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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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62/201

62.鬼畜スズメバチ様との再会に困惑気味の変態悪女!そして美青年の天然下僕体質も炸裂します!?

 かくして、かねてより楽しみにしていた ″月刊ムーサ″ 1周年 & 童話集 ″運命の女神たち(パルカエ)の物語″ 刊行記念パーティーも、いよいよ開催の運びとなりました!……の直前。


 王女殿下とラズール青年の婚約破棄の話(ただならぬ関係)を聞いて、思わずうっかり、あんぐり口を開けて静止する私ことエリザベート、趣味妄想、特技も妄想になりたい16歳でございます。


 い、一体どのようなことが2人の間に?


 いやラズール青年だから、王女殿下のお友達と浮気とか侍女と浮気とかそんなところでしょうか。

 許せませんね……?

 王女殿下に代わって天誅、書字魔法で裸踊りの刑ですよ! ……いや、でも。


 おかげで王女殿下の方は、美少年とジュエリーを愛でつつ趣味と文化支援 (が主な役割だそうで) に生きる楽しい毎日を送った挙げ句に、ヘルムフリート青年といい感じにラブを育ててもうじき婚約、というなかなか羨ましい現状になっているわけです。


『他人の色恋沙汰に首突っ込む野郎は、馬に蹴られて死んじまえ』 との前世の格言 (?) もフラッシュバックしたリジーちゃん。

 とりあえず誰かさんを見習い、にこやかに涼やかに受け流しておきましょう。


「あら、さようでございますのね」


 しかし内心は、ぐるぐるアセアセ、でございます。


 しまった……!

 王女殿下に鬼スズメ様の話題は地雷だったかもしんない。

 何だかんだと言いつつ仲良さげな2人だったから、大して考えてなかったのです!……本当に社交向きじゃないですねぇ、リジーちゃんたら。


 社交はどうでも良いけど、リーゼロッテ様には嫌われたくないのになぁ、とションボリです。


 ―――それにしても。いつの間にか、嫌われたくない人が増えてますね!

 きっと、ナンチャッテ善人続けてたら 『嫌われたくない』 と思えるほどに深く関わることのなかった人たち。―――


 だからやっぱり、ビバ悪女!

 そして仮にも悪女なら、嫌われたくない、とかはさておいて、もっと正直に1番大切な気持ちを出すのですよ。


「そのようなこととは知らず、伺ってしまって申し訳のうございますわ」


 今世のリジーちゃんは前世とは、一味も二味も違うのですから。

 でも、気持ちってどうやったら通じるんだろう。


「予習が足らなくて、気が廻らず、本当にごめんなさい」


 どんなに言葉を重ねても、通り一遍の謝罪にしか聞こえない。

 どうやったら、分かってもらえるんだろう。


 前世では、そんなことしたことがなかったから、全然わかんない。


 人から嫌われるのは恐かったけど、それはもう確定で (だって実母の太鼓判つき) だから、誰のことも嫌いだった。

 中でも、自分が1番嫌いだったから、人から好かれたいとか分かってもらいたいとか、1度も思わなかったもの。


 ナンチャッテ善人の仮面の陰で、何もせずにただひたすら、世の中からオサラバできる日を待っていただけの前世……

 うぅ、意味があったと思いたいけど、無駄だったとしか考えられませんね! くそうっ!


 でも、負けません!

 人が変わろうと思えば、いつの世でもチャンスはあるはず!


「あらあら、そんなに泣きそうにならなくても、ねえ?」


 リーゼロッテ様の笑みを含んだメゾソプラノの声が優しく響きます。


「え! 泣きそう? それ見たい!」

 ホールドを外し私の前に回り込むラズール青年の頭を、ビシッとはたきながら 「気になさらないで」 と宣う王女殿下。


「もともと結婚する気なんて無かったから、ちょうど良かったんだもの!」


「それに随分、昔のことだしね」


 ラズール青年が日焼けしたお顔にほんの少し苦めのノーブルスマイルを浮かべ、再びリジーちゃんホールドの位置に戻りそうになった時。


 私の手を、もんのすっごい乱暴に掴んで引っ張る大きな手。

 シドさんです!


