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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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70/201

70.ナンパ青年の秘密のレッスンでひと皮むけた変態悪女!でも美青年の嫉妬の炎にタジタジです!?

 かくして、カフェで手直しした原稿を持って再び、活版印刷所・バルシュミーデ兄弟社に出向いた私ことエリザベート、またの名をルーナ・シー。


「うううっ! 素晴らしい!」


 トイレからスッキリしたお顔で出てこられたジグムントさんから、手放しの賞賛と感涙を受けております。


「エステシーンがより艶めかしく!

 普通の耳かきですら何ともいえない色気がこぼれ!

 そして悩みを打ち明けつつ黒髪をかきあげ溜め息を漏らすアナスタシア様が美しすぎて!」


 そうでしょうとも。

 アナスタシア様に近付き触りたくて仕方の無い美少女精霊の目線で、タップリ視姦させていただきましたからね!


 これまでフェチにこだわるあまりに全体の描写がおろそかになっていましたが、やはりシーさんの妄想(おはなし)に視姦は欠かせないのです!


「こういうのを待ってましたよ!

 なんというか、ひと皮むけましたね?」


「いえーそれ程でもありますわ!」


 久々に気分良く身体をクネクネさせるリジーちゃん。


 ふっ。ご覧になりまして、視姦+フェチ超絶合体技の威力っ!


「よほど苦労されたんでしょうね」


「いえそれ程でも。ユーベル先生にも教えていただけましたし」


 ここは感謝を込めて、正直に話しておきましょう。


 だって今回は本当に、ナンパ青年ラズール様ことユーベル先生の手ほどきのおかげ、ですからね。


 帰艦時刻が迫っていても、最後まで付き合っていただけて感謝! なのです。


 なにしろ相当、焦っておられたんでしょう。

 途中3回ほどは 「もうそろそろ行っていいかい?」 と立ち上がりかけた先生。

 けれどその度に慌てて 「ああん待って! まだ行かないで!」 と引き止めれば、ニッコリとまた姿勢を戻されるのです。

 親切ですね!


 イイとこあるなぁ、とちょっと感心したリジーちゃん、なのでした。


 しかし。


「…………!」

 それを聞いたジグムントさん、固唾を呑んでおられます。


「ゆ、ユーベル先生からいったいナニを?」


「ええ、いろいろと……」


 説明しようとしてハタ、と止まるリジーちゃん。

 よく思い返せば、ユーベル先生の教え方だけあって、かなり際どい感じの会話でしたね!


 あの時は原稿書くのに夢中になって気付きませんでしたが、口頭で説明するのは、ちょっと。


「は、恥ずかしいっ」


 経験値低い乙女にはハード、でございます。


「……どうしても、お聞きになりたい……?」


 両手で頬を挟み悶え悶えしていると、なんでだかジグムントさん、シドにじっとり目線を向けました。


「シドさん……あなたがついていながら」


「大丈夫です」 シドが力強く請け合います。


「最後の一線は死守していますから!」


「そうなんですか?」


「ええ、もちろんです!」


 最後の一線て、ああ 『結婚』 のことですかね。

 だからあんなの冗談ですって。


「我が社との縁のせいで、お嬢様に何かあっては、ご両親に申し訳が立ちませんからね」


 ジグムントさんが 「しっかり頼みますよ」 と言えば、シドは真剣な顔で頷きます。


「この身に代えても!」


 ……シドさん。

 アナタやっぱりラズール青年のことが? 結婚したいの?


 ぼややん、と花嫁姿のシドが脳裏に浮かびます。


 いやん、けっこう似合うかも!

 何しろもともとが、美人さんですからね。


 ハイネックの慎ましやかなウェディングドレスで喉や肩を隠し、さらにヴェールでがっちりしたラインを優しく包み込めば……うん、イケそう。


 会場の方々が美しい花嫁に心奪われることでしょう!

 はぁうぅ(タメイキ)


「シド……!」 がっし、と両手を握りしめます。


「頑張って身代わりヨロシク! 応援するわ!」


「いえ応援とかケッコウです」


「そんな照れないで! シドの想いはしっかり分かったわ」


 そう、ラズール青年に向けられていたあのブリザード目線は、つまり。


「お嬢様でなく俺の方を見て」 ということですよね!


