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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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64.このところ負けが込んでる変態悪女!そろそろ挽回したいのに、さらなる侮辱が待ち受ける!?

 さて、時は折しも1月(ヤヌアリウス)は15日。

 なんちゃってガーデンパーティー会場内のあずまやで、黒髪黒瞳の美青年と対峙中の、私ことエリザベート・クローディス。


「さぁ、シド」


(たぶん) 挑戦的な笑みを浮かべてシドを見上げる悪女歴まる16年。

 今年からはフェロモン少女の特訓も開始です! 


「とっととそのお口をこちらにお寄越し。しっかり味見して差し上げてよ」


 肉食系女子を意識してずりっ、と1歩踏み出します。


 ずりっ。


 おや!? シドさん1歩下がりましたよ。んん? これは!


 もう1歩行ってみましょう。ずりっ。


 ずりっ。


 おお、やはりシドも1歩下がります! 面白いっ!


 出会って以来初めて、優位に立ってる気がしますね!

『立たせてもらってる』 ではなく 『立っている』 のです、ここ重要。


 こうしてずりずりとシドさんを際まで追い詰めたリジーちゃん。

 背後に壁があるならドンもしてみたいところですが、残念。

 あずまやの壁はベンチの背もたれまでなのです。


 と、シドさん頃合いよくベンチにペタンと腰を降ろして下さいました。

 いい位置ですね! ドンできる上に小柄なリジーちゃんでも味見しやすいのです。


 さぁ、では、せーのー!


 ドン!


 やったぁ!


 壁 ド ン 大 成 功 !


 それにしても、間近からの視姦に耐えるなんて、ほんと美人さんは羨ましい。

 もしがリジーちゃんがされたなら、まず毛穴見えてないかとかそっちが気になるもんね。


「アルデローサ様」 シドの声が若干かすれています。喉の調子が良くないのでしょうか。


「本気ですか」


「もちろんよ」 ふふっ、と余裕で含み笑いもして差し上げますとも。


 最近シドとの間では、どうも居たたまれないチョコ痛み発生事件が多くてなんか押され気味。

 もうついにキレちゃいましたよ!

 このまま負けてなるものか。


「さぁ覚悟おし」


 にんまりイイ笑顔を意識して。

 さぁ、では。レッツトライ!


 はい、いち、にのー。


 ………もう1度。


 ほれ、いち、にのー。


 ……………ダメだ。

 いやでも諦めちゃ、ダメ。

 今後のために私は、変態悪女としてひと皮もふた皮もむけるのです!

 シドにできて私にできないわけがない!


 さぁ!いち、にのー。


 ………………………………。

 ふぅぅぅぅぅ(タメイキ)


 よく考えれば、唇だって人肌の続き。

 チョコレートで出来てるならともかく、そんなもの別に味見なんてしなくても、かまいませんよね?

 そうですよね。


 ……うん。

 冷静になるって、大切。


「あれ? どうしたんですか?」


 攻撃姿勢を解かれて、シドさんホッとしたような戸惑ったような表情です。


「よく考えたら別にシドを味見しなくてもいいことに気付いた」


 決して呼吸困難に陥りそうになって諦めたとかじゃありませんからね?


 しかし、はぁぁぁ(溜め息)


 シドごときで手間取っているようじゃ、悪女としてはまだまだ前途多難です。どうしてくれよう。


 悩む気持ちが伝染したのか、シドもなんとなくガクッとしております。


「なんでこんな時に急によく考えるんですか」


 それは3回チャレンジしても決行できなかったから、じゃなくて。


「悪女はいつも冷静なものですからね」


 別に味見ならシドのじゃなくて自分ので全然OKですもんね! と思ったら、急に先程の記憶がフラッシュバックしてきました。


 自分の、って。

 シドに舐められたんでしたね。

 ―――その時、胸に入ったシドの息が甘くて。背中が、痺れたみたいに―――

 のぉぉぉぉぉぉっ!


 もういいです! もういいから!

 たった一瞬のことを、何秒再生するんでしょうか、このムダな脳ミソは!

