7. 優しい父のお陰で無事に下僕もといお友達をゲットしました!さぁ早速、調教に励みましょう?!
5歳の誕生日前日、父と共に奴隷市場を訪れた私ことエリザベート・クローディス。
そうです!かねてよりおねだりしていた誕生日プレゼントは何を隠そう『お友達(という名の下僕)』なのでした。
めっさ×10悩みつつも決心してくれた優しい両親に感謝です!
これからも可愛い子ぶりに拍車をかけて騙しつつ、利用して差し上げることにいたしましょうっ♡
さてそんなわけで。
奴隷市場の子供売買用ブースで気に入った子を選んでいる途中の立派な悪女、リジーちゃん。
……くうぅっ!
『売買』と思うと胸がチクチクするわっ……
ええい! この際それは忘れるのですよ!
お気に入り探しに専念! これね!
と、子供たちを順々に見ているうちに、目に飛び込んできたのは。
きゅっと微笑みの形に閉じられた、く ち も と 。
これはポイント高いですね!
なんとなれば、人を見るときは、相手の眼ではなく口許を見ると良いのですよっ
口許は眼に比べて油断しがちなので、却って真意が表れやすいのです!
と、豆知識はさておき。
ともかくも、ほぼはじめて奴隷にされるという状態で、ですね。
平然と客を眺めていられる子供。
そうそう、いるでしょうか?
い ま せ ん よ ね …… !?
そんな子は、きっと、悪魔の魂を持った大物だけ!
そうです!
そういう子こそ、悪女に相応しいお友達……ではなく下僕、なのですよっ……!
早速、父の腕を引っ張ります。
「お父様、私あの子にするわ!」
「ええっ!? 男の子だよ?」
「あら。何か問題があって?」
「お友達なんだから、女の子がいいんじゃないのかい?」
「いや! 絶対にあの子がいいの!
ね、お父様。お願い!
リジー良い子にする! 絶対に、大切にするわ!」
瞳をうるうるさせ、父のすみれ色の眼をじっと覗き込んで差し上げちゃいますよ、どうだっ!
「………………」 やれやれと溜め息をつく、娘に甘いイケメンパパ。
「本当だね。オモチャや本も貸してあげられる?」
「はい。服も貸してあげるわ」
「……それはいいよ。喧嘩しても仲直りできる?」
「もちろんよ! 喧嘩なんて絶対にしないわ」
だって相手は下僕ですからね!
「しかたないね」 父がしぶしぶ、といった感じで頷きました。
ふっ、ちょろいわ。
木札に何やら(おそらく買値だと思われます)書き込み、売人に提出しています。
(奴隷売買というと競り方式のイメージだったのですが、ルーナ王国では入札方式のようですね!)
しばらく結果を待ちます……退屈。
そうだ!
書字魔法の練習をしちゃいましょうっ!
るんるん♪ と、可愛らしく鼻歌などしつつ、バッグから帳面に携帯用インク、それにペンを取り出すリジーちゃん。
書字魔法に必要なのは、我がクローディス家の紋章が透かし象嵌された特殊な紙。それに、術者の血を混ぜたインク。
ふっっ、初めて使っちゃいますよ!
実践なのです!
だって、リジーちゃんはプンプン、ですからね!
さぁ、女性ブース周辺のスケベオヤジどもっ!
謹んで幼女の魔法練習台におなり……っ!
と、内心シャウトして、では始めましょう。
まずは、プツッとペン先で手首をつついて破り、出てきた血をインクに垂らして混ぜます。
……鮮血って美しいわね、ふふふっ。
次に、帳面の後ろに挟んでおいた、父の書斎から拝借した特殊紙を取り出します。
さぁ、いよいよ!
血を混ぜたインクでサラサラと詩作などしてみましょうっ!
『クローディス家を守護する神と精霊よ、
クローディスに血と名誉を連ねる我、エリザベートが願い申し上げる
5月は10日の
数多の富と人の集いしダフネの港、西の外れなる虚偽と真実の舞台にて、麗しき乙女らを無下に扱いし者共あり。
我願わくば、彼の者共の衣を悉く剥ぎ、内なる邪悪を明らかにせん。
我より出でたる紅玉の流れを以て、我が願いの疾く聞き入れられんことを』
……お目汚し失礼、ではなく、ありがたく拝読なさい愚民ど……いややっぱ恥ずかしいわ、はぁー(溜め息)
3歳の時からリジーちゃんに詩の手ほどきをしてくれている母によると……
『韻文とは、目で読めば優れたイメージを喚起し、声に出せば心地良く、読み手・聞き手共に高揚させるものでなくてはなりません』
だそうで。
そしてここルーナ王国の上流階級にとってはこれが、当然の教養なのです。が。
言わなくても分かりますよね……?
