表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/201

76.花咲く林の梅の木の下で囁かれるアツい想い!?甘々な変態台詞にさすがの悪女も泣きそうです!

 さて、こうしてジンナ帝国に滞在することになった私ことエリザベート、うっかり禁断の快感に目覚めてしまった16歳。


 ただいま、ぼへーっとシドのモデルぶりを観察中です。

 ―――そういえば2年前の秋だったっけなぁ、シドのセミヌードを皆で視姦したの。―――

 あれ。なんか思い出すと恥ずかしい?

 当時は平気だったのにっ!


 それはさておき、画家先生が速筆だというのは本当らしく、先程から30分程しか経っていないのにもうデッサンを終えて、水彩で色を乗せておられるもようです。


「持ち帰ってから細かい部分を手直しして2枚制作し、ひとまず1枚をお渡ししますね!」


 そして残りの1枚をもとにゆっくり油彩を作って、後ほどお届けしますからね~!


 と、制作工程をざっと説明。


「油彩は時間がかかりますが、お嬢様が惚れ直しちゃう仕上がりにしますから任せて下さい!」 などと片目をつぶってみせてくださっています。


 ということは、モデルはこの数時間で終わりですか?


『毎日同じポーズを何時間も』 というイメージとは、ずいぶん違いますねえ。



 そんなわけで、滞在2日目。


 肖像画 (簡易版) の出来上がりを待つばかりになったシドと私は、ジンナ帝国皇都を見下ろす丘の上に来ています。

 細い道を挟み、両脇は梅の林。


 白梅の枝は黄緑がかった蕾で点々と彩られています。

 ちらほらと降る雪の中に、誇らしげに花開いているのは目の醒めるような紅梅。


 丘の頂上の、ひときわ鮮やかな真紅の花の下に、その大理石の墓はありました。


『最愛の妻リウ・メイユ、彼女の死を悼む者たちによりこの墓が作られた』


 黙って墓標をなぞるシドの姿に、また涙が出てきちゃいますよ……もうっ!


 最愛の妻と呼びながら 『私が墓を建てた』 とは言い切れないグァン様の迷いや後悔といい……バージョンアップした悲恋妄想に大号泣再び、なリジーちゃん。


「あなたが泣いてどうするんですか」 シドがヨシヨシ頭を撫でてくれます。


「本当にね」


 泣きたいのはシドのはずなのに……と思って見ると、当のご本人はなかなか複雑な表情です。


「あなたを見ていると、俺にもそんな気持ちがあるのかな、と思います」


「きっと、あるわよ」


 単純に悲しめないほど、色んなものに押し潰され隠されていても、心のどこかにはきっと。



「母は紅い花にたとえられることが多い人でしたが、本当は白い花を愛していたんですよ」


 雪がチラつく梅林を、シドと手をつなぎながら歩き、ぽつぽつと語られる話に耳を傾けます。


「特に、まだ蕾の白梅を雪の中で見るのが好きでした」


「ちょうど今日みたいな日?」


「そうです。俺は毎年ここに連れてこられてて」 何やらほっこりとする、良い想い出のようですね。


「わざわざクソ寒い中で花見だ!? ふざけるな……と思っていました」


 あら。

 ―――そういえば前世でも、花見に連れてこられた子供って大抵、退屈してましたね!

 花、ほとんど見ずに駆け回って遊んでいましたもんね!


 そういえば社会人も、花、ほとんど見ずに飲んで食っておべっか使って使われて、という感じでしたね。―――


 おっとしまった。


 不意に、『花見』 という名の取引先総接待で、場所取りとお酌をさせられ尻を撫でられた記憶が、フラッシュバックしてきちゃいました!

 ああ気持ち悪っ!


