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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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74/201

74.ドキワク!愛の逃避行!……実は嘘。でもちょっとだけ、浮かれ気味な変態悪女、なのです!?

 さて、そんなこんなで急に旅に出ることになった私ことエリザベート・クローディス、今年はもう17歳。


 夏にはお嬢様らしく避暑地の別荘に行ったりしますが、冬の旅は初めてです!

 ……というか、この厳寒の雪の中で長旅とか。

 我ながら、アホですねぇ……。


 けれども、だからこそ。

 とっても、ワクワクしているのです。


 雪道で迷って 『ああ……アタシもうダメ。眠いわ……』 『眠るんじゃないッ頼む! 目を開けてくれえッ』 みたいな極限を体験したりも、してみたいのです!


 しかしそんな事態にはならないよう、父はこう申しました。


「早く帰ってきておくれ。毎日、書字魔法でリジーとシドの安全を願うからね」


「お母様が心を込めて朗読しますからね」 と、母も天使様な微笑みを浮かべています。


 というか、ですね。

 こんなにアッサリと愛娘に長旅許すって、どういうこと……と、問うならば。

 それには、こんな経緯があったのです。


「リジーがここまでシドを……」 父は涙ぐみました。


「これぞ愛のなせる業だね!」


「愛って素晴らしいですわね!」 と母も涙ぐみました。


 我が家における(免罪符)の効力にクラクラと目眩を覚えつつも、有難く出立、と相成ったわけでございます。


 しかし。

 ここにまた1人、難敵が。


「お嬢様」 外気に晒され凍り付いたようなシドの顔。


「お帰り下さい」


「それ、既に馬に乗せているのに言うこと?」


「乗せているのではなく、お嬢様が勝手に乗ったんです」


「もういいじゃないの。お父様もお母様もお許し下さったのに、ここに及んであなたが四の五の言わないの」


「旦那様も奥様も……何を考えておられるんだか」


 ……極寒の雪道でただでさえ危ないのにジンナ帝国へとか、普通なら許可しませんよ。……


 ブツクサとぼやくシドを、ここは前世の知識を駆使して安心させてあげましょうっ!



「いいじゃないの。可愛い子には旅をさせよ、というのよ」


「聞いたことありませんね」


「旅は道連れ世は情け、とも言うし」


「それも知りません」


 とにかく、言うんですってば。

 まぁこれで納得できないというならば。

 悪女らしく、駆け引きなど、して差し上げてもよくってよ?


「だってっ! あのまま家にいたら!」 瞳をウルウルさせつつシドを見上げます。


「きっと雪灯祭でラズール様とのデートを断り切れず、ついでに公爵家からも宿泊を勧められて流れで押し倒されてしまうわっ」


 公爵家から 『また今度泊まりにきて下さいね』 旨のお誘いが、プロポーズと一緒に来ていたのは本当です。

 逃がさない気満々ですね!


 う、とシドが詰まりました。

 あと一押しです。


「もしそのまま流れでラズール様と婚約、なんてことになったら!

 お父様がどれだけお嘆きになることか」


 何しろ今や、私とシドの間には愛がある (しかも愛は全てに優る) と信じて疑わない、イケメンパパですからね。


 そして、恩義ある旦那様を嘆かせようなんてことは、シドは考えないはずですからね!


「……わかりました」


 ほら、シドさんがうなずいてますよ。

(予想通りっ!)


