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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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29/201

29.レベル高い悪女なら、嫌がらせには親切で返しましょう?!のつもりが勘違いされてしまって困っています!

 夜会のオマケ、視姦レポートでシドの嫌がらせプレイが炸裂し、ゾワゾワして涙目寸前の私ことエリザベート、花も羞じらう16歳。

 妄想に集中もできなければ眠れもしない一夜となるのかも!? と思いつつダイビングしたベッドで……


 グッスリ眠っちゃいました。しかも割かし早々に。

 やっぱり昨日の疲れでしょうね、てへ(照れ笑)


 でも残念!

 夢見はあまり良いとは言えませんでした。

 なにしろ最悪な前世の記憶ですからね!

 普段は忘れていられても、夢の中では容赦なくフラッシュバックしてきたりもするのです。


 とはいえ、今回は大したエピソードでもありませんでした。

 前世の実母が私の友達のバースデープレゼントを用意しておいてくれていた、っていうだけですからね。

 前世で8、9歳の頃のことです。


 パーティーに招かれて、プレゼントを何にしよう、とワクワクしていたのに前世の実母がさっくり買ってきてしまった、という……文句を言うと実母が悲しむのが分かっているので「ウンカワイイネアリガトウ」と喜んでみせ、実母も友達も嬉しそうで本当ニ良カッタナァ、というお話。


 これまでにフラッシュバックしてきたエピソードの中では穏やかと言っても良いほどの夢なのに、目が覚めたら泣いちゃってました。

 ひとりポツンと離れてしまった心の置き場所が分からなくて。


 けどよく考えたら泣く必要ないよね! だって今世の私はひと味もふた味も違うのですから!

 今世の母はそんなことしないけれど、万一その程度されても動じませんよ。

 自分のモノにして友達へのプレゼントは買い直すのが正しい悪女の道です。


 それより問題は。

 どうしてこのタイミングでこの夢? ってことの方。


 自分で手早く着替えつつ考えます。

 前世でのパーティーに呼ばれたのってそれくらいだから、今世のパーティーと関連付けのフラッシュバックでしょうか? にしても規模が違いすぎだし。

 それならむしろ強制参加かつ女子はお酌役確定の会社パーティーとかのが近いわ!

 なんて、またイヤな記憶がフラッシュバックしちゃいましたよ、うげぇ。


 と、まぁ。

 つらつらと考えているうちに。

 急に、ぴこーん! と思い当たっちゃったのです!


 すなわち。

 今世の私、この前世の実母の態度にちょっと似てるよね!? 主にシドに対して。

 当然従うものと思い込んで悪気なく接してるところが!


 いやでもシドは友達である前に下僕だし。元から天然下僕体質だし。でもイヤなことはイヤだと割かしハッキリ言うし……ああでも最終的には無理やり言うこと聞かせるんだったっけ。

 覗きレポとか視姦レポとか。


 うわ……冷静になって考えてみれば。


 そういうものだと思い込んでて特に気にしてなかったのが。


 信じられませんね!


 つまり。

 昨夜のあのシドの強烈な嫌がらせ炸裂は、意思表示。

「いい加減にしろよオマエ。イヤだって言ってんだろ」 という!

 ヤ、ヤバい。ガクブル。

 経験者には分かるのですよ!


 意思表示があるうちに事は解決しておかないといけないのです!

 そのうち何も言わなくなるのは 「分かってくれた」 ではなく 「諦めた」 ですからね!

 すっかり諦めて心を閉ざし、裡にひたすら憎悪と絶望を育てるようになればオシマイです。


 憎まれるのは慣れれば平気ですが、憎むのに慣れるのは辛いことなのですよ。


 そんな思いをシドにさせる……?

 いやいやいや!

 そんな、わけにはいきませんね!

 なにしろ、大事な下僕兼お友達ですからね!


 よし、決めた。

 これからは極力態度、改めましょうっ。

 下僕がイヤな人に下僕を押し付けてはいけませんね!

 目指せ奴隷解放っ!


 とは言っても。


「ありがとう、でも自分でするわ」「はいはい」


 はいはい言いながら手早く髪を梳いてハーフアップにまとめ、リボンを結んでくれるシド。

 これではいつもと変わらず下僕扱い続行じゃないですかっ……!?


「あ、わたくしが片付け……」


 言っている間にサッサカ片付けられる朝食の食器。がーん。

 リジ、じんでちゅるのにぃ! シドがぁ! ……とつい、2歳の頃の記憶がフラッシュバックしてきましたよ。


 こうなったら、食後のお茶を淹れてやるぅ!