「廚2っ」 と内心唱えながら書くほどに、出来映えが良くなってしまうという……この法則っ!
書くだけで赤面ものですが、これを声に出して読まねば魔法は発動しないのですから……うーん。
スケベオヤジどもに天誅を下すのが先か、術者が恥ずかしさで悶絶するのが先か。
いやだなぁ、唱えたくないなぁ……
あ、そうだ!
もうすぐ入札が終わりますから、そしたら、ゲットした口許微笑少年(推定10歳)にこれを朗読してもらえばいいのですよね!
それなら、私が他人のフリをしている間に天誅も下っちゃいます♪
こんなことを思い付くなんて、さすがはリジーちゃん!
立派に悪女、してますね♡
そうこうしているうちに。
「ジョルジュ・クレソンさん」
呼ばれて父が立ち上がりました。
偽名も付け値もばっちりだったなんて、さすがお父様!
壇上にあがりお金を払い、少年を受け取る父……ううう。
なんだか、心が痛んじゃいますねぇっ……!
悪女なのに。
雲1つない青空のように清く正しく美しいお父様に、こんなことをさせてしまっているのだから、当然なのかも。
でも負けません! 悪女ですから!
こうなったら、父の脚に取りつき、精一杯の感謝の言葉を並べたてておきましょうっ!
「お父様。本当にありがとうございます! 大好き!
リジーが大きくなったら結婚してね!…………お父様、ごめんなさいぃぃ……」
やだ泣いちゃいましたよ!?
なんで!?
リジーちゃん、もうすぐ5歳なのにっ!
そろそろ感情コントロールもできるはずなのにっ……
「いいんだよ。分かってくれたらいいんだ」
父が頭をポンポン撫でてくれます。
「大切なお友達にします(以前にまず下僕だけれど)」
「うん」
「一生大事にします(下僕として)」
「うん」
えぐえぐ泣きながら約束するリジーちゃんに、父はいちいち、優しくうなずいてくれたのでした。
「……それ俺のことですか」
おや?
放置気味になっていた口許微笑少年から、戸惑ったようなコメントが。
そうそう、と、父娘ワールドから引き戻されるリジーちゃんです。
「そうよ。あなたは今日から私のものなの」
説明して上げつつ改めて彼を見ると……あらまぁ!
実は物凄くキレイな子ですね!
選ぶ時は口許ばかり見てたのに、これはラッキーでしたっ……
まず目を惹くのが、黒金とでも言いましょうか、色は漆黒なのに光を受けるとキラキラと輝きを放つサラサラの髪の毛。
その下に細いけれど凛々しい線を描く眉、切れ長の目は白目が青みがかって澄んでいます。
そして瞳も漆黒。口許と同じように微笑を含んで、人懐こく輝いています。
鼻筋はすっと通って高からず低からず、絶妙なバランスで配置されております。
ぱっと見インパクトの弱い薄い顔だけど、よく見たら美人さんという路線ですね!
好物です、ふふっ(悪女的微笑)
少年に向かって、なるべく優しく笑いかけてみましょうっ!
ファーストインプレッション(でしたっけ?)大事ですからね!
「あなた名前は?」
「アーロンです」
ここでリジーちゃん、父にバレないよう、少し声を潜めます。
「では今日からそれは捨てなさい。あなたは私のものだから、私が好きな名で呼ぶわ」
うーんこういう悪女的台詞言ってみたかったっ!
さぁ、どんな反抗的な態度に出られるのでしょうか? ワクワク。
ところがです。
「はい」
なんと!
対するアーロン少年、素直に頷いちゃいましたよ!?
びっくりです!
「え。いいの?」
「もちろんです、お嬢様」
跪いて頭を垂れるアーロン少年。
はい?
あなた(推定)10歳のくせに、何やってるんですか!?
予想外! 予定外!
混乱しちゃいますよ、もうっ!
不敵な口許微笑少年は、まさかの天然下僕体質だったようです……
読んでいただき有難うございます(^^)