197. ついに疑惑のひととご対面、ならぬお茶会です! ホラーな妄想滾る、変態悪女でございます!?
さて、かくして、愛しの旦那様ことシドさんから何やら隠されたまま、またしばらくの時は過ぎ、9月は25日となりました。
―――― なぜ隠されたままにしておくのか、ですって?
それは、きっと、何らかの事情があるに違いないからです!
そう考えることに決めたので、私ことリジーちゃんことエリザベート・クローディス、ちっともモヤモヤしておりませんとも。
「えええー? シドったら、まだアレ言ってないの?」
呆れたようなお顔で紅茶をひとくち飲まれるのは、我らが王女殿下こと、リーゼロッテ様。
本日は何やらお知らせくださることがあるとかで、王城の王女殿下のお部屋 (天井に天使たちがアレコレ晒して舞い踊ってるアソコです) に招かれております。
てっきり、件の 『毒』 について教えてくださるのかと思ったリジーちゃんでしたが。
「まぁ…… シドが言わないなら、わたくしが言うのも、ね」
きっとそのうち分かるわ、と曖昧に濁されてしまいました。
そのうち、ね……。
―――― 旦那様に薬を盛られ、敢えなく命を散らす若妻!
その腹の子も当然儚くなったものと思われていたが…… しばらく経ち墓の中から漏れ聞こえる赤子の泣き声。なんと赤子は、棺の中で生まれたのであった……っ!
祖父母に育てられた赤子は、すくすく成長したが、ある日父の罪を知ってしまい…… 血みどろの復讐劇が今、幕を上げる……!
…… などと、ホラーサスペンス的な妄想はドンドン捗りますが、それはさておき。
「では、知らせてくださりたいこととは、いったい何ですの?」
リーゼロッテ様が、静かに紅茶カップを置きました。
「リジーちゃん……」
「はい」
「できちゃったの」
「ええええええ!?」
なんと、この一言の破壊力たるや……!
「まさか、アレがアレなんでしょうか?」
「そうなの。アレがアレしちゃったの。リジーちゃんには一番に知らせたくて」
「リーゼロッテ様……! おめでとうございます!」
「ありがとう、リジーちゃん」
そっと両手をお腹に当てる、王女殿下…… あああ…… 確かにこれは、アレがアレしちゃった仕草!
いやもう、ビックリでございます…… ヘルムフリート青年め。
「いつ頃にお生まれに……?」
「5月終りか6月初め頃ですって」
「素敵な季節ですこと!」
「ねえ? わたくしも、そう思うの」
顔を見合わせてクスクス笑う、王女殿下とリジーちゃん。
―――― ルーナ王国の6月は、薔薇に鈴蘭に百合、たくさんの花が咲き乱れる、それはそれは美しい季節なのです。
「楽しみですわ」
「わたくしも。子どもどうし、年が近いから、きっとお友達になれるわね」
「そうなりましたら…… とっても、幸せでございます」
不覚にも、泣きそうになりました。
―――― リジーちゃんは、生まれる前から人に嫌われることを覚えて、人は媚びて騙して思い通りにするものだと、そう信じ込んでのスタートでしたけど……
もしかしたら、もうすぐ生まれるこの子たちは、違うかもしれない。
嫌われるより先に愛されることを覚えて、憎むより先に好きになることを覚えて、利用できる人より先に、ただ一緒に居るだけで嬉しい人を見つけるかもしれない。
―――― 特別な子でなくていい、普通の、幸せな子に。
それはリジーちゃんの勝手な希望、かもしれないけど、そうじゃなくて。
両親にシドさん、ジグムントさんに王女殿下に、ナターシャにファルカ…… 大切な人たちからもらった、温かくて大切なものだけを全部、次の子に渡すことができたなら、もしかしたら。
「仲の良いお友達に、なれるといいですね」
「あら。きっと、なるわよ」
このときの、優しい夏の木漏れ日のようなリーゼロッテ様の笑顔を…… 一生忘れない、と思った、リジーちゃんなのでした。
が、ここで、急に。
その明るい笑顔が、ふっと曇りました。
「リジーちゃん、さっきから、お腹押さえてるけど…… 痛むの?」
「ご心配されなくても、大丈夫ですわ。少し前から、時々キュッと痛むような気がするのですけど、今日は少し頻繁で…… けど、すぐに治ると思いますの」
「ねえ、リジーちゃん。わたくしも詳しくはないのだけれど……」
紅茶をまたひとくち含まれたリーゼロッテ様は、カップを置くと、ますます気遣わしげに眉を寄せ、こうおっしゃったのでした。
「それって、陣痛じゃなくて?」
「ええええ!?」
―――― 何か、イメージと違います、ねぇ……!?
かくして、王女殿下が呼び鈴1つで用意してくださった、揺れの少ない最新式・王家の馬車の中。
「まだ大丈夫ですわ」 と、ついついゴネてしまう、リジーちゃん。
「そんなに酷くないですもの」
「酷くならないうちに帰らなきゃ!」
「違うかもしれませんし……」
「違わなかったら、大変でしょう?」
わざわざ家まで付き添ってくださる、王女殿下…… には、申し訳ないのですけれど。
こんなことで、せっかく、久々にお会いできた機会を、無駄にしたくはないのですっ……!
「もっと、リーゼロッテ様とお話したかったのにぃぃぃぃ!」
「またゆっくり時間をとって、会いに行ってあげるから。はい、セレナ最新号もあげる」
「わぁ! ありがとうございます。おさすがですわ、リーゼロッテ様」
そうそう、王女殿下とお茶した後、セレナ最新号を買いに行く予定だったのですよね、今日は。
「けどこれ、ヘルムフリート様の分では……?」
「また買いに行くからいいのよ。それより、生まれたら教えてね!」
「…………。本当に、もうすぐ、生まれちゃうんでしょうか……?」
「きっと大丈夫よ。シドだって、いるじゃない?」
「え、ええ……まぁ……」
正直なところ、出産に、シドさんが何の役に立つのか…… 全く、分からないのですけどね!?
―――― こうして、なんだか痛みが若干強くなったような気がしてきた頃。
馬車は静かに、クローディス家に到着したのでした。
読んでくださり、ありがとうございます!
さて…… いよいよ。
春ですね!
桜がちらほら咲き始め、タンポポもツクシもぐんぐん伸びておりますが、それより何より。
吹きすさぶ風に目が痛くなると、実感します!
黄砂なのか花粉なのか…… 何か混じってますよね、春の風って。
花粉症の方、ご自愛くださいませー!
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