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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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6. 解。悪女にはお友達より○○です!でもお買い物中にうっかり人道に目覚めるところでした……ふぅ危ない。

今日から3話ほどお買い物話です。現代の道徳規範からすると犯罪ですが……そこは異世界&悪女なので(^^;)

「ねぇお父様。ここがダフネス港西口市場なの?」


「そうだよ」


 私は父に手を引かれて、あたりをキョロキョロと見回しました。

 今日はなんと! かねてよりおねだりしていた、5歳の誕生日プレゼントを買ってもらいにきているのです!


 ダフネス港西口市場は、馬車が3台並走しても余裕ってくらい幅広のアーケード通り。

 両脇には簡素な造りのお店……どれくらい簡素かっていうと、板で仕切って露台を並べた程度のものですよ。


 売っている品物は日用雑貨、野菜・果物・菓子、手芸品となかなか種類豊富。既成服や地方の特産品などの店もあります。

 なんでも揃いそうですね!


 加工食品は保存がきくものが多いですが、ところどころにその場で調理している屋台も。

 揚げ団子、フライドポテト、シシケバブ、串刺しにしたタコの照り煮、唐揚げ、漬物、イカ焼きなどなど……多国籍B級グルメのメッカ状態。

 掛け声も賑やか、見ているだけで楽しいのですっ!


 一緒にエールやワインなども売っております。

 もしや昼飲み公認? 大人になったらまた来てみたいものですねっ!


「ここは寄港した船の船員たちがよく来るんだよ」


 父が説明してくれました。

 なるほど。

 だから種類豊富で多国籍で昼飲みOKなんですねぇ!


「ところでお父様。わたくしのお友達はどこに売っていますの?」


 もともと奴隷市場というのは薄汚い暗い場所……というのがリジーちゃんのイメージ。

 けれど、それで有名なはずのダフネス港西口市場は全っ然違います。

 明るくて広くて賑やか、掃除も行き届いていて清潔なのですよ。


 そして。奴隷の『ど』の字もありませんよ……?

 期待外れもいいとこです!

 父、もしかして 「あれ? 間違えちゃったよゴメン。お友達はまた今度にして、今日はもう帰ろうか」 とか、おっしゃいませんでしょうね?

 それを私が諦めるまで続ける……ありそう!


 と思ったら。

 父がバツの悪そうな顔で身をかがめて囁きました。


「大きい声で『人を買う』とか言っては、いけないよ。これは恥ずかしいことなんだ」


「恥ずかしいのですか?」


「そう。貴族として、してはいけないことなんだよ」


 おおぅ。ルーナ王国版ノブレスオブルージュ!

 人身売買はダメなんですねっ……なるほど。


 それで最近、父の目の下にうっすらクマができていたのですか!

 そういえば、母も……悩ましげに私を見詰めることが多かったような……!?


 あららら。

 リジーちゃんのおねだり、イケメンパパの美貌を曇らせ、天使様を悩ませる程の威力があったんですねぇ……ううっ……!

 ちょっと心が痛みます。

 でも、負けませんけどね!


 こんな時は。


「お父様、大好き!ありがとう!」


 首にかじりついてお礼。鉄板ですね!

「いいんだよ」 ほら、父の顔がデレデレですよ!

 ……そろそろ娘の本性に気付いても良い頃だと思うのですが、ねぇ?

 親バカって恐ろしいですね。


「今回はリジーの友達だから、特別だよ。だけど絶対に大切にするんだよ」


「はい! 良いところをたくさん見て、仲良くなりますわ」


 満面の笑みでの模範解答に、父は少し安心したようです。チョロいわ。


 さて、かんじんの奴隷市場はというと……


「ふわぁぁぁ……」

 そそり立つ大理石の柱を見上げて、思わず口をポカンと開けるリジーちゃん。


 なんと、前世でいう古代ローマ風の野外円形劇場が、『月3回、0のつく日』開催の奴隷売買会場のようです!

 場所は、ダフネス湊川西口市場の外れ。

 イメージとは全っ然、違いましたね!


 でもよく考えたら、それもそのはずです。

 奴隷1人の平均価格は工場の従業員約3人分の月給相当。

 それをポン、と出せる人しか集まっていない上に社会制度として公認されているのですから、奴隷市場が薄汚くて暗い場所のはずはないのでした。


 舞台の周辺では裕福そうな身なりの方々がワイン片手に談笑なんかしておられます。

 何気に富裕層(貴族以外)の社交場っぽいイメージですね!


