50.新連載そうそうやってくるスランプの波に変態の自信も崩れかけ?!ここは取材で乗り切りましょう!
こうして12月のコスプレ祭り、ついでの子供たちへのプレゼント配布は、大量の甘みと羞恥と若干の謎を残しつつも幕を閉じ、年末も更に近付いた今日この頃。
私ことエリザベート・クローディスの目の前にいるのは、父ユリアン・クローディス。
来年にはついに41歳だけどまだまだ現役イケメンパパ様でございます。
が! 今、なんと。
苦み走ってきた美貌を情けなく崩しまくっておられるのです……っ!
「どうしても、王女殿下のカウントダウンパーティーに行きたいのかい?」
「はい、そうですわ、お父様」
「ぐすん。いつもカウントダウンは家族でしているじゃないか。
今年もそれがいいと、お父様は思っているんだ」
フォルトゥナ祭の大詰めは、新年へ向けてのカウントダウン。
ルーナ王国の慣習では、親しい人……つまりは基本、家族と楽しみます。
(ただし前世と同じく、リア充はしばしば除外。けっ、なのです!)
「わたくしももちろん、お父様やお母様とカウントダウンを楽しみたいですわ!」
グスグスと鼻を鳴らし、白くキレイなハンカチで目頭を押さえる父に合わせて、カクッとハの字に眉毛を下げるリジーちゃん。
両親とカウントダウンしたいのも、半分は本当なんですけど、ねぇ?
だって、親は大事にしないとねっ♡
―――前世でもしょっちゅう実母が言ってましたよ。
「私はあなたより先に死ぬのよ。いつまでもいると思わないで」とかね。
まぁ、先に死んじゃったのは娘の方、ってオチ付きなワケですけどね。くすくす。―――
それはさておき。
やはり残りの半分は。
「でも、王女殿下の招待を無下に断るわけにも参りませんし」
『運命の女神の使者』 でカード作りやプレゼント配布に参加した令嬢方を招待してのパーティーは、毎年恒例、だそう。
一般的な社交ではありませんが、王族が全員参加するため、その辺り狙う令嬢方からの人気は高いらしいのですっ!
なにしろ、王族となると末端でもそこそこ以上の生活が保障されますからねっ
『贅沢はいわない、けど貧乏はイヤ、かつイケメン好き』 という方にオススメですよ!?
ルーナ王国の王族のイケメン比率の高さといったらっ!
顔だけで王様になったんじゃ……?と、疑いたくなるレベルなのですものね。
で、リジーちゃんも悪女らしく王族狙いかって?
いやいやいや。そうじゃなくて。
王女殿下から 「リジーちゃんもきてね?」 と瞳キラキラ攻撃で、お願いされているのですよっ。
意外なところからシドの気持ちが分かってしまった……瞳キラキラで見詰められるってやばいんですね。
うん。
それに、リジーちゃんもやっぱり、10代後半の健全な若者ですから!
そろそろ、両親のことはさておいといてお友達と楽しみたいお・年・頃♡
青少年として当然ですよねっ!
もちろん、罪悪感なんて、一切感じませんとも。
悪女らしく両親の心を踏み付けて差し上げましょうっ!
「カウントダウンが終わったら、すぐに帰ってきますわ、お父様。
そしたらもう1度、わたくしのためにカウントダウンして下さったらよろしいのよ」
「……! リジーは相変わらず可愛いなぁ! もちろんそうするよ!」
グスグスと半泣き笑いの父、相変わらず甘くていらっしゃいます。
ここはきゅうっと抱きつきほっぺにチューでもして更に蕩かすべしっ
「お父様、大好き!」
「お父様もリジーが大好きだよ」
デレデレとだらしなく相好を崩しておられますが、見慣れたせいか最近はそんなお顔もイケメンに見えるのが不思議です。
さて、そんな可愛い娘のフリをしつつ。
お父様ごめんなさいぃ、なリジーちゃん。
自室に隠れて執筆しているのはアブない大衆向けお色気小説 ″若き未亡人アナスタシアの優雅なるお遊戯″ 第2回目原稿でございます。
この回からはいよいよ、ジュエリーが擬人化。
まずは200年前のティアラ様ですよっ!?
―――このティアラ、実は公爵家に代々伝わる逸品。
繊細な細工を施した金に、大粒の真珠とダイヤとサファイアが散りばめられております……うっとり。
ちなみに、アナスタシア様ご婚礼の時に、花嫁のお髪を彩ったのもこのティアラでございます。
そんな豪華なティアラにキスをしてその緑がかった艶やかな黒髪に挿し、鏡の前で視姦しまくっているうちに……
ティアラからはなんと、超絶美少年精霊がっ!