「じゃあ行きましょ!」


 上機嫌で馬の腹を蹴り、シドから 「お嬢様! 街中ですよ! それに馬が疲れます!」 と、立て続けのお小言を浴びせられた、リジーちゃんなのでした。



 そして、12日後。


 雪原で急な吹雪に見舞われたり (防寒装備と書字魔法のおかげで簡単にクリアしました。期待外れ)、


 宿で部屋が同じどころかしばしばベッドが同じ (まぁ仕方ないですよね) だの、

 風呂が同じ (久々すぎてさすがにちょっと照れました) だの、

 という点でしばしばシドに涙目で困惑され (リジーちゃんも困り顔フェチに目覚めそうです!) たりしつつ、続けた旅の末。


「うわぁぁぁ! すごいすごい!」


 やって参りましたジンナ帝国は皇都、でございます。


 馬車4台くらいは並行できそうな、広い道の入口には、巨大な朱塗りの門。

 道の両脇に立ち並ぶ大きな建物は曲線を描く屋根は重たそうな青瓦で覆われ、その先端では彫刻の龍や鳳凰が舞い踊っております。


 ルーナ王国が前世でいうヨーロッパ風なら、こちらは中華風、でしょうか。


「シドはここで生まれたのね」


 馬上でシドの胸にもたれつつ、その顔を上目遣いに見上げれば、あれ?


 久しく帰ってきていない故郷だというのに、ちっとも嬉しそうじゃありませんね。


 やはり重度のワケあり。

 周囲の光景が珍しいからといって、あまりはしゃぐのはよしておきましょう。


「それでお会いになりたい方というのは?」


「多分、向こうから迎えにきますよ」


 話しつつ大通りを馬でパッカパッカしていると、シドの言った通り、向こうから 「アーロン様ッ!」 と呼びかける声が。


 そちらを見れば、鼠色のコートを羽織った年齢60歳程度の推定・執事さんがかしこまって立っておられます!

 後ろには推定・使用人たちがズラリと地面に膝をついて頭を垂れてます。


 ……シド? あなた実はどんだけ偉いんですか?


「やぁフェイドゥー。まだ生きていたのか」


「当然です!」


 フェイドゥーさんは至極当然、というように馬の口を取りました。


「さあ、早く屋敷へ。お父上がお待ちかねですよ」


「グァン様が」 シドが驚いたように呟きます。


 父上をいきなり 『名前+様』 呼び。ワケありのニオイがプンプンしますねぇ!

 ……敢えてツッコみは、しませんが。


「左遷でもされたのか」


「ち・が・い・ま・す!」


 どうやら普段はお忙しい方のよう。

 息子が帰ってくると知って、わざわざお休みを取った、といったところでしょうか。


「いつ知らせたの?」 コソコソとシドに尋ねると、「さぁ?」 とのお返事。


「ルーナ王国にいたスパイの誰かが、たぶん知らせてくれてるんじゃないか、と思っていたんですけどね」


 んんん?

 シドさんの動向って、ジンナ帝国的に国家レベルですか!?


「ちなみに……わたくしの従者やってるとか、お色気小説の取材でアブないことをやらせてるとか……」


「従者の方は確実に、バレてると思います」


 のぉぉぉぉぉっ!

 ……このまま処刑場に連れてかれそうな気がしてきました……。


 シドがクスクスと笑います。


「大丈夫ですよ。俺が好きでやってることですから」


 いやいやいや。

 愛は免罪符としては便利ですけど、何でもそれで通るとはリジーちゃん思ってませんからね?

 ……って、愛?


 …………ほんとに? シドが?

 困り顔フェチ、とかだけじゃなくて?


 え? えええええ!?


 いやいやいや、情報を整理するならば……………うん、分かった。


 つまりは 『好きで』 っていうのは 『趣味で』 ってことですね!


 一瞬、 「愛? まじで?」 と思っちゃうとか……もう!

 リジーちゃんったら、勘違いさんですねぇ!


 きっと、これが 『非日常(たび)の効用』 というやつなのでしょう。


 一緒に眺めるダイヤモンドダストがやたらとキレイだったり、朝目が醒めたらシドの寝顔が近くにあるのが存外に嬉しかったり、お風呂で照れてるシドがものすごく可愛く見えたり。


 そう。あんなこともこんなことも、全ては非日常(たび)のせい!

 断じて 『愛』 などではありませんよ、リジーちゃん!?

 きっと、そうに違いない!


 そう内心シャウトしているうちに、一行は立派なお屋敷に到着。


「大丈夫ですよ」 とシドはもう1度言って、ニッコリと、あまり黒くない笑みを披露してくれたのでした。


「用事は一瞬で、終わらせますから!」

読んでいただきありがとうございます(^^)


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