「アルデローサ様? 怒っておられるんですか?」


「少し思い出したことがあって」


「そんなにイヤなことが?」


「単なる夢の中の出来事よ」


 前世の記憶は、甦る度にどれだけイヤな気持ちになろうと、どれだけ私を恐怖と混乱と怒りの渦に巻き込もうと、こう説明するしかありませんからね。


「アルデローサ様は昔から夢見が悪いですね」


「その度に、シドが助けてくれたのよね」


 大丈夫、と抱きしめて宥めてくれるから、私は心の底から甘えることを覚え、泣くことを覚えたのでした。


「大したことはしてませんよ」 シドはぶっきらぼうに言って立ち止まります。


 一輪だけ開いた、気の早い白梅の下。


「でも、これからはそんな夢も見ないよう、俺があなたを守りますから」


「無理よ」


 だって前世の記憶はきっと、せっかく生まれてきたのに、怒ることと憎むことしか覚えなかった私への、罰だと思うから。

 幸せになればなるほど、許されない部分も増えてくるような気がするのです。


「無理じゃないですよ」 シドはキレイな顔で微笑み、力強く請け合いました。


「毎晩、夢を見たりできないほど、可愛がって疲れ果てさせてあげますので!」


 ああ……もうっ!

 イイ雰囲気もシリアスな空気も、台無しですよ、シドさん!?


「結局それ!?」


「俺たちらしいでしょう?」


 シドが笑って、私をぎゅうっと抱きしめます。耳にかかる、熱い息。


「だから俺と結婚して下さい」


 コクンとうなずいてしまいそうになって、でも、そうはできなくて、また泣きそうになります。


「あのね、こんなこと言ったらショックだと思うのだけれど」


 大切な人だからこそ、きちんとしておかなければ! ……やっぱり泣きそう。


「わたくし、シドのことまだ 『愛している』 って言えないの」


「そうですか?」


「そうよ。愛は、こわいもの。間違えたくないの」


 間違えて、傷つけたくない。

 シドが私を抱きしめたまま、ポンポン、と背中を叩きます。


「もしアルデローサ様が間違えたら、ちゃんと言いますよ」


「わたくしが聞く耳もたなかったら?」


「分かるまで、ちゃんと言いますよ」


「うそ。シドはわたくしに甘いもの」


「それは、俺がそうしたいからです」


 だから、結婚して下さい。


 もう1度、耳に口をつけて囁かれる美青年の破壊台詞……うーん、普通ならとっくの昔に腰砕けかもしれませんね!

 でも、今世の私はひと味もふた味も違う、悪女なのです!


「そういうことなら、予定通りに婚約だけはしましょう?」


「だけ、ですか?」 おや、めちゃくちゃ不満そうですね。


「結婚はわたくしがシドのことを 『愛してる』 と言えるようになるまで、待って下さいな」


「待てません」 キッパリと言うシドさんです。


「そんなの待ってたら、いつになるか分からないじゃないですか!」


「あら鋭い」


 でも、きっと、なんとなく。

 あともう少し、な気がするのです。


「そんなにソレを言いたいなら……」


 背中に回っていたシドの手がすっと下がり、お尻をサワサワと撫でました。


「今から教え込んであげましょうか?」


 どうしよう。

 前世のスケベオヤジがしたのと同じことされてるのに、なぜだかロティーナちゃんが降臨しそうです!

 まずいっ! 屋外でそれは恥ずかしすぎるっ!


「……初めてはイロイロ計画してるんじゃなかったの?」


「だから寸止めギリギリまで」


 イイ笑顔で 「どうですか?」 とイケないところに手を回してくるシドさん。

 どうしようか迷って、とりあえず人生2度目の急所膝蹴りを炸裂させる、リジーちゃんなのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関連作品 i483018 

楓くんはこじらせ少女に好きと言えない~夏の匂いの物語~

☆FAいただきました!☆
砂臥 環様 作品タイトルファンアート(プラチナ様のメーカー使用)
©️秋の桜子 さま



≡≡≡日常系好きにオススメ!≡≡≡ i463137 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