 一方で父は、変装メガネと付けヒゲを懐から取り出しスチャッと装着。

 よっぽど他人にバレたくないのでしょう。練習したかのように鮮やかに、美青年から美オジサンに変身です!


 さて、肝心の舞台に目をやれば。

 そこは3ブースに区切られていて、それぞれにジャンルが違う奴隷が売られているもよう。

 男性、女性、子供、ですね。


 1番目立って華やかなのは、やはり、女性ブース。

 こちらの皆さんは色彩も年齢も関係なく、見事にひんむかれてます。

 覚悟を決めてセクシーアピールしておられる美女も多数……うーん。

 どうも、全員が「可哀想」と一括りにはできなさそう。


 けど、なんか、ムカっときちゃいますね!

 主催者も彼女ら買うヤツも全員、引っぱたいてやりたいっ……

 と、思っていたら。


「リジー」 父の手がそっと目を覆いました。

「あまり見るんじゃないよ」


 明らかに、困った口調。

 今晩からは『奴隷市場に連れて行ったのは教育的に悪かったのではないか』という後悔で、また父の目の下にクマさんが居座る日が続きそう、ですね。


 リジーちゃんのせいじゃないもん!

 女の子ひんむいて商品にするオジサンたちが悪いんだもん!


 よし! リジーちゃんが仇討ちして差し上げちゃいましょうっ!

 女性ブースに群がっていたオヤジ共は後で、書字魔法の練習台になるのですよっ……もう決めたもんね!

 うまくいけば、皆さん一斉に裸踊りをすることでしょう!


 そんなことを密かに考えつつ、子供のブースの前に行きます。

 こちらは、私と同じ5歳程度の子から12、3歳頃まで、年の頃はさまざま。

 女性ブースとは違い、あからさまにどんより暗い空気が漂っていますねぇ!


 泣きベソかいている子や、キッとこっちを睨んでいる子。

 どの子も不安がっているのがなんとなく分かります。


 これからこの子たち、どんな人生が待っているのかしら……

 安価な労働力としてコキ使われるか、変態オヤジの慰めモノにされるか。

 妄想すると、すごくかわいそう。

 なんとかしてあげたいですね!


「お父様ぁ、リジー、この子たち全員ほしい、なぁ♡」


 父の上着の裾をツンツン引っ張り、鼻に通した猫なで声でおねだりです!

 ふっ、これが悪女の技でしてよ!?


 しかし。

 父の顔はまたしても、ぴきーん、と音がしそうに凍り付きました。


「気持ちは分かるけれど……1人だけだよ」


「ええっ……そんなぁっ……ダメ?」


「すまないね、それではうちが破産してしまう」


「じゃあ、工場の従業員の代わりにこの子たちを使ったら?」


「……従業員にも生活や家族があるんだよ?」 父が、しゃがみ込んで目を合わせてきます。

「急にやめさせるわけには、いかないだろう? わかるかい?」


「……はい」


 うーーんっ! どう考えても、5歳やそこそこの脳ミソでは、これ以上父を説得する材料が見つかりませんっ!


 仕方がないのです。

 奴隷救済は、清く正しい善人の皆様に任せることにしましょうっ!

 大丈夫。悪女なリジーちゃんより、きっと立派にできるはず……!


「さて、と」 気を取り直して。

「お友達になってくれそうな子、いるかなぁ……?」


 父の手前、『お友達』を強調しつつ順番に子供たちを見ていきます。

 ……泣いている子、怒っている子、不安そうにキョロキョロ見回している子。


「うーん。どうしようかしら」

 どの子も、イマイチ下僕向きではありませんね!


 なかなか決まりませんが、妥協する気は全くナシ、なのです!

 なんたって、悪女にはお友達より下僕、人間関係より損得勘定、ですからねっ!


 心底からの愛や善意は時に裏切ってきやがりますが、金と権力で縛り付けた表面的な従順さは金と権力が続く限り裏切りませんもの。

 ふっ名言!


 さて。そんなわけで。

 いるかなぁ?

 リジーちゃんにぴったりの、お友達……じゃなかった。

 げ・ぼ・く・さ・ん・っ♡

読んでいただき有難うございます(^^)

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― 新着の感想 ―
[良い点] >これからこの子たち、どんな人生が待っているのかしら…… >なんとかしてあげたいですね! リジーちゃんに悪女は、無理そうだと思いましたね。
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