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63.ナンパ青年の守備範囲は神レベル!?うっかり感動しつつも新たな試練に立ち向かいます!

 さて時は1月(ヤヌアリウス)の15日、バルシュミーデ兄弟社主催・王女殿下協賛の″月刊ムーサ″1周年&童話集刊行記念パーティーに出席中の、私ことエリザベート・クローディス。


 待ちに待ったパーティーは、なんと!

 王宮ホールにて 『なんちゃってガーデン』 すなわち、小川・芝生・あずまや・満開の薔薇付きで開催されております。

 内輪のパーティーらしく皆、思い思いにくつろいでいます。素敵です。


 なのに、それなのに。


 なんだかリジーちゃんだけが。

 赤面あわあわ落ち込みまくり、という、残念な事態に。なっております。


 あずまやに隠れ、耳まで赤くなって突っ伏し中です。


 頭の上では黒髪黒瞳の美青年・天然下僕体質なシドさんと、危険なオッドアイの日焼けしたスズメバチ様・ラズール青年が議論しております。


「だってどう考えてもそうだろ!?

 女の子の方だって、そんなの分かってて半カケ食わせてるんだと思うだろ!?」


 なのになぜ、今更これだけ恥ずかしがるんだ 「慰メテ」 とか言って誘ってるとしか思えないんだけど慰めていい?


 とかブツブツ仰るラズール青年。

 誰も誘ってなんかいません!

 ほらほら、デイドレスだって普通にどこも開いてない大人しめプレタポルテでしょ?


 好物の、視姦すら誘ってません!

 それ以上、誘うわけがありません!


「慰めるのは俺がしますので、他の麗しいお嬢様でも鑑賞しに行かれたらどうですか」


 ブリザード視線が見て無くても簡単に想像できる声で、シドさん。


「うーん」 ラズール青年、考え込んでおります。


「でもやっぱりリジーがいいな。

 サラさんもキレイだけど、声かけただけで肘鉄くらわされそうだしね?」


 それに今日のメンバー大体、人妻か婚約者持ちでしょ?

 人としてはまずフリーを狙うよね!


 なんて、もっともとな人道を説くラズール青年です。対するシドは。


「いえいえ、ですが」 と今度はイイ笑顔を作っているもようですね。


「どんな女性も夢中にさせてしまうと評判のアリメンティス少佐様が、こんな乳臭いジャリにばかり構うなど」


「いいね乳の匂い大好きだよ」


「しかしタラシの名折れですよ?

 市井の名花と名高い庶民の美人妻を誘惑してこそアリメンティス少佐様でしょう」


 シ、シドさん!? アナタ何テコトヲっ。

 ……己が両腕に埋もれつつ、一瞬恥ずかしさを忘れてしまいましたよ、もう。


 けれどシドの言は、ラズール青年に響いたようです。


「なに!? 市井の名花!?

 どこの夫人だい?」


 何やらボソボソとラズール青年に耳打ちをしているらしいシドさん。

 はっ……これは、もしや!

 半開きの新しめ扉的に美味しい構図では!?


 うっかり両腕から顔を上げて確認したくなりますが、ガマンです!

 落ち込み中に簡単に浮上するなど、有り得ませんからね。


「ありがとう! 行ってみるよ」


 ラズール青年は晴々とした台詞を残し、あずまやから足取りも軽く出ていった模様です。ふぅぅ。


 けどシドさん。


「いくらラズール様を追い払うためとはいえ、人妻にけしかけるなんてどうかなさっているわ」


 そう、他人だったら書字魔法でマジ凍死3分前程度のおしおきですよ!


「アルデローサ様」 シドが近寄ってきて、私の肩に手をかけます。


「羞じらうか萌えるか怒るか、どれかになさいませんか」


 なんで突っ伏した背中だけでそれが分かるんだろう。謎です。


「ではまず怒るわ」


「それなら多分心配要りませんよ。

 75歳未亡人今なお昔の面影を残す、お年にしてはキレイなお方ですから」


「ラズール様にそれ言ったの?」


「75歳は初めてだ、と嬉々としておられる様子でしたが」


 すごい守備範囲ですねラズール青年。ちょっと感動してしまったわ。


 まぁ、75歳なら……ラズール青年にちょっかいかけられても、きっと鼻であしらえることでしょう。

 小娘とは経験値が違いますものね。


「まぁ可愛い坊やだことオホホホ」 なんて。

 フェロモン美魔女ですね!


