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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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55/201

55. 無礼講パーティーに潜む危険な誘惑に困惑しまくる変態悪女?!でもたぶん負けません!

 さて、12月(フォルトゥヌス)もいよいよ最終の本日。

 王宮のカウントダウン仮装パーティーにお呼ばれ中の、私ことエリザベート。花も羞じらう16歳。

 今現在、花よりも羞じらっております……


 もう真っ赤っか、なのでございます!


「だってラズール様があんな言い方されるんですもの。気付かなくて、当然でしょう?」


「いや、あれを際どい方の意味でとっちゃうなんて……イイなぁ」


 ニヤニヤと嬉しそうなラズール青年。


 オレンジがかった金の髪。

 仮面をしていても目立つオッド・アイは右目がラピスラズリで左目がタイガーアイ。


 そして、私よりも頭2つ分ほど背が高くガッチリした体躯。

 ガッチリしすぎてメルクリウスのコスがあまり似合っておられませんよ?


 これでずっと私の肩に両腕当てる姿勢はなかなか辛かったのでは……

 と思われますが、おくびにも出さないところが、さすが軍人さん!

 なのでしょうか。


 そうなのです。

 しぶしぶご紹介下さったリーゼロッテ様情報によると、ラズール青年はなんと海軍少佐様!


 出自は押しも押されぬ王弟・アリメンティス公爵様のご長男で、王女殿下の従兄弟様であられるそうで。

 偉すぎて 『様』 オンパレードでございます……っ!


 そんなオンパレード少佐様が、つっとリジーちゃんの手をとって、のたまうには。


「面白そうな方だ。どうです?

 カウントダウンまでまだ時間もある。少しお庭でも散歩しませんか?」


「こぉらぁっ! そ・れ・がっ、ダメです、と申し上げているでしょう?」


 リジーちゃんは渡さなくてよ、とメガパイを私の頭にギュウギュウ押し付けて庇って下さる王女殿下。

 ラズール青年に対しては本当に遠慮がありませんねぇ!?


「大丈夫ですわお姉様! 外は雪ですし、今のはご冗談に違いありませんわ」


 王女殿下に言うフリをしつつ遠回しに断り入れるリジーちゃん。


 ところが。

「いいえ大丈夫ではありません!」と王女殿下。


 お顔が、真剣でいらっしゃいます!


「あれは一昨年のカウントダウン。やはり雪が降っていたわ……」


 リーゼロッテ様は、突如として遠い目で語り始めたのでした。


 ―――その年、3年ぶりにパーティーに現れたラズール青年は、物凄い手早さで王女殿下の侍女を庭の散歩に誘い出したそうです―――


「バカねぇこの寒いのに、と生温かく見送ったら……」


「見送ったら?」


 ―――いつまでも帰ってこないから心配になり、衛兵に捜索させて、しばらく。

 帰ってきた衛兵の報告によると―――


「2人の姿は何処にもなく、代わりに、あずまやに」


「……あずまやに?」


 ごくりと生唾を呑み込むリジーちゃん。


「何やらモゴモゴと動く、奇妙に膨れ上がった毛皮のコートがあったそうよ」


「きゃあっ!」


「その怪物の足元には、中身のない2人の服が力無く横たわっていたとか……」


「も、もうヤメテ!お姉様!」


 ―――オソロシイ冬の怪談でございました―――


「そ、それで2人は……凍死などなさらず、無事に戻ったのでしょうか」


「だから今ここでピンピンしてるではないの」


 あ、そうか。


「で、侍女さんの方は」


「変な噂が立つ前に、早々にお見合いして結婚したわ」


 ありがちな話ですね!

 しかしラズール青年、目の前でうなだれておられます。


「僕は1人1人に本気なのにっ。どうしてだか皆、遊びだと割り切ってしまうんだ。

 もっと執着されたい……」


「ならいったん身ぎれいになさって5年ほど女断ちしてごらんになれば?」


「無理だ5ヶ月で死ぬ」


「死ねバカ」


 ぎゃああああっ。

 リーゼロッテ様が! リーゼロッテ様が!

 有り得ない台詞をぉぉっ!


 ギャップ萌……ではなく妙に似合っておられるところがまたコワいのですっ……


 へ、ヘルムフリートさぁぁん!

 この方なんだかヤバいですよ!

 あなたの姫君を崩しまくってますよ?


 必死にテレパシーを送るリジーちゃんです!


 しばらくして、やっと通じたのでしょうか。


 ご令嬢方(垣根)を分けて、こちらにいらっしゃるヘルムフリート青年扮する太陽神(アポロ)様。


 笑顔で尋ねてくださいました。

「やぁ。楽しんでおられますか?」


「はい、おかげさまで」


 引き攣っておりますよ!

 末端貴族令嬢に鉄壁ノーブルスマイルを向けてる場合じゃないですよ?

 侯爵家令息様っ!


 と、息を詰めて王女殿下とラズール青年を目で示して差し上げます。


「これはこれは」 ようやっと、ラズール青年に向けられる鉄壁ノーブルスマイル。


「お久しぶりでございます、アリメンティス少佐様。今宵の花園はいかがでいらっしゃいますか」


「ああ久々に軍船から降りてきた目には眩いばかりだよ。

 しかしたった今、摘むことならぬと釘を刺されてしまった」 負けず劣らずのノーブルスマイルを披露するラズール青年です!