「失礼。俺の主がまたご迷惑をお掛けしたようで」


「シド! どこに行ってたの?」


 何となくほっとするリジーちゃんに、ジロリと不機嫌な流し目が送られます。

 王女殿下のブリザード視線顔負けの、冷たさです。


「お嬢様の代わりに受付を」


 ………………………しまった。


 そうです、飾り付けだけでなく何かと人手不足のようだったので 「受付もさせていただきますわ!」 と言っていたんでした。


 王女殿下とヘルムフリート青年の婚約話に浮かれ、ラズール青年との婚約破棄話にワタワタしているうちに忘れてしまってたわ。


「シドありがとう!」 こちらも心の底からのお礼です。

 シドは大丈夫。どんな短い言葉でも、きっと分かってくれるから。


「さすがシドね!」


 いや本当にもう、シド様サマですよね!

 感謝を込めて誉めると、シドの薄い唇がくすりと笑いました。


「勿体ないお言葉です、お嬢様」


 そのまま私の手を取り、流れるような動作で足元に跪きます。……なにこれ。


 は、は、恥ずかしいっ!


 シドさんの、ビシッと決まったキレイな姿勢がより羞恥を掻き立てます。

 でも、でも……!

 王女殿下とラズール青年の手前、「こんなの従僕だから当たり前」 みたいな表情を……!


 …………装い、きれません。


 そして、トドメのひと言。


「お嬢様のためなら、何でもさせていただきますよ」


 どんだけ羞恥プレイする気でしょうね!

 シドさんったら、もうっ!


 先程のウッカリ騒動に続き、再び泣きそうになるリジーちゃん、なのでした。


 すると。


 顔をうつむけつつ、上目遣いにこちらを伺う漆黒の瞳が、満足そうに笑います。

 ……はっ、これは!

 もしかして!


(受付交代分の使用料金イジワル!)


 突発的になさるなんて、もうっ!


 最近、急襲増えてます。

 しっかり傾向と対策を把握しとかないと、心臓が持ちません。

 どういうわけかこの頃、羞恥に加えてチョコ痛みが発生しがちなので。


 …………チョコ。

 あ、そうそう!


 チョコレートといえば!


「シド! そんな座ってる場合では無いわよ」


 当パーティーのスイーツコーナーを思い出し、急にしゃきん、と回復するリジーちゃんです。


「 ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ のチョコレートがたくさんあるのよ!」


 行きましょう? と袖を引っ張れば、何だかガクッと肩を落とし気味に立ち上がるシドさん。

 ふっ……イジワルを続けよう、たってそうはいかないのですよ。

 ザマヲミナサイマセ!


「ではお姉様、少し失礼させていただきますわ」


 シドの袖をもったまま、一礼すれば王女殿下は 「うん、後でねっ」 とニコニコ手を振って下さいます。


 これから挑むのは、買い占めたチョコレートの山!


 ワクワクしますねぇ。


 チョコレートがある限り、リジーちゃんは無敵なのです!



 さて、活版印刷所・ヴァルシュミーデ兄弟社の関係者ばかりのパーティーは、マナーはほどほどでOK、な雰囲気満載です。

 それに乗じ、靴を脱いで小川に足を浸しつつ、小皿に取り分けたチョコレートをいただくリジーちゃんとシドさん。


 なんと、小川に流れているのは温水。

 演出だけでなく、暖房効果も兼ねたナイスアイデアですね!

 足湯気分でホッコリです。


「シドこれ美味しい!」


 例によって半分シドに食べてもらいつつ、チョコレート全種類制覇を目指します!


 と、不意に。

 かじりかけチョコレートを持った手が上に引っ張られました。

 そのまま、ピックの先が日焼けした顔の中でパクっと開いたお口に吸い込まれていきます。


 思わず悲鳴を上げるリジーちゃん。


「ああっ! シドのチョコレート!」


「ふうん?」


 チョコレートをしっかりモグモグ味わって、ゴックンと飲み下すそのお方は。


「リジーの唇の味がするね?」


 とノーブルスマイルで言ってのけて下さったのでした。

お読みいただきありがとうございます(^^

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやんシドの跪き♡(*´Д`) いやーこれでチョコ食べたら確実に鼻血が( *´艸`)←押さえているw 文章を読みながら頭の中で想像したら私がとんでもないことに……ゲフンゲフン シドが…
[一言] >ぐるぐるアセアセ 可愛い (*´▽`*) >「リジーの唇の味がするね?」 怖えぇぇぇ~(´;ω;`)ウゥゥ シドよ! こいつをしばけ! ( ゜Д゜)ノ
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