2.乳児期に黒い心はしばしば灰になりました。でも完全浄化は全力拒否です!
2019/10
読んでいただきありがとうございます。
後半部の文体に合わせて前半部を改稿中です。
読みにくい箇所がしばしばあるかと思いますが、ご容赦くださいませ。
こうして、性格悪いままに転生した私の新生児生活は始まりました。
この頃の私、前世の性格と知識は確立しておりますが、記憶は随時フラッシュバック形式となっております。
つまりは、何らかの出来事等に関連して 「前世でこんなことあった」「前世でも同じ物を見た」 等々、思い出すのです。
おかげで乳児期の私には、ちゃんと1人でトイレに行けてゴハン食べられてた記憶は存在しませんでした。
もし覚えてたら、恥ずかしすぎて悶絶ものだったでしょうね!
オムツ替えてもらうとか、乳母の乳房に吸い付くとか……
でもですね。
乳児期には、あくまでも 「ああ前世でも同じことしてもらってたぜ」 という感覚なのでございます。
うまくできているものですね。
さて、とでは。
視点を乳児期に戻して続けましょう。
んっく、んっく、んっく、……
今1日6回の食事タイム中。
乳母のパイの先端にむしゃぶりついてゴク飲みしてるわけですねっ♡
それにしても、はぁぁ……乳母ってイイわ!
乳 の 出 最 高 !
前世の母は乳がほとんど出ない体質だったものですから、飲むのにほんっと苦労したものです。
一時は乳首が切れて流れ出た血を乳の代わりに啜っていた私……おっ!?
なんと、前世でも!
悪女っぽいアクションがっ!?
イイですねっ
つまんなかった前世での、唯一の勲章として心に留めておきましょうっ!
しかし、ここで1つ問題が。
乳母のパイに耽溺する極楽タイムは、悲しいかな、そう長くは続かないのです。
うー……もっと飲みたいけど……眠いのですよぉ……
パイをチュッチュしつつウトウトするのもまた、極楽といえば極楽。なのですがねぇ……
ここに、もう1つ待ち受ける残念事項。
すなわちそれ。
赤子仕様の内臓。
入れたら即出るぜ!
そのさま、まさにミルク飲み人形のごとしだぜ、っていう。
「あらあら。う○ち出ましたねぇ。お尻キレイにしましょうねぇ」
乳母が慈愛に満ちた眼差しを向けてくれます。ああっ……!
こんな視線に晒されていては、黒い心が灰になってしまいそうっ!
やーめーてー!
「ぇぇぇぇえ!」
抵抗して泣く私に、乳母はあくまで優しく語りかけてくれます。
「はぁい、すぐ終わりますよーキレイキレイしたら気持ち良いですねぇ」
相変わらず 「えぇぇぇぁぁあぅッ!」 と泣きながら、どこか引っ掛かるものを感じる、私ことエリザベート。
……なんだか、遥かな昔にこれと似た……いえ。
これ以上に慈しみ溢れる眼差しと口調に出会っていたような……んー?
よく思い出せませんね!
所詮は、発展途上の脳ミソですからねぇ。
「リジーちゃんは今日も元気でしゅねー」
父が、オムツを替え終わった頃合いを見計らったように覗き込んできます。
どうも女児のオムツ替えシーンには、テれがあるようですね。
侍女や乳母が雇える財力があって良かったですこと!
これがもしその日暮らしの庶民なら「テれる」とか言ってられませんもの。
そんな言い訳でオムツ替えを回避するようなパパは、奥さんからブリザード視線を浴びて固まるしかないはず。
と、それはさておき。
成長してから得た知識も交えつつ、改めてご紹介しましょうっ。
この、だらしなく緩んだお顔を恥ずかし気もなく披露しているけっこうイケメンな父。
なんと、身分は伯爵ですよっ!
今世の私は伯爵令嬢なのですねっ、まぁっ♡
……ま、ここルーナ王国で何の意味があるのか分かりませんけど。
なにしろ、ここルーナ王国は、折しも。
文化は爛熟期、そんな時の常として政治は腐敗期、庶民は台頭期、なのですからっ!
ほんっと、いつ革命が起こって、貴族の首がハルモニア広場に並んでもおかしくない……って、やだ!
貴族令嬢やばいですね!
……ではなくて。
処刑程度ドンと受けて立ちましょう!
そう、これ。決まりましたねっ!
……でもせめて。
処刑は、悪女として太い人生を歩んだ後にしてほしいもの、なんですが、ねぇ……。
それはともかく、そんなわけで。
我がクローディス家は貴族なんです。
しかぁし! なんと!
領地とか、ないんですよねぇ……
なんでも、先代に政治的手腕があまりに無くて政界から追われたそうで。
爵位はギリ残りましたが領地は返上。
つまりは、めちゃくちゃ微妙な、ギリギリ貴族、なのでございます。
現在は何で生計を立てているかというと……
工 場 経 営 。
政治はからきしなクローディス家でしたが、こちらは水が合っていたもよう。
父も祖父も、毎日楽しそうにお仕事に励んでおります。
従業員からも慕われてますし、この点では、言うことなしですね!
革命が起こっても我が一家の首がハルモニア広場に並ぶのは最後の方でしょうっ!
いや、むしろ。
もう革命先導しちゃうっ!?
……と、若干熱くなりすぎました。
革命を起こすにしても筋肉も脳ミソもフニャフニャの赤子には荷が重すぎ、ですよね。
とりあえず、お父様。
私が立派に成長できるよう、汗水たらして、せっせと貢いでくださいませっ!
おーっほっほっほっほ!
脳内高笑いをかましつつ、片手で父の指をきゅっとにぎり、もう一方の手でそのほっぺに悩ましくペタペタと触れます。
父は、この罠にすっかりハマったもよう。ちょろいわ。
そのお顔は、緩む、というレベルじゃありません。
デレデレと崩壊しております。
……ふっ。
これが、悪女の魅力でしてよ!
「あらぁリジーちゃんはお父様が分かるのねぇ」
母が、笑顔で私を抱っこします。
……やはりこういう笑顔、以前も見た……あっ。
思い出しました!
前世で私が赤子だった頃、でしたねっ……って、まじか。
この聖女様もまっつぁおな慈母スマイルが、前世の実母から向けられたものだった……?
ええええ!?
ありなのでしょうかっ!?
大体あの女は、私を溺愛してはいましたが、なんっつうかその方法が。
『理想の人形を作り上げて周囲から誉められ喜ぶ』方に偏っていましたからね!
そんな女が、自分の血を啜っている赤子に。
黒い心が一瞬で灰になるレベルの慈母スマイルを向けていたとか……
………………ああ、前世でも。
少なくとも、赤子の時には、ちゃんと慈しまれてたんですねぇ……私……
やだ。
涙出てきちゃったじゃないですか。あれ何。どんだけ泣きたいの私。
悪女なのに。
赤子には感情のコントロールも難しいものなのです。
仕方ないっ!
うぇぇぇあぁぁぁぁあー!
今世の母の腕の中で思いっ切り泣けば、長年のわだかまりが少々、解けた気分です。
「あらあらあらどうしたのかしら……」
母がびっくりして、あやしてくれます。
ちょっとショックも受けてますね!
いえねお母様。
これは前世からの因縁の結果なのよ。
決して 「抱かれるならイケメンパパ男盛りの24歳の方がいいわ」 なんて、思っているわけではないですからね!
お読みいただきありがとうございます(^^)