40.年の瀬も近付き別れと新たな出会いの予感!そして悪女にも変化が訪れる?!
こうして、季節は冷たい11月に入りました。
天からちらほらと舞い降りる雪にも負けず、処女作 "令嬢ポリーの華麗なる遍歴" 最終話を夢落ちで無事に脱稿させた、私ことエリザベート、またの名をルーナ・シー。
夢落ちといえば 「これまで読んだ分を返せ!」 という虚しさしか感じなかったのは少し前までの話。
転生後16年半になる今の今、新たな事実が判明しているのです!
すなわち。
ジグムントさん始めポリーちゃんファン(有難や)の多くは 「なんだぁ夢で良かった!」 とホッとして下さるだろう、という。
原稿を受け取ったジグムントさんはこうおっしゃいました。
「絶対2度読みする読者多数だと思いますよ!」
1度目は 「何だと?嫁に行くなど許さん!」 という苛立ち・腹立ちでロクに頭に入らず、最後で 「なーんだ」 となった後に 「うん、もう1度ゆっくりポリーちゃんのアレコレを視姦しよう!」 となるのだそうです。
そうなのかな。違うと思うけど。
だって最終話のタイトルは "ポリー嬢、夢の未来へ" にしましたからね!
読者の皆さんが前回のジグムントさん状態にならないよう、最初から気を遣っているのですよ、どうだっ。
あーでも、しかし。
確かにジグムントさん、私の目の前で3度目のループをしてらっしゃいます。
3度目なのにお顔がますますニヤついておられます。
「いいですねぇ」 出ましたね、ホメリストさん。
「夢の中の出来事というメリットをきっちり利用し、できる限りお相手の描写をぼやかしてる気遣いが神ですね」
そうでしょうとも!
わざとエデルフリート青年は 『彼』 とのみ記し、イケメン・美青年・ノーブルともに一切書いてませんからね。
感じ入っていただいて幸いです!
ちなみにもしできるなら、プロポーズ欄も空白にして読者様に 「俺ならこう言う」 的な妄想をしていただきたかったところ。
だってこの数行を書くのに3日かかりましたからね!
猛烈なカユみに耐え、砂糖の血反吐が出る勢いでしたからね!
それでも書きたくなっちゃうってMなのかな、リジーちゃんったらっ。
「お相手に自分を当てはめて妄想できるのがたまりません! ビバ夢落ち……と多くの読者が思うことでしょう」
「これもシドの発案のおかげですわ」
「全くです」
私のヨイショ、もとい心からの感謝に頷くジグムントさん。
「どうですか、シドさんも ″月刊ムーサ″ に来年から書いてみられますか?」
「とんでもないです」
あらシドったら、スカウトをあっさりバッサリ断っちゃいました。
もったいないっ。
それはさておき。
「お約束通り、新連載の構想も大体できたのですけれど」 遠慮しいしい、ジグムントさんに尋ねるリジーちゃん。
「そちらはまた、後日になさいます?」
何しろ今のジグムントさんは ″月刊ムーサ″ 第11号の発行でテンテコマイのはずですからね!
しかしこの超絶お忙しい副社長兼編集さんは、慌てたように両手をぶんぶんと横に振りました。
「とんでもないっ! 今見せて下さいっ」
お仕事熱心ぶりには頭が下がります。
「ではお願いします」
バッグから構想メモを取り出し、ジグムントさんに手渡すリジーちゃん。
新連載は仮題 "カレィニン公爵夫人の優雅なるお遊戯" でございます!
ヒロインはアナスタシア・カレィニン公爵夫人。
若くして未亡人になり、美貌で金持ち悠々自適、というク○羨ましいお方なのです。
そんな彼女は、もちろん社交界でもモテモテ。でも残念!
アナスタシア様の愛は、ひたすら亡き夫とジュエリーに注がれているのですよっ
割合にして3対7ってところでしょうか。
そしてなんと!
その愛の余りにジュエリーに宿る精霊が擬人化!
美青年やら美少年やら美中年やら、美少女もしくはフェロモン美女 (ありか? でも差別はしない!) やら美老人 (ありだ!)が、夜ごと夫人を慰めにくるというストーリーなのです。
ちなみに、ジュエリー擬人化ならではの見目麗しい美人さんたちを、タップリ視姦できる、というオマケ付き。
実は私ことシーさんは、ポリー嬢のお話を書いてるうちに視姦する方にも半覚醒しちゃったのですよっ
ふふふ (変態的含み笑)
メモを一読してジグムントさん、おっしゃいました。
「なるほど! 正体がジュエリーなら毎回本番まで行かなくても不自然ではありませんね」
「その通りですわ! やはりスリスリしたりナメナメしたりが続くと、生身ではどうしても 『とっとと押し倒せよグズ!』 などと芸術的でないクレームが入ることと思われますが、その点ジュエリーなら!」
ふっふっふっふっ、と顔を見合わせほくそ笑む私とジグムントさん。
ついでに、ヒソヒソ声でダメ押しです!