「常に気高い花に纏わり付くアブラムシのような貴公が羨ましい限りだ、クラウゼヴィッツ大尉殿」


「恐れ入ります。いったん船に乗れば鷹のように鋭いと評判の少佐様から、そのように羨ましがられるとは鼻が高うございます。

 しかしここから先はアブラムシにお任せ下さいませ」 恭しい敬礼で嫌味を叩きつけるヘルムフリート青年。


「花園は鑑賞するもの。摘まずとも普段通りに蝶の如く飛びまわっておいでになれば良いではございませんか」


 いくら無礼講でも 『あっち行けこのバカ』 とは言えぬ間柄……男同士の社交もウザいものなんですね。

(あらやだ 『ウザい』 とか言っちゃった。てへ)


「では、そうさせて貰うとしよう」


 ニコヤカに返事するラズール青年の手が、なぜかがっしとリジーちゃんの腕を取ります。


「しかし、その前にトイレ」


 な、なんですと!?

 意味が分からず思わずラズール青年のオッド・アイをガン見するリジーちゃんに、仮面越しの器用なウィンクが送られます。


「王宮に来たのは久しぶりでね、場所を忘れてしまったんだ。

 案内して貰えるかなお嬢様」


「ダイヤ?」


 その美貌に異常に似合っていると思われる、凍るような笑みを仮面の下に浮かべつつ王女殿下がおっしゃり、へリムフリート青年がぽん、とラズール青年の肩に手を置きます。


「私がご案内しましょう。お嬢様は紳士用の位置などご存知でおられないから」


「……あ、今思い出したよ。そうか、あそこだね、ハハハ……」


 さすがに侯爵家令息をトイレに案内させるのはマズい。

 そう判断したご様子のラズール青年は誤魔化し笑いをしつつ去って行かれたのでした。

 ほぅぅぅっ(安堵)


「ラズールには気を付けて」 その背を見送りながら王女殿下がおっしゃいます。


「物凄く寂しがりな方だから」


 うぅむ。王室の表現、奥が深いな。

 寂しがり → 人肌恋しい → 手の早いナンパ男、となるわけですね。うぅむ。


 感心しつつ 「分かりました」 と頷けば、ヘルムフリート青年から具体的な注意事項が。


「一、可能な限り、姿を見かけた時点でさり気なく逃げること。


  一、話し掛けられても聞いてはいけません。話が聞こえたとしても内容を理解してはいけません。


  一、何を言われても絶対に頷いてはいけません。


  一、ダンスに誘われたら目を合わせず1曲だけ踊ってそそくさと退散すべし。

(休みたい、腹が痛い、ケガをしたなどと言ってはいけません。つけ込まれそうな弱みは見せないようにしましょう。)

 

  一、たとえ目の前で倒れられても直接、助けてはいけません。

 本気で危なさそうな時は男に助けさせましょう。

 もし嘘の場合でも、踏んだり殴ったりしてはいけません。接触はとにかく危険だと心得ましょう」


 淡々と語られる取り扱い説明 (略してトリセツ)。


 ラズール青年、スズメバチ扱いなんですか!?

 そして何故、ここまで詳しいトリセツが?


「妹にも同じことを言い聞かせてあります。まぁ、我が家は多分大丈夫ですけれどね。身分の高い女性はお好きではないので」


 なるほど。リジーちゃんはギリギリライン、てところですね。


「シドさんも気を付けてあげてね!」 とリーゼロッテ様がシドに念押しし、シドは真剣な顔をして頷いたのでした。




 ……が。


 なぜ、こんなことになった。


 リジーちゃんは今、王宮は庭園のあずまやで、スズメバ……もといラズール青年と対峙中でございます。


 己のウカツさが身に染みて後悔されます。

 無事に生還できたら、このスリルをぜひ新連載 ″若き未亡人アナスタシアの優雅なるお遊戯″ のネタにしてぶちまけたいところっ……!

 でも、今はそんなことを考える余裕はありません!

 ………………。

 ………………あ、違うか。

 考えた方がいいんだった。


 確かトリセツ (byヘルムフリート青年) を要約すると 「良くも悪くも本気で相手にしてはならない」 ですものね!


 えーと、そしたらまず。


 ―――アナスタシア様は白絹が一面覆い尽くすような雪の庭園の片隅で、ガタイの良い青年将校に 「一緒にコートで暖まりませんか」 などと迫られ、そして……―――


「まるで心ここにあらず、ですね」


 ふっと笑みを漏らしてスズメバ……もとい、いやもうややこしいからスズメ様でいいや。スズメ様。


「はい、ありませんから!」


 しまったマトモに受け答えしてしまったぁ!


「どうしてですか? 僕の運命の女神(フォルトゥナ)様?」


 迫りくるオッド・アイが不安を誘います。

 不安であって、ドキがムネムネ、いや、ドムがキネキネ、いや……とにかく、そんなんじゃありませんから!


 それに 『僕の』 ってなんやねん。


 はい、イチ、ニ、サンで目を逸らそう! それ!


 よし、成功。


 またスズメ様がふっと苦笑を漏らします。


「緊張しておられるのかな。可愛いひとだ」


 か、かゆい! かゆすぎるっ!


「でもここまで来て下さったということは、期待しても良いんですよね?」


 うなずいても口をきいてもいけませんよリジーちゃん!……てことで。


「…………」

 ブンブンと、首を横に振っておきます。


「おかしいな。それなら、どうして僕たちこんなことになってるんでしょうね?」


 ……いや、それ。私が聞きたいわ。

読んでいただきありがとうございます(^^)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い。いつの間にか心がリジーちゃん寄りになっておりスズメ少佐が怖い (;'∀') [一言] 寂しがり→人肌恋しい→手の早いナンパ男 〆(・ω・`) 勉強になります。 陸なるみ様の割烹…
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