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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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31/201

31.お友達兼下僕改めタダのお友達な美青年に○○疑惑?!けれど甘い約束に変態悪女もメロメロです!

 思った以上の収穫もあって楽しかったけれど、最後の最後でシドさんのプッツン嫌がらせ攻撃が炸裂してしまった夜会の翌々日。

 確かにこれまでの言動はイケナカッタかも、と反省中の私ことエリザベート・クローディス。

 自室でシドとこんな問答をしております。


「シド、あなた嫌ならついてこなくてもいいのよ?」


「いえ仕事ですから。給料分は働きますよ」


「本当に嫌じゃない?」


 これから童話の原稿を、バルシュミーデ兄弟社のジグムントさんに見せに行くのです。

 なぜならば、もうじき ″月刊ムーサ″ の第7号が〆切ですからね!


 そうすると来月15日の発売日まで、副社長兼編集長のジグムントさんは超絶忙しくなるはず。

 その前にちょろっと読んでもらい、感想やアドバイスをいただきたいのですよ。


 そういう目的での外出、活版印刷所の場所は目抜き通りの端で安全です。1人歩きも特に問題なし。

 無理やりシドさんを煩わせることもありませんよね!

 嫌なら行かなくて良いと念を押したのはこのためなのです。


 そう、目指せ奴隷解放、下僕からの自立!

 これまで外出というと当然のようにシドが一緒だったのですが、悪女も変わる時は変わるのですよ。えっへん!(威張り)


 だってね。

 シド自身が『取引』など持ち出して甘やかしてくれようとしてても、一旦決めたことは守らなければ……というより正直な話、前世の実母と同じヒトになりたくないのですよ!


 ずっと気にしてなかったのに、気になり出すと 「はっ今もしかして似てた!?」 のオンパレードですから、ねぇ……

 おかげで悪女のアイデンティティも崩壊寸前。


 頑張れ黒い魂! 前世の因縁になんか負けるんじゃない!

 私は私、タダの悪女で変態な16歳!


 と己を鼓舞しても、迷うんですよね。

 シドの『仕事』発言をどこまで信用して良いか、とか本当は嫌なのに『仕事』だから付いてきてくれるだけなのかな、とか。


「嫌だったらいいんだからね?」

 と、3度目の確認で。


 はぁぁぁぁ。


 いかにも 「うっとうしいなコラ」 とでも言いたげなタメイキをつくシドさん。

 やおら、つっとリジーちゃんの手をとってきます。


 こ、これはまさか。


 ひきつる間もなく、ものすごく優しい声。


「たおやかで優しい手では、暴漢に遭っても殴れないでしょう?」 シドの長い指が手の甲をそっと撫で……


 きたぁ(ゾワゾワ)

 意地悪きたぁ! (絶叫)


「この手を守る役目を俺以外の者に与えるんですか?」


 手首から指の先まで、まるで繊細なガラス細工にでも触れるように撫でてくるのが……うげぇダメ、居たたまれな……

 ううん、負けないもんっ!


 困らないもんね!

 この程度、変態悪女は平気だもんね!

 涙目になんかなってないからね!


「だ、大丈夫です! 何かあったら、急所を膝蹴りしますから!」


 見よこの伝家の宝刀! と抜いてみせたのに、返ってきたのは小バカにしたような笑み。


「へえー」 感情見えない薄笑いが美貌をより引き立たせてかえって恐いです。

 多分楽しんでるんだと思うけど、恐いのです!


 わざわざリジーちゃんの耳に口をつけておっしゃるシドさん。


「できるんですか?あなたに?もう震えてるのに?」


「…………っ!」


 イヤヤメテ言葉責めイヤ!

 もう泣くムリ!

 でも負けないっ!

 泣かないもんねっ!


 よし、この攻撃、絶対に切り抜けてやるぅっ!


「ではシドも一緒に来なさい」


「上出来です」 ふっ、とシドが笑い、やっと手を離してくれました。

 黒い表情も消えてますね!


 ふぅー、やれやれ。ほっとした。


 天然下僕体質なのに言葉責め好きなSって……どこをどうしたらこうなっちゃうんでしょうか。

 そんなリジーちゃんの疑問など知らぬように、シドさんご機嫌です。


「なかなか楽しかったので、何でも協力しますよ?」


 イエ単なる外出ですよ。でも、何でも、って。

 ワクワク。

 じゃあ、こんなことでもいいのかしらっ!