「しかもですね、カレィニン公爵夫人は正真正銘の金持ちマダムですから、好きな時にオイルエステもし放題、なのです」
「……!」
あらら。ヨダレ垂れちゃいましたよ、ジグムントさん?
オイルエステの何がそんなにソソるんでしょうね? 知りません!
けれど、無事連載が続いたら1度くらいはそのシーンをねちっこく書いて差し上げましょう(ニヤリ)
「では、来年からはこれで行ってみましょうか。第1話は念のため、いつも通りに前倒しでもってきてもらえると助かります」
ハンカチでヨダレを拭いつつ真面目なお顔になるジグムントさんに 「もちろんですわ!」 と、力強くお約束。
実は第1話も大体のプロットはできている仕事の早いリジーちゃん、なのですよっ
「よろしくお願いしますね! それはそうと」
ジグムントさんが話題を変えました。
「来年の1月15日に ″月刊ムーサ″ 1周年と童話集発行を記念して内輪で小さいパーティーをしようかと思うんですが、来られますか?」
おおっ!
童話集がついに、出るんですね!
″月刊ムーサ″ 著者の皆様がどんなお話を書いたのか、気になるところです。私も1冊予約せねば。
しかし、パーティーは困ったな。
もちろん行きたい!
前世含め今世このトシになるまで、取材以外の目的でパーティー行きたい、なんて思ったこと無かったけれど。
生まれて初めて、行きたいのですっ!
だって ″月刊ムーサ″ は、立ち上げ初期から関わらせてもったのですもの。
そのおかげで、色々な世界を教わったのです。
……つまりは、子供でもあり先生でもあるお方の誕生日パーティーのようなもの!
もちろん参加したいのです……っ!
それに、陰日向なく支えてくれたジグムントさんにも改めて感謝の気持ちを伝えたい!
とは思いますが、けれども、しかし。
「とても行きたいのですが……両親にバレると困るのです」
声が自然と小さくなっちゃいます。
大衆向けお色気小説の著者であることくらい、悪女なら堂々と全世界にバラすべき……ですよね。
でも、現実にはあの優しい人たちを悩ませるのがイヤなのです。
きっとまた目の下にクマを作りつつ、耐えようとしてくれるんだろうと思うと……ううっ、涙でちゃいますよ……もうっ……!
「ああ、そうですね」
うなずいてくれる、ジグムントさん。
こういう細かい事情を汲んでもらえるのって、すごく有難いですよね。
でも……やはり、このまま何もしないのも、ちょっと寂しいような。
そう思った次の瞬間、リジーちゃんの口からは出たのは。
「その代わり、準備は色々とお手伝いしますわ! せっかくのパーティーですもの、何か協力したいの」
はうわっ!
転生後はもう2度と口にすまい、と思っていたナンチャッテ善人ゼリフなんですけど、これ!
……でもどうしよう。
今は、こう言わない方が、心に反してしまうのです……っ!
どうしよう。どうしよう。
心のままに生きているはずなのに、悪女になれてないぃぃぃ!
「ありがとうございます! そのお気持ちだけでも嬉しいですよ」
私の動揺に気付かぬ様子で、ジグムントさんはニコニコされてます。
そして更に動揺するリジーちゃん。
どどど、ど、どうしよう!
嬉しいって言ってもらえるのが嬉しいぃぃぃ!
もしや恋っ!?
……いや、断じて違うと、本能が告げていますっ!
やはり恋するなら、サルウス・プロスペル・エッケバッハ様イチ押し、ですものね。
……ほら。お名前を思うだけでも萌え感が違いますもの……っ!
「いえ、ちゃんと労力も提供しますわ!」
ぎゃぁぁっ……!
萌えついでに口が滑ってしまいました!
のぉぉぉぉぉっ!
「いや有難いですね、ほんと!」
ジグムントさんはニコニコしながらしばらく考え 「では、当日の飾り付けを手伝っていただけますか」 と、言ってくださったのでした。
読んでいただきありがとうございます(^^)
次の更新は来週月曜日になります。良い週末を過ごされますよう。