 恥ずか死ぬ。


「アルデローサ様?」


 急に口を押さえて固まった私を見て、シドの戸惑い気味の顔がぱっと嬉しそうなものに変わりました。


「もしかして意識しておられるんですか?」


「なんのこと?」 声が裏返ってますね……もう、いやっ。


「いえ、別に。いいんです」


 ふっふーんと鼻歌が出そうな勢いで上機嫌のシドさん。

 ……困り顔フェチ健在ですね!?


 少し遠くの方で、皆さんステージ前にお集まり下さーい、と呼ばわるサラさんの声が聞こえ、私は内心で自分の脳ミソに蹴りを入れつつ、シドと共にあずまやを出たのでした。




「ではではぁ、″月刊ムーサ″1周年と″運命の女神たち(パルカエ)の物語″の刊行を祝ってぇ、かんぱーい!」


 ノリもよろしくステージ上から銀の杯を上げるのは、バルシュミーデ兄弟社の社長様、すなわちジグムントさんのお兄さん。

 顔立ちは少し似ていますが、筋肉はほどほどでメガネなし、鼻下に生やしたヒゲがきれいに整えられてテリっと輝いているのが印象的な方。


 そして、ユーベル先生の工夫の『く』の字も感じられない穴棒アーンな小説の ″ムーサ″ 連載を決定したご本人様です。


「「「「かんぱーい!」」」」


 皆がにこやかに唱和して杯を上げる中、リジーちゃんは無言。

 せめてもの抵抗です!

 だってね、この場でまで誉めることないじゃないですか。


「ユーベル先生の新連載を迎えて ″月刊ムーサ″ は一層盛り上がり、えー初年度は、目標以上の! 売り上げを達成いたしましたぁ!」 とか。


 まるでユーベル先生お1人の力で目標越えを達成したような語り口がイラッとしますね!

 トクトクとして語るドヤ顔に、外の雪を書字魔法で積もらせて差し上げたいレベルです。


「せっかくの乾杯なのに、ご機嫌麗しいとはいかないようだね」


「ええだって、皆様の作品だって素晴らしいのに、ユーベル先生お1人を誉めるだなんて」


 背後から掛けられた声に反射的に答えて、しまった、と思います。

 だってこの、砂糖とクリーム多めなノーブルボイスは。


「君はユーベル先生の作品が嫌いなのかい?」


 ラズール ″鬼畜スズメバチ″ 青年ではありませんか!


 シドが隣で 「こらトリセツ思い出せ」 と言わんばかりにくいくいと袖を引っ張りますので、とりあえずプイッと横を向いておきます。


「嫌いではありませんわ」 大嫌い、でございます。


「毎回毎回同じような穴棒アーンを読ませられる方としては、たまったものではございませんわ。

 もう少しバリエーションを持たせれば良いのに、ひたすら退屈! でございます」


「読んでるんだね、毎回毎回」 笑みを含んだ声にハッとします。


 しまったぁ! バレた。

 1番バレたくないかもしんない相手にバレた。


「やっぱり興味あるの? 何なら実地でレッスンしてあげようか?」


 ノーブルスマイルで、な、な、なんてことを!

 いや118%言うと思ってましたけど。

 だからバレたくなかったのですけど。


「ユーベル先生のはついで、ですわ!」


「へぇ……誰の?」


「ほ、ほかの先生方のです!」


「じゃあ、最下位なんだ」


「う……わたくし、人様の作品にランク付けなどいたしません!」


 好みかそうでないかはあれど、それぞれの先生方の思いの丈が詰まっている作品に上下をつけるなど、おこがましいにも程がありますよ。


「お行儀いいね」 くすっと意外にも好意的な笑いをいただきました。


「まるでシー先生の視姦作品みたいだ」


 な、なんですと……!?


 突如として出された己がペンネームに思わず口からスパークリングワインを噴きかけるリジーちゃん、実はしがないお色気作家 ( 『お行儀いい』 は侮辱です!) なのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)


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― 新着の感想 ―
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