「じゃあ川遊びする膨らみはじめの少女をエロ目線で観察してみてくれる?」


 次回のポリーちゃん少女時代エピソード執筆のための協力依頼ですね!


 ところが。


「イヤです」


 えーっナニそのあっさりした拒絶!

 せっかく『観察』にレベル落としたのに!

(膨らみきってない少女相手に視姦はさすがにヤバいですからね)


 ともかくも、ガッカリですよその態度!

 シドさんったら、悪女との取引ナメてますねっ!?


「どこが何でも、なのよ! わたくしすごく困ったのに」


「だってイヤなことにイヤイヤ従われたらイヤなんでしょう?」


「うっ……でもでも!」


 シドが言い出したんですよ?

 あのとんでもない『取引』は。


 そう、ヤツは昨日。

「実は俺……」 と、こんなことを白状したのです。


「アルデローサ様の困ったお顔が大好物なんです。なので時々、困らせてもいいですか?そ したらこれまで通りに何でもご命令下さってOKです」


 シドさんそれってモシカシテ。

 リジーちゃん以上に悪女で変態で病的なのでは?


 と、ちらりとは思いました。

 思いましたけど。

 ……OK、しちゃったんですよねぇぇぇ……。


 だってね。

(私がシドにウッカリ当然のように命令しちゃってる現状よりはマシかも) とか思ったものだから!


 というのも、そもそもが悪女なリジーちゃん。

 どんな悪意も多少のイジメもばっちこい! なのです。

(たとえば、イブニングドレスで着飾ってる時に頭から水かけられても高笑いしてタバスコかけかえしてやりますよ!)


 ……でも。ヤツを甘く見てはいけなかった。


 ちゃんと私の弱点を知っている優秀なシドさんだったのです。

 はぁぁぁぁぁ(タメイキ)


 褒め言葉も甘ゼリフも超苦手ですよ。

 そういうものは、ポリーちゃんにお願いしたいのです!

 リジーちゃんじゃ、ないんですよ!


 とまぁ、一通りの内心シャウトが終わったところで。

 協定を結んだら早速とばかりにこれだけ困らせて下さったシドには、やはりお仕置きが必要ですよね!


 対価が『外出付き添い』だけでは取引としてフェアじゃありませんっ!

 悪女ナメんなよ、でございます。


「そういえば ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ で夏の新作フレーバーが出たのよね」


 ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ は目抜き通りのショコラティエ。

 リジーちゃん、実はチョコレートが大好物なのですっ!


 キュンっとくる強烈な甘さ。

 ほろ苦くぬぇばぁっと舌に絡み付く口溶け。

 脳を蕩かす濃厚な香り。

 もう、メ ロ メ ロ ……♡


 今世にもチョコレートがある、と知った時の嬉しさといったら!

 ただしその値段にも仰天しましたけど、ね。


 前世の某高級ブランド1粒300円なんてかわいいもの。

 こちらの世界ではなんと、1粒の相場はシドの給料約5時間分ですよ!


 それでも新作が出たらチェックしたいものなのです!

 もちろん街角で!

 ショーケース内をじっくりと眺めつつ選び、己がモノにしてすぐに口に入れてしまう行為の甘美さがイイのですから。


 目をキラキラさせてシドにおねだりしてやります。


「後で ″ヴェルベナエ・ドゥルシス″ に寄りましょうよ!」


「では奥様からOKが出たら、俺がご馳走しますよ」


 いや母がそんなのにOK出すはずないでしょうが。むしろ立派な淑女として、取り寄せを勧められそうですね!


 分かってるクセにボケるシドの袖をキュッと引っ張ってやります。


「ダメ! お母様には内緒よ」


「分かりました。秘密ですね」


 シドの黒い瞳が嬉しそうに細まり、すっと右手の小指を出してきました。

 幼い子がよくする秘密の約束のしるし。そういえば初めてそれを教えてくれたのは、シドだったんでした。


 懐かしくなってニコニコしつつ、シドの小指に私の小指を絡ませます。


「ええ秘密。約束よ!」


 秘密で食べるチョコレート。素敵ですね!

 背徳感がより官能の歓びを引き立てるというものです。

 ワクワク。


 そして、なんとなくそのまま幼い時のように手を繋いで、家を出たリジーちゃんとシドさんなのでした。


 ……少しは下僕から、脱した、かな?

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