彼は、ロイヤルブルーの瞳に虹色の光彩を放つキラキラと眩しい髪、真珠のような肌を持つ正統派美少年!―――
きっとリーゼロッテ様もハァハァと喜んで下さるはず、なのです。
ふふふふっ (ほくそ笑み)
ですが。1つ問題があるのです。
「はぁあああ……書けないわ……」
この溜め息を机に突っ伏しつつ漏らすこと、この1時間のうち、実に5回目。
フェチに関してはタルカプス・アムフォイトマン先生の小説で学習し、その心が実は視姦と仲良しなことも発見してるので全然心配していなかったリジーちゃんなのですが。
その予想、いざとなると全く外れ……ておりまして。
(頭髪をハァハァ言うレベルで愛でる気持ちも、愛でられる気持ちも分かりませんっ)
変態を名乗るにはまだまだだった、と己の至らなさぶりを情けなく思うしかありませんね……。
でも負けませんことよ!
……こういう時は。
取 材 で す !
「シド?」
「はいお嬢様」
全く存在感がない時でも、呼ぶとささっと現れてくれる優秀な従者さんぶり♡
「ちょっとあなたここにお座り」
ポンポン、とベッドの縁を示します。
「はぁ」 怪訝な顔をしながらも従ってくれるシドさん。
やり過ぎると後で楽しそうにイジメられるので要注意、ですが今はそんなこと言ってられません。
シドの後ろに回り、とりあえず頭をナデナデしてみるリジーちゃん。
うん、割と硬質な髪なんですね。
サラッとした手触りがなかなか心地良いです。
ふーむ……この心地良い感じをもっと高め、スリスリしたりチューしたりしてみる感じで書こうかな。
まだ良く分からないけどねっ!
では、まず、とりあえずは。
頬ずりですね!
シドは髪が短いので頭に直接、になっちゃいます。
アナスタシア様になら、まずはそのサラサラストレートな毛先。
それから順番に頭頂部に向かって余すところなくスリスリ、でしょうか。
「どう、シド? なんか感じる?」
シドがギギイッとぎこちなく首を回して私の目を上目遣いで睨んできました。
オヤこんなところでニラメッコ?
リジーちゃん強いですよ!
じゃなくて。
「何の真似なんですか」
風邪気味なのか、ちょっとかすれ声なシドさんです。
後でカリン湯でも作ってあげましょう。
「アナスタシア様のための取材♡」
今度は髪の毛にチューです!
といっても、毛が短いと頭に直接、になっちゃうところが困りどころ。
神経が通っていないはずの毛先にキスすることの、何がどうイイのかを知りたいのですが……まぁいっか。
何も試さないよりはきっとマシ! なはずなのです。
「どうシド? 何か感じる?」
ところがシドさん。
「はぁぁぁ」 と、盛大な溜め息です。
しょぼん。
リジーちゃん、頑張ったのになぁ……
ダメ、かぁ……
いえ、負けませんとも!
「だめっ! もっとエロい気分の方で盛り上がってくれないと、頭髪フェチを理解できないわ!」
「オニですか、アルデローサ様」
「だって悪女ですからね……じゃなくて!」
どうしてそこでオニが出てくるのかサッパリ分かりません。
「どうしてエロい気分になってくれないの? やっぱりヘタ過ぎるのかしら」
側に寄って顔を覗き込みます。
と。
ふいっ。
なんでだか、目をそらされてしまいました!
……あれ。この冷たい感じ。
これはアレだ。
テクもないのにフェティシズムなんかに手を出すなよバカ、ってことだ。
あ。なんか落ち込んできた。どうしよう。
「……いやあのヘタとかじゃなくてですね」 シドが絞り出すような声で言います。
「小さい時から兄妹同然に育ってるのに、ちょこっとつつかれたからって、エロい気分なんかなりませんから」
「ああなるほど、それもそうね!」
なぁんだ、そういうことだったのですね!
それならば、簡単です。
「じゃあナターシャにお願いしましょう!
洗髪から整髪までのスペシャルコースをエロい気分で味わってきてちょうだい?
んでもって後でレポートよろしく!」
何しろナターシャは御年37歳にしてまだまだとっても可愛らしい人。
もと乳母だけあってパイもユサユサですからね!
スペシャルコースなら、きっと萌えまくること間違いなし、なのですよ♡
「でも、それなら、『される方』 の気持ちは分かっても 『する方』 が分からないのでは?」
シドさん、冷静なツッコミです。
確かにその通り。
ナターシャに 『する方』 レポは頼めなませんね。
もしそんなことしたら、お色気小説書いてることが母に筒抜けモロバレ間違いなし、ですからねぇ……。
「そうね、どうしようかしら」
ふむ、と考え込むリジーちゃん。
すると、シドは珍しく、こんな提案をしてきたのでした。
「差し支えなければ、俺が 『する方』 で実地体験してみますか?」
読んでいただきありがとうございます(^^)