 単にオモチャとしてからかわれ遊ばれてるだけの女の子にまで、嫉妬してしまうその心。

 なんて切ないのでしょう……っ!

 萌えますねえ!


「大丈夫、ルーナ王国(このくに)は、確か同性婚もOKのはずだから!」


「俺をどういう世界に導きたいんですかあなたは」


「麗しの薔薇の園……とかじゃなくてね、純粋に応援したいだけよ」


 そしてシドさんのウェディングドレス姿をガン見するのです!


「楽しみにしてるから、頑張ってラズール様を口説いてね」


「イヤです」


 ええええ!?

 今、身代わりになりたいって言ってたくせに!


「あなたのラズール様に対する想いはその程度なの!?」


「とぉんでもない」


 何やらどす黒い笑みのシドさん。


「お嬢様に結婚申し込む(ヤツ)なんて殺してやりたいですね」


「………」


 リジーちゃん絶句です。まさか、そんな。


 これは、アレですよ。すなわち。


『可愛さ余って憎さ100倍』 というヤツですね!


 燃え盛る嫉妬と憎悪の炎に、魔神が降臨したり、自身が魔物に変化することさえ有り得るという……


 シドが、そこまで想っていたなんて。

 一体どうすれば良いんでしょうか。


「ダメよ、シド」 恐ろしさに声が震えます。


「考え直して。ラズール様を……そんな、ダメよ」


「イヤですね」 さらに黒さを増すシドの笑み。


「ね、お願い。ラズール様にも、きちんとしたお付き合いをお願いしてみるわ」


「もう絶対コロス」


「待って!」 シドを犯罪者にするわけにはいきません!


 シドがもともとどれだけ素敵な子かなんて、誰だってすぐに気付くと思うのです。


「きっとラズール様だって、きちんと付き合えばシドの良さを分かって下さると思うの!

 結婚だって夢じゃないわ!」


 想いを込めてシドの右手を両手で包み、必死に説得します。

 諦めて憎む前に、精一杯努力するのですよ! 忘れないで!


 ついでに久々の、上目遣いお目々ウルウル攻撃を加えていると、シドの手からふっと力が抜けました。


 やれやれ。どうやら分かってくれたようですね!


 と思うも束の間。


「……すみません、ジグムントさん」

 シドは盛大な溜め息と共にリジーちゃんの手から右手を抜き去り、両手で顔を覆いました。


「ちょっとトイレ、お借りしていいでしょうか」


「あ、ああ!」 そのお顔に曖昧スマイルを貼り付ける、ジグムントさん。


「どうぞどうぞ!ごゆっくり!屋上も静かでいいですよ!」


「ありがとうございます」


 こうしてシドはトイレに行き、リジーちゃんは、仕事を続けるジグムントさんと適当にお喋りしつつ、待ち時間。


(でも、遅いわね。……特大かしら)


 心配し出した頃に、やっと 「お待たせしました」 と、シドが戻ってきました。


 見ると頬に涙の跡が残っています。

 これはよほどお腹が苦しかったのでしょうね! 可哀想に。


「そんなになるまでガマンしちゃダメよ。

 あと毎日、一定時間は努力してみるとか、牛乳をたくさん飲むとか、お野菜を食べるとか」


 家に帰る道々、前世の知識を駆使したアドバイスに、力無く頷くシドさんなのでした。



 さて、そして。

 雪の道を時々シドにおぶってもらいつつ、帰宅です……と。


 んん? 何だか家が騒がしい?

 いや気のせいかしら?

 でも、やっぱり不穏な空気を感じます!


 普段はもう少し遅い父も、すでに帰宅しているもよう。


「ねえどうしたの?」 と出迎えてくれたナターシャに尋ねると 「私の口からはとても」 と青ざめた顔で、言われてしまいました。


 一体、何があったんでしょうか?


「ただいま戻りました」


 ひとまず両親に挨拶です。


「まぁリジーちゃん、お帰りなさい」 天使様な母の顔も、青ざめています。


「リジー、よく無事で!」 なんだか大袈裟な父の頬には、やっぱり涙の跡。


 おやお父様も、もしかして大腸破裂寸前なのですか?


 とついつい、シドと絡めて考えてしまうリジーちゃんの耳に。


 その衝撃のひと言は、飛び込んできたのでした。


「アリメンティス公爵家から、肖像画が届いたんだよ」



読んでいただきありがとうございます(^^)

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