でも、もしかしたら、これで最後になるかもしれないから。


 これから私が話すことを、聞いてしまったら、ドン引きどころか嫌いになられても仕方がないと思うのです。


 さっきよりも時間をかけたキスの後、私はゆっくりとシドに話し始めました。

 先程、神殿の礼拝堂で、贖罪神(フェブルア)懺悔(ざんげ)した物語です。



 ―――この世に生まれる前、別の世界で死んだ女の子は、自分自身を誰からも嫌われる、価値の無い人間だと思い込んでいた。


 他人からかけられる優しさや愛情を全て、支配し利用するためのものだと勘違いして、そうされないためだけにナンチャッテ善人の仮面をかぶり続けた。


 それが、時に人の気持ちを傷付けることがあるなんて気付きもせずに。


 何度も繰り返し見ている夢の全てに、彼女を傷付け、彼女が傷付けてきた人たちの姿が映る。


 その中で最もしてはいけなかったのは、彼女を愛していた人に、彼女を殺させたこと。

 愛されているなんて気付かずに、好意に対して、普段通り、当たり障りの無い態度を取り続けた結果だ。


 人気でチケットを取るのが難しいと聞いていたコンサート。

 誘われて「いいですよ」 と応えたのに、その日に母が勧めたお見合いが入った。


 男と歩く彼女の姿を見掛けたその人は、後日、彼女を問い詰めにやってくる。


 もともと優しい人だったのだから、きっと懇願さえすれば、首にかけた手を緩めてくれただろう。


 なのに彼女は 「これでラクになれる」 と思ってしまった。

 その人を嘲笑い、より激昂しそうな言葉を選んで、最終的に彼女自身を、殺させてしまった。


 ……それは、生きていて初めて感じた、喜びと充足感。

 意識が無くなる最後の瞬間まで、彼女は、嬉しくて仕方がなかった。


 けれど、その分、今の世で苦しめられる。


 彼女は、自身のために、彼の人生を潰してしまったのだ。

 とても、優しい人だったのに―――



 それを考えるとどうしても。


 これから先、何回2月(フェブルアリウス)を迎えても、私の贖罪は終わることがないのです。




「つまり」 聞き終わったシドの、超絶不機嫌声が響きました。


 そっと上目遣いに確認すれば、キレイなお顔にブリザードが吹き荒れておりますねぇ!


 ……そうですよね。

 やっぱり、もう、これでお終いですよ。

 ……けれど、そう。これで、良かったのです!


 今世では、じゅうぶんすぎるほど、幸せでしたからね!

 やりたいことはある程度やったし、シドからはプロポーズ (非公式) までいただいちゃいました。


 あれだけ幸せなことがあったら、後はどうでも、生きていけます!


 ……むしろ、これ以上幸せになっちゃったら、何だか申し訳が立ちませんよね……。



 やっぱり、話して良かった。


 声に出して言ってみると、この後、どんな風に断罪されようとも、受け入れるべきだというのが、よく分かります!


 アナスタシア様の物語を書き終わったら、贖罪の(フェブルア)神殿のお掃除オバサンをしてつつましく過ごそう。


 私はそう思いつつ、シドからの最終宣告を待って、そっと目を閉じたのでした。

読んで下さりありがとうございます。


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