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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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32/201

32.お友達兼契約下僕の美青年もほだされる?!ショーケースに並ぶ美人さんたちの甘い誘惑!

 懐かしい指切りの約束で小さかった頃の気分に戻り、なんとなく手を繋いだまま目抜き通りに向かう私ことエリザベート。

 そして、お友達兼契約下僕(対価は困り顔)のシド。


 5月(マイユス)から花が開き出すリラの並木はまだまだ甘く華やかで、家々の軒先や庭先は色とりどりの夏薔薇や薫り高い百合で彩られています。

 ルーナ王国は冬が長く寒いけれど、その分、春はより色濃く喜びに満ち、続いて訪れる夏は爽やかで美しいのですね。


 まぁ活版印刷も登場して庶民の意見は活発になりますます台頭期、文化は爛熟期、政治は思ったよりはマシらしいですが一応腐敗期なルーナ王国のこと。

 たまには不穏な気配が漂うこともあります。


 でも!

 革命までのカウントダウンが振り出しに戻る小麦豊作の年くらいは、それを忘れて五感のもたらす快楽に耽溺してもOKですよねっ!

 くすくす(忍び笑)


 さて、そんなわけで。

 本日の外出は、バルシュミーデ兄弟社のジグムントさんに童話の原稿を見て貰い、ついでにショコラティエ ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″で夏の新作フレーバーを嗅ぎまくり舐め尽くしそのネットリと甘い喉越し、脳も痺れる快感を存分に味わう予定でございます。


 超絶気になるのはもちろんチョコレートの方ですが……まずはお仕事!

 目抜き通り端のバルシュミーデ兄弟社へ向かいましょうっ。


 ジグムントさんは、インクの匂いが染み着いた作業場(壁際の棚にずらっと置かれた金属活字が壮観です!)でせっせと名刺作りのお仕事中でした。


 お忙しいようなので後にします、といったん遠慮したものの、ジグムントさんからは 「今でかまいませんよ」 との有難いお達し。

 無骨な印刷機の前で、さらっと童話の原稿を読んで貰います。


 その様子をそっと窺えば。

 最初は「早いですね!」と喜んでいたジグムントさん、次第に沈み込んだ顔になってきました。

 気のせいか筋肉も5%ほど萎んだように見えますね!

 寒々しい話が心にダメージを与えたもようです!

 ふっ……これが悪女的ペンの力でしてよ。


 あらあら、ジグムントさんたら。

 言いにくそうにしてますねぇ。なんだか、可愛いですねぇ。

 ちょろっと、萌えちゃいますねぇっ♡


 さて、で。

 いつもホメ言葉しか出てこないジグムントさんの口から、どんなケナシ言葉が出てくるんでしょうかっ!?

 ワクワク。


「うん、良いですねぇ!

 お互いにあんなに愛し合ったのに、こじれてでも離れられない!

 ハタ目から見たら『もう別れろよ』と思うところで当事者であるが故に冷静な判断ができず、どんどん歪んでいく愛情! そそりますねぇ」


 あら。やっぱりホメられた。

 うーん筋金入りのホメリストなんですね、ジグムントさんったら!


「だがやはり! 僕は2人には正しい道を選び、幸せになってもらいたいと思います!

 寂しがり屋さんのマリエちゃんにも、優柔不断すぎるツバメ君にも!」


「そのお気持ちお察ししますわ」


 確かに私もそう思いますよ!

 でも結局書き換えとなると、イヤだなぁ。

 現実には過ちって困るけれど、妄想(おはなし)の中では、弱くてしばしば間違いドツボに足を踏み入れてしまう人間の方が、正しくて強い者の千倍萌えますからねぇ……っ♡

 悪女的には沼にハマってもがけばもがくほど沈みこんで行くお人がツボなのですよ (にっこり)


「そこで」 ジグムントさんはイタズラっ子みたいな顔をして、聞かれて困る人もいないのにヒソヒソ声を出しました。


「続きを書きませんか? 運命の女神たち(パルカエ)の気紛れで、マリエちゃんとツバメ君は途中からやり直せるのですよ」


「なるほど」


 そう来ましたか!

 原案を殺さずにハッピーエンドに導こうという企みですね。

『子ども向け』をタテに最悪ボツになるかと思ってたのに……なんてお優しいんでしょうか、ジグムントさんったら!