「で、萌える方なんだけど」


「何に萌えていたのかイマイチ分かりませんが」


「ラズール青年の耳、どうだった?」


「んなもの見てませんね」


 えええー! 次のアナスタシア様のお相手はイヤリングの擬人化精霊にしようと思ってるのに!


 そして 「ん? それだけしっかり見てるってアナタ」 と腐った妄想を楽しもうと画策もしていたのに!

 がぁぁぁん。


 ショックに再び突っ伏す私の背後から、シドの声がします。


「で、羞じらう方は?」何だかちょっと怒ってるようですね。


「ラズール様に言われたのが、そんなに恥ずかしかったんですか?」


「恥ずかしかったわよ」


「で、そんなにあからさまに恥ずかしがって 『ナグサメテ』 とか誘ってたんですか?」


「シドさんまで、そんなことおっしゃるの!?」


 思わず振り返ると、シドの黒い瞳が真っ向からこちらを見ています。

 居たたまれなさに、もう1度突っ伏すリジーちゃん。


「違うなら、どうして」


 しつこいですよシドさん。

 ラズール青年、すなわち鬼畜スズメバチ様を相手に 『ナグサメテ』 とかするわけがないでしょうが、コワイのに。


 でもまだジトッとこちらを覗うシドの視線を感じるので、仕方なく突っ伏し姿勢を解除して、白状します。


 顔は上げられなくてずっと下向き。


「シドも、そう思ってた?」


「何の話でしょうか」


「その、チョコレート半分コする時に 『くち』 いやなんでもない」


 言えない。聞けない。

「これまでずっと『唇の味』とか思ってたの?」 なんて。


 というわけで、しつこく突っ伏すリジーちゃん。

 けど、シドはそれで察してくれたもようです。


「あんなのナンパ台詞に決まってるでしょうが」


 オマエ馬鹿じゃね? 的な響きを言外に感じます。


「だって」


「ずっと、特別に美味いチョコレートの味しかしてませんよ」


「ほんとにほんと?」


 顔を上げた私の顎を、シドの手が捕らえます。


 漆黒の瞳が、素早く近付いてきて一瞬閉じ、湿った柔らかいものが唇にあたって、素早く離れていきました。


 ……くちびる、味見、ですか?


 思わず指で口を押さえるリジーちゃんに、シドがニッコリとイイ笑顔を向けています。


「ほら、全然違う味ですよ」


 ……………1人で納得してんじゃ、ありませんっ!


 どうしよう!

 ……イヤこれはその。

 イジワル、の方ですよね。

 きっと受付代行分のオプション料金まだ払いきってなかったか、さっきの腐りかけの妄想がバレて追加料金、てことですよね。


 じゃないと居たたまれなさとチョコ痛みで泣く。

 でも負けない。

 悪女ならこれくらい 『食前酒にもならないわ!』 と笑い飛ばすのですよ。


 さぁ、いきますよ!


「ふっ……! わたくしには、全然分からないわね」


「そうですか? じゃあ」 シドが耳に口をつけて囁いてきました。


「俺ので味見されますか?」


「…………!」

 あうううう。

 びっくりしすぎて、呼吸困難に陥るかと思いましたよもう。


 シドったらいつの間に私以上の悪女で変態に!?


 これは、負けてられませんね!


 泣いてる場合じゃないですよ、リジーちゃん!?


「受けて立とうじゃないの」


 ふっ。せいぜい驚くがいいわ!

 大胆なテクで泣かせて差し上げてよ!……どうやるか分からないけど。


 でもこちらは悪女歴まる16年、変態歴だってもう今年で3年目!


 なんとかなるはず、と、シドを見上げて不敵な笑みを浮かべてみせるリジーちゃんなのでした。

お読みいただきありがとうございます(^^)

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃーーーーー!!(≧◇≦) シドったら……シドったら…… ほら、違う味でしょってあーた!(動揺を隠せない雨音w) あまーーーーい!!( ゜Д゜) はぁはぁはぁ…… すっごい勉強…
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