60.やってきました1周年記念パーティー!まずは準備に大忙しの王女様と変態悪女、そして鉄の事務員様なのです!?
こうして新年早々、鬼畜スズメバチ、略して鬼スズメ様に遭遇するというハプニングにあい、シドにコッテリ絞られつつ帰宅し、心配しつつ待っていた両親にも 「もう迷子にはなりませんゴメンナサイ」 と謝りつつ、(アレ私今年17歳で道も全部分かるのになぜ家の皆から迷子認定されてるの? もしかして過保護か?) との疑問をとりあえず封印した、私ことエリザベート・クローディス。
紹介文の前置きが長過ぎてふぅぅぅ、という感じですが、今日は半月ぶりに王宮ホールに来ております。
カウントダウンパーティー以来ですね!
あ、今何もフラッシュバックさせるな、リジーちゃんの脳ミソ。
だって、待ち合わせにやってきて顔を見て急に赤面されたら 「私の顔そんなにエロいかな」 って気になるでしょ!?
はい、なーにーもーなかーったーあーのーとーきーは。
自己暗示をかけつつも、なるべく健康的にご挨拶です。
「おはようございます、サラさん、ジグムントさん……をを!」
おはようございます、とサラさんとジグムントさんが返事を下さるのを遮って、思わず声を上げるリジーちゃん。
な、なんとなんと!
ジグムントさんが、メガネを外しておられます。きゃあっ。
「何赤面しておられるんですか」
見えてもいないのに背後から的確にツッコむシドさん。
「だってだって! 普段、メガネの人が外してるのよ!?」
エロいでしょ、これは!
しかもジグムントさんの場合はメガネ無い方が5割増しで男前ですからね。
普段はメガネの邪魔にしかならない、コートの上からでも分かるムキマッチョが今はスバラシイモノに価値転換しています。
ふぉぉぉ! 萌。
「寒いのでメガネが曇ってしまって」
ジグムントさんがその、普段は筋肉と同じくメガネの邪魔にしかならないガテン系なお顔に照れ笑いを浮かべます。可愛いです!
なんだか、また新しい扉が開きそう。
その名も 『メガネ似合わない男子萌』 ギャップ萌から派生しています。
というわけで、そんなジグムントさんには常日頃はメガネ掛けておいていただきたいもの。
外したところを妄想して楽しむのが、ますますエロくて良い感じですよね!
「メガネの曇りは石鹸を塗っておくといいそうよ」
お、今、前世の知識がちょい役に立ってますよ? なんか嬉しい。
「そうですか!」 パッと顔を明るくするジグムントさん。
「いつもは卵白を塗るんですが、すると、なんだかレンズが汚れやすいんですよね」
ら、卵白。確かに汚れそうですね。
それはさておき。
今日はいよいよ ″月刊ムーサ″ 1周年 & 童話集 ″運命の女神たちの物語″ 刊行記念パーティー、でございます。
王女殿下の取り計らいで 『幸運の女神の使者』 をやったご縁を使い、堂々とパーティーに招待されたリジーちゃん。
ですが、前々からの約束通り、ちゃんと準備も手伝うのです!
盛大なパーティーになるよう、1月に入ってからこちら、せっせと紙のお花やチェーン、くす玉作りなんかに励みましたからね。
「でも、市民会館ホールですのに、どうしてここで待ち合わせですの?」
前々から聞いていたパーティー会場は、予約だけで誰でも使え、使用後は各自でお掃除戸締まり必須 (皆さんでキレイに使いましょう) な市民会館ホールだったはず。
身の丈に合っていて良い感じです。
一方、待ち合わせに指定された王宮ホールでは、何やら盛大なパーティーがあるもよう。
場内で着々と施工が進んでおります。
『飾り付け』 じゃなく 『施工』 です。
芝生が敷かれ小川が流れ、四阿が建てられております。
どこから運び込まれたのか、季節外れの薔薇までが薫り高く咲き誇っております。
施工分、あまり人数は入らなさそうだから 『超上流限定の新年会』 ってところでしょうか。
「もしかして、王女殿下も待ち合わせなのかしら?」
考えられることといったら、それしかありませんね!
リーゼロッテ様はけっこうな 『何でもしたがり屋さん』 ですからね。
お友達と、アレコレとお喋りしつつ飾り付け……うーん、女子っぽくて良いですねえ!
「確かにそうなんですけど」
ジグムントさん、嬉しいような困ったようなお顔をされています。
「それがですね」
と、アルトの声で後を引き継ぐサラさん。
真っ直ぐで艶やかな白茶の髪を肩で切り揃え、常に冷静な琥珀色の瞳が理知的な印象を与えています。
かっこいい。
「実はパーティー会場が」
「待ってまだおっしゃらないで!」
落ち着いた説明に、突如としてメゾソプラノの声が割って入ります。
我らが王女殿下、リーゼロッテ様のご登場です!