「その案乗りましょう! おさすがですわ」


 ホメると、ジグムントさんはテレっとした顔をします。


「いえいえ。きっとシーさんなら賛成して下さると思ってましたよ」


『先生』を嫌がったら『ペンネームさん』で呼んでくれるようになったのです。ありがたや。


「ではヨロシク」 「こちらこそ」 といった感じの挨拶を交わして、私とシドはバルシュミーデ兄弟社を後にしました。


 さあぁぁっ!

 お次はいよいよ、ちょ・こ・れ・え・と、ですよ☆

 シドさんよろしくっ!

 リジーちゃんを困らせた分は、きちんと貢いで下さいませね?

 逃げようだなんて許さなくてよ?

 おーっほっほっほ! (高笑)


 そんなわけで。

 シドの腕をがっちりホールドしつつ、ショコラティエ ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ へ向かいます。


 ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ は目抜き通り中ほどにある小さめのお店。

 歩道に張り出された空色のテントが可愛らしいのです。

 テントの下には、歩行者の邪魔にならないよう控え目にハイテーブルが2つ。

 ここでチョコレートの他にコーヒー(これまたなかなのお値段!)も楽しめるのですね。


 店内のショーケースにはずらりとチョコレートが並んでいます。

 そのさま、まさにジュエリーのごとし♡

 それぞれに意匠を凝らした形、どれも艶やかな照りを帯びてリジーちゃんの目と心を刺激しておりますよ!


 金箔やハーブ、銀砂糖など思い思いの彩りを添えられたその姿は、裸体に煌びやかなアクセサリーのみを付けてパリス青年を誘惑したという三美神もかくやと言わんばかりのフェロモンを振りまいておりますっ


 なにしろ三美神喰うと手痛いしっぺ返しが待ち受けてそうですが、チョコレートはまさに 「わたしをた・べ・て♡」 とおっしゃっているわけですからね!

 ハァハァハァ……(あっ、思わず息がっ!)


 ショーケースの中の美人さんたちをじっくり視姦していると、「決まりましたか?」 とシドが聞いてきます。

 早く客を捌きたい店員さんならともかく、シドさんに、聞かれたくないですねぇっ。


 お昼時とあってほかにお客さんもいないのだから、もっと時間をかけてガン見したかったのになぁ……若干ガッカリしつつ注文します。


「夏の新作フレーバーを1つずつ」


 夏の新作はレモンミントとレモンカモミールです。

 両方ともにコーティングは涼やかな印象のホワイトチョコレートですが、ミントはそれらしいリーフの形、カモミールの方はお花の形。

 上にレモンイエローとライトグリーンのトッピングシュガーを載せているのが愛らしいですね!


「それだけですか?」 と怪訝そうなシド。


「わざわざお昼抜いているのに?」


「チョコレートは罪深いのよ」


 あればあるだけどんどん食べてしまいますからね!

 本当に要る物少しに限定するのがいいのです。


 実はこないだの姫抱っこ強制回収の後、シドが妙にお疲れだったのが気になるリジーちゃん。

 無理ない程度のダイエットを心掛けているのです!


「シドはお腹空くでしょうから、後でサンドイッチを買ってあげるわ」


 リジーちゃんにはお小遣いはないけれど、もらった原稿料はあるのですよ。えっへん! (威張りっ)

 なぜそれでチョコ買わないかって?

 それはアナタ、必須でないものは買ってもらった方が嬉しいでしょう?


 それにサンドイッチならお釣りが出るし!


 シドは嬉しそうに黒い目をわずかに細めて、やおら店員さんに向かって追加注文しました。


「それとコーヒー」

 シドさんコーヒーなんて飲むんですか? いつ覚えた!

 大人ですね!


「それから、ショーケースの上の段端から端まで全部下さい」

 シドさん大人買いなんてするんですか? いつ覚えた!

 意外とコドモなんですね?


 ……って、それだけのチョコ、誰が食べるんですかぁっ!

読んでいただきありがとうございます(^^)


初出のショコラティエ ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ですが、これから先、行きつけとしてバンバン出てきます。ぱっと書き溜め分みたらしょっちゅうチョコ食べてる感じに(爆)チョコ嫌いの方にはちょっとキツいと思いますが、嫌わないでやって下さると有難いですm(_ _)m

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