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45. 新たなヒロインに有難くも大興奮の担当さん!でも萌えとホメだけではなかったもう1つのお顔もチラ見えです?!

 こうして季節は12月(フォルトゥヌス)を迎え、飾り付けられた街に浮かれ気味の私ことエリザベート16歳。


 転生前はクリスマスなんて呪いの季節……だったのですが、今では普通に楽しいやん♪ と新たな発見をしたりしています♡


 街は 『幸運の女神(フォルトゥナ)の使者』 のオーナメントや彼女の象徴である虹、雪の結晶のオーナメントなどがてんこ盛り。

 ちなみに雪もルーナ王国では幸福の象徴なのです。


 それぞれに色ガラスや金銀の泊などでキラキラ感も半端なく、やはり前世のクリスマスを思い出しますね!


 前世では、クリスマスの時期は街が明るく輝けば輝くほど、なんだか表面だけ無難に取り繕った自分と比較できてイヤになったものでした……が。


 今世になってみれば、己が黒い内面を気にしすぎだっただけ。

 おバカでしたね……ふっ!


 ちなみに今世では、生まれる前から開き直っております。

 だってリジーちゃんがどんなに悪女だとて、運命の女神たち(パルカエ)の為す悪に比べれば大したことはありませんからね……っ!


 それはさておき。

 そんな華やかな景色の中、雪が浅く積もった道の上を、例によって活版印刷所・バルシュミーデ兄弟社に向かうリジーちゃんとシドさん。


 目的その1は本日発売の豪華版 ″運命の女神たち(パルカエ)の童話集″ (前払いで予約済み) を受け取りに行くため。

 で! 目的その2は!

 じゃじゃーん!

 来年からの新連載初回の原稿をジグムントさんに見て貰うため、なのです!


 来年からの新連載 ″若き未亡人アナスタシアの優雅なるお遊戯″ (改題しました) は自信あり。

 何しろ王女殿下のジュエリーコレクションを視姦……もとい取材させていただきましたからねっ♪

 おかげで、いかにも精霊が現れそうなジュエリーをリアルに描けちゃいましたよ、ふふ (満足笑)



 そう。前回お忍びご訪問の後に、温度湿度管理ガンバッテマス的な薄暗い地下金庫でリーゼロッテ様が見せて下さったのは、なんと!

 アンティークジュエリーの数々だったのです (興奮)


 古くは200年前の幾何学的デザインや、130年前の星座を模したもの。

 この頃は図形や天体を魔術と支配者の力に結びつける考え方がメジャーな時代ですね。


 ちなみに、王宮の宝物庫にもこの時代の天球儀が残っているのだとか。

 ダイヤで太陽と月を、色とりどりの宝玉で星を現したク○贅沢なものだそうです。


 80年前頃からデザインは魔術的な意味を失い、単純に身を彩るものになっていきます。

 この頃は植物を象った有機的なデザイン。

 優しい曲線は現代人の目から見ても素敵です!


 そして、2代前のルーナ国王 ″煌月王″ レグルス3世時代にはハートや文字などの馴染みあるデザインがお目見えし、細い金属をレースのように編んだ複雑かつ繊細な細工が目を惹きます。


 どの時代のものも金に飽かせて透明度の高い大粒ダイヤやサファイア、エメラルドにルビーがてんこ盛り。


 もちろんその金とは人民から搾取したもの、今の時代でこんな豪華なものを新たに作らせるお貴族様がいたら、それこそ真っ先にハルモニア広場で首になっちゃうことでしょう。


「普段のお姉様のデザインからすると、随分ゴテゴテでギラギラですのね」


 コテンと首を傾げて問えば 「デザインする時は身に着けることを考えるからね」 とのお返事。なるほどね。


 しかしゴテゴテ・ギラギラなデザインでも、生来の美しさに時を経た風格と落ち着きが備わったジュエリーたちは、もはや一種の芸術です。

 ウンこれなら付喪神の1人や2人や3人つきそうですね……っ!


 それはさておき。


 そっかぁ、カレィニン公爵夫人 (アナスタシア様) はこうしたジュエリーでも、サクッと身に着けて違和感を感じさせないお方なのね、とリジーちゃんスルッと納得してしまいましたのです。

 精霊が出そうなジュエリー、それが似合う高貴で美しい未亡人……きゃあ!

 イメージが深まりますねぇ! ハァハァ (大興奮)


 イメージ深まり過ぎて妄想だけで一筆も書かずに10日を過ごし、書き始めたら書き始めたで次々湧き上がるイメージの洪水に溺れかけて収集がつかなくなり……

 執筆にはかえって時間がかかってしまいましたが、それも今後きっと役に立つことでしょう。


 何はともあれ、こんなにイキイキと新しいヒロインが生まれてきてくれたのも王女殿下のお陰ですっ!

 さぁジグムントさん、存分に萌萌してくださいね!?


 と、バルシュミーデ社は恒例インクの香溢れる印刷室でサクッと読んでいただいている途中……なのですが、なんなのでしょう?


 上目遣いにちらっと編集長の様子を観察しつつ、高鳴る胸をそっと押さえます。

 ちなみにこのドキドキ、恋ではなく恐怖の方です。


 だって!

