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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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200/201

199. 急ですが、まさかまさかの黄泉がえり!?けれどもやっぱり、変態悪女でございます!

中盤まで少々重めです。

苦手な方は御注意ください。

 ピピッ、ピピッ、ピピッ……


 やたらとうるさい、警告音。

 消毒薬の匂い。

 目を覚まして、とかなんとかわめいている…… 前世の母親の、声。


 …… 何か、必死な感じですねぇ…… 一体、どうしたんでしょう?


 と、ここまで考えてハッと気づきます。


 これ、私の前世の死に際じゃないですか。


 ええっと…… 確か、私ことリジーちゃんこと、エリザベート・クローディス。

 9月(バックス)は26日未明頃に出産を終え、しわくちゃでお猿さんっぽい赤ちゃんなのに可愛いと思えてしまう本能の恐ろしさに戦慄(わなな)きつつ感動のご対面を済ませ…… その後は、なんだか疲れてそのまま寝ちゃったような気が、するのですが。


 なにか今、この前世の死に際が、夢ではあり得ないようなリアリティーが…… って、もしかして。

 ―――― リジーちゃんったら、あの世で死にかけたり、してないでしょうね?


『死にかけてるね』


 ―――― なんですって。


 どこからか響いてきた謎の声に問い返してみれば、なんとリジーちゃん、ガチで死にかけなもようです。いったい、なぜ。


『だが、向こうで死んだら、こっちで目を覚ます。もう一度、この世界で生き直せるから、心配ない』


 ―――― いやいやいや、心配ありすぎですよ!

 リジーちゃんが死んじゃったら、シドさんや両親はどうするですか!?

 ナターシャにファルカにハンスさん、リーゼロッテ様にジグムントさんにダーナちゃんにキエルちゃん…… みんな、きっと悲しむでしょう。

 それに、リジーちゃんが死んじゃったら、娘ちゃん (生まれたのは女の子でした♡) はどうなるんですか!


『いや、金持ちの子どもには、優秀な乳母(ナニー)がつくから、大丈夫』


 ―――― そんな問題、かもしれませんけど…… やっぱり、そんな問題じゃない、のです!


『それに、こっちの世界にだって、キミが死んだら悲しむ人はたくさんいるでしょ? キミの首絞めちゃった人だって、キミが死んじゃわなければ、執行猶予がつくかもしれないよ? 彼らのことは、いいの?』


 ―――― うっっ……

 確かに、それを改めて言われると、ツラいものがありますねぇ……

 あっちの世界じゃ、どうにもならないから、と目を背けていたことが再燃とは。今さら何の罰、と言いたくなりますが……

 前世の己のメンタル、すなわち、家族を憎んで憎みまくって、生きているのが苦しくて、周囲のことなんか全く考えられなかった状況を思えば、こんなことがあっても当然なのかもしれません。


 なにしろ 『声』 の説明によると、私を殺してくれた人は、どうやらこのままだと実刑くらっちゃうみたいなのに、私、何にもできてないですからね!