「きゃあっ、お久しぶり! 会いたかったわ!」 といつもの挨拶を済ませて、王女殿下は可愛らしくドヤ顔を披露されました。
「パーティー会場はこちらに変更になったのよ!」
「えええっ!?」
まじに驚くリジーちゃん。
だって、小川ですよ四阿ですよ薔薇ですよ?
リーゼロッテ様が嬉しそうにうふふ、と含み笑いされます。
「そのお顔が拝見したかったのよ」
ほかの皆さんもサプライズで、市民ホールから王家の馬車でこちらに運ぶ予定だそう。
「でもまずは、リジーちゃんよね!」
表情豊かで見ていて飽きないわぁ、と有難いコメントいただいてます。
「本当に豪華で驚きましたわ!」
言いつつ、お手製ペーパークラフトの入った袋をズリズリと後ろ手に隠すリジーちゃん。
だって、小川ですよ四阿ですよ本物の薔薇ですよ?
隠した袋をシドが良いタイミングで、ひょい、と受け取ってくれます。
本当、いつも何かとお世話になってますね。
が、それを目聡く見つけるリーゼロッテ様。
「あらあら、何か持ってきて下さったの?」
「いえ、大したものでは」 しれっと言い切るシドさんです。
「内輪のパーティーと伺っていたので、手土産にワインを」
ともう一方の手で持っていた袋を示します。
「あらそれは嬉しいわね、ね、ジグムントさん!」
「そうですね、有難いです!」 ニコニコとジグムントさん。
「王女殿下が、食事や飲み物も提供して下さると伺ったんですが、食器だけお借りすることにしたんですよ。
内輪感も無くしたくないですからね」
「それはようございました」
キレイな余所行き営業の笑みを浮かべるシドに、王女殿下もジグムントさんもウンウン、と頷いています。
さてこれで一段落、と思いきや。
「それで、そちらの手に持った軽そうなのは? それよそれ!」
もう隠せませんね。
シドに目で合図し、しゅううん、となって上目遣いスタンバイOKのリジーちゃん。
対するリーゼロッテ様はお目々キラキラさせながら、渡された袋の中身を取り出しています。
「あらあら可愛い! 上手ね」
「ありがとうございます」
けど、この小庭園な風景の中に並べてもチグハグなだけですよね。
ええ、それくらい、変態悪女でも分かりますよ。
ああもう、凹むな、リジーちゃん!
こんな素敵なパーティー会場だなんて嬉しいでしょ。ショボいペーパークラフトで彩らずに済んで、本当に良かったでしょ!?
しかし王女殿下は心底嬉しそうにニコニコなさっています。
「これだけ飾りがたくさんあれば、 ″月刊ムーサ″ と ″運命の女神の物語″ の周りをもっと華やかにできるわね!」
言われてそちらを見れば、白いテーブル掛けをかけた2つのテーブルに、それぞれの本がどーんと平積みになっています。
けれど確かに、地味な印象ですね。
「そうですね! もっと目立たせた方が売れそうですね。シーさんナイスですよ!」
いつの間にか似合わないメガネを掛けたザ・ホメリスト、ジグムントさんも賛同して下さり、サラさんが早速リボンを手に取ります。
「まずはリボンで飾って、その上からピンで止めていきましょうか。
くす玉は天井に。男性陣お願いします」
テキパキとした物言いで有無を言わさない指示。
さすが有能な事務兼庶務員さんですね!
なんだか恥ずかしいな私。
こうして皆が活用法を考えてくれるのに、最初から勝手に諦めて凹むとか。
でもまぁ、リジーちゃんは変態悪女ですから!
スンバラシイ施工を押しのけ 「あら私のペーパークラフトだって素敵よ!」 と前向きに売り込むなんてできるわけがない、のですよ!
そんなのは、自分の性格が良いと信じ込んでる善女がすることですからね。
じゃあどうするかって。それは。
「こんな風に活用できて嬉しいわ」
花をピンで止めつつ、言ってみます。
「使い方を考えて下さって、本当にありがとうございます」
「あら、こちらこそ!」
王女殿下は微笑み、サラさんはこう宣言。
「余った花は本のオマケにつけましょう。これで売り上げ倍増し狙えますね」
…………ば、倍!? 冗談ですよね?
しかし何度見ても、理知的な表情を全く崩さないまま 「これで1.85倍」 などと呟きつつ、飾り付けを進めていくサラさんなのでした。
読んでいただきありがとうございます(^^)
※6/23 誤字修正いたしました。誤字報告下さった方、どうもありがとうございます!