 ティーセットに突進すると、さっと前を遮るのは執事のエデルベンノさん。しまった、つい。

 食後のお茶はエデルベンノさんのお仕事です。


「どうされましたか、お嬢様」


「わたくしもお茶の淹れ方を教えていただきたくて」


 うっかり仕事をとろうとしたと悟られてはなりませんね。

 天使スマイルで言い訳しておきましょう。


「お父様とお母様にお茶を淹れて差し上げたいの!」


「そうでしたか」


 にこやかに返事しつつ、両親の方を伺うエデルベンノさん。

 大丈夫ですよ、こういう時にニコニコしてくれるのがウチの両親ですからね。


「リジーが淹れてくれるのかい?」


「楽しみね」


 ほらね、父はデレデレ、母も心からの天使様スマイルですよ。


 我が家の朝のお茶は庭で採れたフレッシュハーブ。

 その辺に生えているミントと温室のレモングラス、少し茎を長めに切ってあるのです。

 温めておいたポットに入れて沸かしたてのお湯を注ぐと、強い香りが立ち上って……うーん、こんな時でも幸せっ


 草がお湯の中を漂いつつ次第にその色を移していく様子を眺めるのが楽しいのですが「すぐにフタをして下さい」とエデルベンノさんから注意されました。

 ルーナ王国には耐熱ガラスがまだ無いのが残念です!

 濃いのが好きなので、長めに5分ほど蒸らしてみましょう。


「どうぞ、お父様。お母様も」


 いかにも 「ずっとやってみたかったの♡」 というノリを演出してそれぞれの前に置かれたカップにハーブティーを注ぎ、ミントの葉を飾ります。我ながら良い出来。


 シドとナターシャのカップにも同じようにお茶を入れると、ナターシャは 「きゃあっ、ありがとうございますぅ」 と喜んでくれましたが、シドは思いっきり驚いた顔をしました。

 ふっ悪女は豹変するのですよ、ザマヲミナサイマセ!


「美味しいわ」 「初めてでこんなに上手だなんてリジーは天才だなぁ」


 父と母も口々にほめてくれます。

 そうでしょうとも。

 なにしろ前世ではリストカット以外の数少ない趣味でしたからね♡


 さてシドは、と見ると慎重に香りを検分してるもようです。やだなぁ、毒なんか入れてないのに。


「ハチミツどうぞ?」


 差し出すとまた驚いた顔をされました。

 やだなぁ、甘い物は好きじゃないけどお茶にはハチミツ入れる派だってことくらい知ってますよ!

 長い付き合いなんだから!



 こんな感じで、なるべくシド下僕扱いをやめ、普通にお友達として遇するよう努力することはや半日。

 私とシドは、バルコニーで家庭教師待ちのお茶タイム中です。


 リラの並木はまだまだ花盛り、午前中は恒例の 「パン無いぞ」 コールで賑わっていた通りも今は静かで、そよ風に乗って甘い香りが漂います。


 ちなみに今回のケーキ配布は昨日の『晩餐会in王宮』のお陰で、なかなか豪華なものとなりました。

 なるほどーこれだけ甘い物てんこ盛りなら余るわね、と実際に見てリジーちゃんも納得です。

 それはさておき。


「謝りますよ」 再び私が淹れたお茶(今度はオレンジピールとダージリンのブレンドです)を飲みつつ、シドがぶっきらぼうに告げた言葉に、キョトンとして首をかしげるリジーちゃん。

 なんで、そうなるのでしょう?


「昨日はやりすぎました。レポートも書き直しましたから、そろそろ機嫌を直して下さい」


「昨日のことはもういいのよ」


 思い出すとぞわぞわするからヤメテ、です。

 けど、シドは難しい顔のまま。珍しく眉間にしわなんか寄せちゃってます。

(なのにまだ美人さんだなんてズルいですね!)


「だって今朝からのこの流れはあれですよね、解雇通知みたいな」


「どうしてそうなるの」


「俺の手助けなんか要らない、と言われているような気がめちゃくちゃしてるんですが」


 えーそうかな?

 しばらく考えてみたら、そうかもしんない気もしてきました。

 だってあの小っ恥ずかしい書字魔法の文言(ケーキ配布用)も、今日はリジーちゃんが朗読しましたからね!

 シドと違って効果出なかったどうしようと、本当にもうドキドキでしたよ。


 ぽん、と手を打ってみます。


「確かにそうともとれるわね」


 シドさんガクッとうな垂れました。


「今まで気付かずにその不可思議な行動とっていたんですか」


 どうやら内心でかなり悩ませたもよう。

 ふっ嫌がらせなんかするからですよザマヲミナサイマセ! ……ではなくて。

 ここはきちんと下僕からの自立を宣言しなければ。


「だってあんな嫌がらせをするのは、わたくしがよほど悪かったんだと思ったのよ」


「悪女志望が何を今さら」


「もちろん! 憎まれるのも嫌われるもばっちこい、よ! 全然平気、ていうかむしろ安心するわ」


 良い人だと期待されることに比べたらそっちの方が全然ラクですからね!

 むしろ今世の、割かし好きなことやってるのにどうやらさほど憎まれても嫌われてもいないらしい状態の方が、実は落ち着きませんです、はい。

 黒い心が崩壊しそうでヤバいのですっ


 私の主張に、シドがつっこみます。


「だったら今まで通り普通にしてたら良いでしょうが」


「うーん確かにそうなんだけど」


 どう説明したら良いものか、悩みますねぇ!


 私は言葉を濁して、オレンジの香りがする紅茶を1口コクンと飲み込んだのでした。

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