『ほら、お母さんだって、あんなに必死に、キミを呼び戻そうとしてるよ』


 叫びから一転、弱々しい母親の呟きが耳に入ってきました。


「どうして…… どうして…… どうして、こんな目に遭わなきゃならないの……」


 どうして、()()()()こんな目に遭わなきゃならないの…… 前世では、娘の死に際でさえ悲劇のヒロインぶる、その態度に嫌悪感しか覚えなかったものですが。

 今は、なんだか、可哀想な気がします。

 ―――― きっと、この人は誰と出会っても、誰がそばにいても、結局は、ひとりになってしまうんでしょうね。自分自身のことしか、頭にないのだから。



 けれども、その次の、途切れ途切れの呟きを聞いた時に…… 私、ハッとしちゃいました。


「…… わたしが、代わりに、死ねたら、いいのに…… 」


 ―――― そうだったのか。


 命に代えても…… 

 それは、もしも、母親が私を 『都合の良い人形』 としか思っていないのならば、出てこないはずの台詞。

 だって、生まれたばかりの娘に会った時に、リジーちゃんもウッカリそんなク◯重いことを、思ってしまったのですから。


 ―――― こんな母親でも、同じ気持ちを知っているのならば。


 もう、それで、じゅうぶん。

 そう思うことに、しましょう。


 転生してもずっと、胸の奥で(こご)ったまま消えてくれなかった冷たく重い塊が、すっと軽くなった気がしました。



 『声』 はまだ、問いかけています。


『さて、どうする?』


 ―――― そうですねぇ。


 もし今、この世界で生き返れば、やり直せるかもしれません。

 自分も周囲の人たちも大切にして、難しくても頑張ってきちんと向き合って、普通に暮らしていければ。

 そしたら、再びこの世から去る時には、「ざまぁ」 などとは思わなくて済むかもしれません。


 けれど。

 この世界には、戻れません。

 ―――― 何があっても失いたくない大切な人たちはもう、別の世界に、いるのですから。


『他人に罪を負わせたままでも、母親を苦しませたままでも、いいと?』


 ―――― かまいませんとも。

 何を言われても、心はもう、決まっています。

 つまりはこれから私は、手助けはおろか、願いも祈りも全くもって届かない世界に行くのですから……


 こっちの世界に残された方々は、ツラかろうと苦しかろうと、それぞれ勝手に精一杯やってくださいませ、なのです!

 もうこれ以上、ゴメンナサイとか幸せになってとか、一切思いませんからね、リジーちゃんは!





「だって、リジーちゃん悪女だもん!」


「アルデローサ様! 良かった……!」


 目を開けてみれば、旦那さまことシドさんの、必死すぎる顔…… ふっ、本当に罪作りですねぇ、リジーちゃんったら。



「…… というか、もしかして、わたくし。本気で死にかけていたのかしら」


「今はもう大丈夫ですが、出血がなかなか止まらなくて…… 一時、危うかったんですよ」


 魔法薬師さんや助産師さんが呪文やら手持ちの魔法薬やらでなんとか止血をしてくれて無事だったそうです。

 その後も、シドが付ききりで様子を見てくれていたのですね。


「シドさんだって、疲れてたでしょうに」


「そんなもの、忘れて、まし…… 」


 あ、落ちた。


 よほど、安心したのでしょうか。ベッドの(かたわ)らにひざまずいたままの姿勢で、頭だけリジーちゃんの枕元に落として、あっという間にスヤスヤと寝息をているシドさん…… はぅぅぅう!

 意外なところで可愛いんだから、もうっ!


 これは、ぜひとも。

 肩に毛布などかけて、頭をナデナデしつつ美人さんなお耳にお口をつけて 「愛してるわ♡」 などと囁いてみなくては……っ!


 と、ひとりイチャイチャしておりますと。


「あらあら、起きておられたんですね!」


 ふみゃあふみゃあ、と元気に泣き声を上げる娘ちゃんを抱っこして、ナターシャが部屋に入ってきました。


「オッパイあげてみられますか?」


 ―――― ふぉぉぉぉ。

 今さらですが、母親になっちゃったんですねぇ…… リジーちゃんったら!


 ムキムキとお胸を剥き出しにし、小さくほわっとした温もりを抱っこして…… 口には出さず、前世に残してきた人たちに、そっと告げる、リジーちゃんなのでした。



 ―――― さようなら。そして、ありがとう。

読んでくださり、ありがとうございます!


えー…… 前もってお断りしておきますと、今回のリジーちゃんの自我が前世に戻ったかもしれないシーン…… 後程また、ちょいちょい手を加えるかもしれません。

前世とキッパリ訣別、というのは変わらないんですが、「自分のために苦しまないでほしい」 気持ちと 「そう願うこと自体が偽善っぽくなってしまう」 事実にどう折り合いをつけて、しかもゴチャゴチャさせずに書くか、というところがですね。難しいです!

誰か書き方知っておられたら教えてください(←コラw)


それはさておき、今地元では風邪が流行ってるんですよ。コロナ押し退け、普通の風邪が!

うちも一家揃ってかかっちゃいましたが…… 皆さんは大丈夫でしょうか?


これ以上どうやって気をつけるんだ、ってほど気をつけてる昨今ですが、お気をつけ下さいー!

そして、かかっちゃった人、お大事にー!


感想・ブクマ・応援★ いつもめちゃくちゃ感謝しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] リジーちゃあああん!!!!(ブワッ) 滅茶苦茶感動しました( ˘ω˘ ) そうなんですよね、時間は前にしか進まないのですから、やはり前を向いて生きるべきなのだと、私も思います。
[良い点] 今回、好きですよ。 こういうお話。 とても面白かったです (*´▽`*)
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