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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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51/201

51.覗いてみれば奥が深すぎる髪フェチの世界!どこまで変態になれるか挑戦です!?

 かくして年末もいよいよ押し迫った12月(フォルトゥヌス)は20日。

 新連載 ″若き未亡人アナスタシアの優雅なるお遊戯″ の執筆2回目にして早速スランプに陥ってしまった私ことエリザベート・クローディス、またはしがないお色気作家ルーナ・シー16歳。


 髪フェチをナメてましたゴメンナサイ、状態のところに降って湧いた取材協力の申し出に、コテン、と首を傾げ中でございます。


「シド、有難い申し出ではあるんだけれど」


「俺じゃあ萌えませんか?」


「そこは妄想で乗り切るとして」 きっぱり言い切れば、シドさんなんだか、がくぅっとうなだれておられます。

 いやだって問題は、そこじゃないでしょ。


「そもそもあなたが萌えるのかしら」


 だってそれこそ従者として日常的にいじりまくってますからね、髪。


 当然の指摘ですよね。

 なのに、シドさんったら、またがくぅっ、とうなだれていらっしゃいますよ?


「どうしてそこだけ冷静に」などと呟いておられます。

「そこはまぁ、何とかしてみますよ」


 ああ廚2精神とかで……ってそれやばい。絶対そうだそのつもりだ。


「イジワルしないでね?」


 念を押してみれば、ほらやっぱり黒い笑み返ってきたぁっ!


「あれ? そんな手ぬるいことしてアナスタシア様がどうなっても良いんですか?」


 ズルいシドったら人の弱みにつけ込んでズルすぎる。

 リジーちゃんもう、半分涙目に……いやいや待て。泣いちゃダメ。

 確かに、これもアナスタシア様のための試練、なのですっ!

 よし、負けない。


 そんなわけで。

 現在リジーちゃん、取材を兼ねてシドに髪をイジイジしてもらっています。

 臨場感を出すためにベッドの上です。

 ナターシャが突如扉を開けて 「きゃあっ」 と黄色い声で誤解しないよう部屋の鍵もかけてます。


 なのに。それなのに。


「……正直言っていつもと変わらないわね」


 カケラもエロい気分にはなれませんが?

 シドさん、何やってんの?

 異常に熱心に毛先を触ってくれてるのは、わかるけど……?


「あーモシモシ、シドさん。そちらはいかがですか?」


「はい、こちらシドです。現在、大変モエております」


 おおっな、なんと!

 リジーちゃんの毛先から、日常と違う何が得られたというのでしょうかっ!?


「それは素晴らしいですね! ちょっとレポしてみていただけますか」


「はい」 シドは1つ深呼吸して、大変な熱意で報告を始めました。


「現在、当方は12本めの枝毛を採取中です! このにっくき枝毛め! えい! こうしてくれる! えいえいえい! はい、これで20本目になりました!」


 はいはい。モエ違いでしたね。


「アルデローサ様、こうしてゆっくり見ると意外と枝毛多めですね。ナターシャに1度毛先を揃えてもらい、香油など塗って手入れを強化した方が良いと思われます」


「分かったわ、ありがとう」


「あっ、またあったっ」


 ……どうもシドさんも髪に萌えるのは無理なもよう。

 しかしこれでは取材になりません!


 もう1度、基本に立ち返ってみましょう。

 ルーナ王国のディープなフェチの基本、タルカプス・アムフォイトマン先生、お願いしますっ!


 その髪フェチ的な描写といえば確か……


『じゃきんじゃきんとわざとらしいまでに刃物の音を響かせながらスーラは彼女の長い髪を切っていく。

 その細く硬質な黒糸は絡ませても絡ませても指が滑り落ちてしまうので、一房また一房と少しずつゆっくり掬い上げては断てば、その度に微かな抵抗の震えが指先を遡りスーラの心臓にまで到達する。


 じゃきんと音がする毎に黒髪は(しな)りながら床に落ちる。

 彼女の体温を残しているかのように照ろんとした光沢を浮かべつつ身をくねらせた髪の束が床の上に増殖していく。


 じゃきんと音がする毎に洗髪剤と汗と体臭の入り混じった匂いが色濃く辺りを染める。

 黄昏の中の小部屋に閉じ込められたような紫色の匂いをスーラは口を閉じてそっと吸い込む。


 じゃきんと音がする毎に徐々に現れる彼女の白い(うなじ)に生えた細かく柔らかな産毛(うぶげ)に触れるようにしながら、スーラは次の髪の一束をガラス細工を扱うような繊細な手つきで掬うのだ。

 そうして髪が断たれていけばいく程に、鏡を見詰める彼女の表情はいよいよ陶然たるものになっていくのであった……』


 ふうー……あ、あかんわ。

 基本に立ち返ると、脳内でかなり省略したにも関わらずディープ過ぎてクラクラです。消化不良気味です。


 長い髪を愛でつつも切り散らかすことによってその音と感触を罪悪感込みで楽しみ。

 落ちた黒髪を視姦しまくり、かつ、その匂いに萌え萌えし。

 そして、切った後に現れるうなじをまたジットリと愛でるっ(ウブ毛とかわざわざ書くところがキモいのです)!