 ジグムントさんったら、時折原稿持つ手に力が入っては 「おふっ」 「ふぉぉっ」に近いような、形容し難い呻き声を漏らしていらっしゃるのですもの……!


 な、何がそんなにイケなかったんでしょうか?


 確かにシドには 「これは隠れず大っぴらに、イヤらしい気がするのですが」 と言われましたが。

 でも、ユーベル先生の穴棒アーンと比べたら、全然ですよっ!

 ねっ、ジグムントさん!?


「すみません、ちょっとトイレに行ってきます!」


 助けを求めて見詰めた私を148%無視して駆け出すムキマッチョ、冬なのに眼鏡のテンプルが少し汗ばんで滑りがち。


「大人なのにギリギリまでガマンするってどうなの」


 見送りつつ茫然と呟けば、シドがぼそぼそと返してくれます。


「大人だからギリギリまでガマンしたんじゃないですか」


「え? トイレは時間を決めて行っておけば大丈夫だなんて2歳児でも知ってるわよ?」


「急に行きたくなることもたまにはあるじゃないですか」


「なるほど」


 お腹を壊しているようにも見えませんでしたから、きっとお昼ご飯にうっかりジュースだかエールだかを2杯3杯とお代わりしたんでしょう。分かります!


 そんな会話をしているうちにジグムントさんが戻ってきました。

 無事に間に合ったようですね!

 良かった。

 落ち着いたお顔に浮かんでいるのは、ホメリストの笑みです。


「いやぁアナスタシア様はまさに女神(ウェヌス)様ですね!

 いやしかし異性愛はひたすら亡き夫に向けられているワケでその清潔感から言えばむしろディアナ様やセレナ様ですかね。

 イヤもう、そんな方をいきなりひんむいてしまうとは、いやはや、シーさんあなたも、いやはやですねぇ!」


「やり過ぎでしたかしら?」


 心配になって尋ねれば、ジグムントさん首を思いっ切りブンブンと横に振って下さいます。


「いやはや、大丈夫です! 単に脱いでジュエリーを愛でてるだけのはずですからね! 全然OKですよ!

 ただ……」


 言葉を切って顔を少々赤らめつつも、信念を持ってほめて下さるようですね。


「もう、こう、さすが隠れイヤらしさのスペシャリストというか!

 真性のド変態というか!

 つい妄想してしまう書き方はお手のものですね。

 次にその真珠でどこをスリスリする気なんだろう、とか、そのルビーをなめた後は一体どこに仕舞うんだろう、とか……妄想すると直接的な交渉より断然イヤらしいですよ」


「まぁ、それほどでもありますわ、おっほほほほほ」


 まさかの好評価に気を良くして身体をクネクネさせます。花も羞じらう16歳にしてユーベル先生を打ち負かせそうな気配になってきましたよ!?

 ふっザマヲミナサイマセ!

 そのうち即物的な穴棒アーンなど ″月刊ムーサ″ から駆逐して差し上げますとも!


 少々の嫉妬が混じった怒りの内心シャウトを済ませ、私はニッコリと次の関心事に移ります。


「それはそうと、いかがですの? ″運命の女神たち(パルカエ)の童話集″ の調子は?」


「ええおかげさまで!」 ニヘニヘと口許が緩むジグムントさんです。


「王宮の 『フォルトゥナからの贈り物』 に選ばれて第一刷が予約だけで売り切れそうな勢いなので、予定より1千冊ほど増やしましたよ」


「1千冊! ずいぶんと強気ですのね」


 前世の基準から 「少なっw」 などというのは間違い。

 何しろ識字人口は推定48万人、本屋といえば貸本屋しかないルーナ王国王都ですから。

 ……千冊売るのも厳しいかも……

 もし、もしもですよ。半分の5百冊でも売れ残ってしまえば……バルシュミーデ兄弟社の手狭な倉庫は在庫で溢れてしまうのですっ!

 けっこうな賭け。分かっていただけますでしょうか。


「ええでもおかげさまで1冊あたりの原価を安く抑えられたので、これだけの内容と外装の童話集がリーズナブルに入手できる! という点でもウケているようですよ」


 確かにこれまでの写本と比べると値段は1/10程度。

 前宣伝と値段の相乗効果で評判はまずまず、朝からぼちぼちと買い求める客がやってきているようです。

 ひと安心、ですかしら。


「本当に良かったですわ!」


 祝福すれば、やはりニヘニヘと裏事情を暴露するジグムントさん。


「ええ ″月刊ムーサ″ の作家たちが書いていることは敢えて伏せましたから、お貴族様や学者先生からもけっこうな予約が入りましたしね」


 そういえば、童話の方は別のペンネームを求められていたのでした。

 私は気軽に ″リジー″ にし、ユーベル先生は ″森のクマさん″ だそうです。

 が……そんな策略があったとは。


「おさすがですわね」


 なんだか複雑な気分で取りあえずホメると、ジグムントさんは 「いやぁそれほどでも」 と無邪気にテレっとした表情を浮かべたのでした。

読んでいただきありがとうございます(^^)

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― 新着の感想 ―
[一言] >即物的な穴棒アーンなど ″月刊ムーサ″から駆逐 腹筋がチヌ…ww (*´▽`*)b >1000冊 貸本時代だと確かに神技ですよね (∩´∀`)∩~♪ 蔵が建つかも??
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