 挙げ句は彼女の変身ぶりとそれを(よろこ)んで受け容れる表情にウットリ……て一体、何重のフェチさね。


 とりあえずアナスタシア様の場合、お相手はジュエリーですから切ってきたりはしませんよね!

 と、すると……おお!

 消去法なら、 意外とシンプルにいけるかも。


「シド、大体わかってきたわ!」


「あれ、枝毛切られて萌え萌えしたんですか? かなり特殊な偏愛ですねアルデローサ様」


 うーん、そんな偏愛も感じてみるにやぶさかではありませんが。

 でもどの辺がポイントだかがヤッパリさっぱり分からないですねゴメンナサイ。


「枝毛はとりあえず、忘れてちょうだい」


「イヤです気になる」


「……じゃあ後で、好きなだけ切らせてあげるわ」


 仕方ないですね、もうっ。

 リジーちゃんの髪に指を絡めてはほどきを繰り返しつつ、嬉しそうに頷いちゃってますよ、シドさんったら。

 実は枝毛バスターだったんですかね!?


「そうではなくて、髪フェチの方程式よ!」


「方程式、ですか」


 まだ鵜の目鷹の目で枝毛を探しながらシドさん。


「ええ、基本形はおそらく 『手触り×匂い』 なはず!」


 そう、タルカプス・アムフォイトマン先生の著書では断髪に幻惑されてしまったけれど、断髪要素を取り除いてシンプルに考えるならこれですよ!


「特に匂いに注目してみて?」


 だって手触りの方は散々やってますからね。

 そうです!

 今の私たちに足りないのはきっとっ!

 匂い要素!なのだっ



 そんなわけで、レッツ再スタート。


 まずはシドに、解いた髪をひと掬いとり鼻を押し当ててスーハーしていただきます。


 ……うん、これは。

 髪に神経はないけどその代わり、うなじにかかる息がなんだかムズムズして身悶えしたくなってしまう感じがしますねぇ。

 なるほどなるほどなるほど。


「シドさん、そちらはいかがですか?」


「柔らかくてサラサラの髪に顔をうずめる感がなかなか良いと思います。時々ふっと洗髪剤の香りがするのも萌えポイントかと」


 ふむ。やはり予測通りのようですね!


 シドが続けて報告します。


「では、さらに頭頂部へ移動したいと思います」


「了解です!」


 ずりずりと擦り上げるようにシドの鼻が頭に当たります。

 口も当たっているけど、これは位置的に仕方ない……でも。


 ヤバいかもしんない。どうしようっ!

 いや、ここはアナスタシア様のためにもうしばらく耐えるのです!


 というのも。

 シドの口から漏れる息が思ったより熱くて。

 頭の皮膚に直接当たるとまるで ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ の新作フレーバーを食べた時のようなのですっ

 すなわち、心臓の奥が甘く締め付けられるような感覚が……ううダメっ


 チョコレートを食べる時は気軽に 『胸キュン』 と表現したけれど、これも 『胸キュン』 でいいのかしら、と迷うリジーちゃん。


 うーん?

 チョコレートと比べると、そこはかとなく痛みが混じっているような気がするんですが……?

 うん、とりあえず覚えといて後でゆっくり考えようっ!

 迷った時は保留です!


「シドさん、そちらはいかがですか?」


「……ヤバいです」


 おおぅ。まさかシドさんも!?

 これは取材的にオイシイ予感っ!


「詳しく報告して下さい、ヨロシク」


「はい。まず、先ほどの萌えポイント2点の威力がこちらでは3倍増しです」


「なるほど」


「その上に、洗髪剤の匂いの下からさらにアルデローサ様のほの甘い匂いが漂い出て気が狂いそうになります」


「え、マジですか」


「マジです」


 一瞬、思考停止したリジーちゃん。

 でも負けませんっ!


 これはアレですね 『困って下さいね♡』 的イジワル発言というヤツですね!


「それにアルデローサ様の喘ぎが」


「ちょっと待てそれ言い過ぎ」


 喘いでなんていませんからね!


 シドはしばらく考えて言い直しました。


「呼吸が次第に速くなって」


「ませんって。要訂正ですよ」


 シドさんまた考え込みます。


「……少しずつ荒くなる息遣いが」


「荒くなんてなってません!」


 どんだけそこに言及したいねん、ですよシドさん!?

 イジワル発言続けると涙目になっちゃいますからねっ!

 それで睨み付けて差し上げますからね! もうっ


 これもアナスタシア様のため。

 絶対、負けない。


 しかしシドは、超絶マジメなお顔でトドメのひと言を吐き出しました。


「感じやすくて可愛いな、と思いました」


 ううう(悶絶)……ふぇちの世界は、入り口から既に広大な泥沼のようでございます……


 けれどもしかし!

 溺れかけても絶対に、渡りきってやるぅ!


 変態悪女の名にかけて、立派にこの沼に挑むことを改めて誓うリジーちゃんなのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)


アムフォイトマン先生の文章部分は、どうしようかと迷ったものの、作者の文章修業の一環として書かせていただきました。「全然感じじゃない!」と思われる方いらっしゃることでしょうが、今の筆力ではこれが精一杯なのでご容赦をm(_ _)m

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