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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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19/201

19.未だ変態世界にいらっしゃらない美青年下僕。かくなる上は……罰しちゃいます?!

「いやぁ今回も素晴らしいですね!」


 ニコニコと誉めてくれるのは活版印刷所バルシュミーデ兄弟社の副社長、ムキマッチョに似合っていない銀縁眼鏡のジグムント・バルシュミーデさんです。

 庶民のための文芸誌 ″月刊ムーサ″ の編集もしているので忙しいはずなのに、毎回きちんと原稿の感想を言ってくれるお方。ありがたいですね。

 モチベーション上がります!


「いつもの安定して隠れイヤらしい視姦に後ろめたさとスリル感いっぱいの覗き要素が加わって、さらにドキドキしましたよ!」


「いやーんそうですかぁ」


 嬉しくて身体を軽くクネクネさせる私ことエリザベート・クローディス、実はお色気作家のルーナ・シー16歳。


「ほめてませんて」 背後でシドがボソボソとツッコミ入れてきます。うるさいわこの嘘つきサボりんぼめ。


「そうです。ポリー嬢の脱ぐシーンやら覗く従者の心理やら、臨場感溢れる描写も良かったですよ!」


 ジグムントさんが目を輝かせて身を乗り出しつつ、声を潜めました。


「もしかして本当に覗いたんですか?」


「いいえ」


 扇子半開きで悔しさに歪む口許を隠す私。


「全て想像の産物ですわ」


「想像であれだけ! 素晴らしい! やはりあなたは真性のド変態ですね!」


 嬉しいほめ言葉ですね! 思わずニッコリしながらも、まだ悔しさは抜けません!

 だってシドがちゃんと働いてくれていたら、臨場感5割増だったはずですからね。


 そう、ヤツは 「俺が覗きます!」 と力一杯約束したにも関わらず。

 こんなレポートを提出してきたのですよ。


『覗いてみたら、ちょうどアウターを脱ぎ終わったところでした。脱ぐところが見たかったと思います。ビスチェとドロワーズは安定の白。たまにはピンクやグレーなども良いと思います。


 似合わないガーターベルトはなく、涼しげに素足なところはポイント高し。でもどうせなら全部脱げ……と、これはどこぞのスケベオヤジの視点を想定すればの話ですよ。


 俺は小さい頃から見慣れているのでちっともドキドキしません。ついでに言うとわざわざ覗かなきゃならん意味もよく分かりませんね。それから採寸して、また服を着ました。以上』


 一瞬たりとも、覗いていない。それが、よくわかるレポートですね!

 そもそも、いつも私の詩にチェック入れる割に、このやる気なさげな小学生文章はなんなのでしょうかっ!?


「シド、サボったわね?」 と確認すれば、「いいえ? だって下着は白だし素足だったでしょう?」 などと、しれっとしたお返事。


 いえね。

 リジーちゃんの下着はオール白、家の中では夏場はいつも素足なんですよ!

 見なくたって分かるっつーの!


 仕方なく、リジーちゃんは、想像を膨らませに膨らませ 「真に覗き趣味の読者から『こんなの全然違うぜw』とか呆れ嘲笑されたらどうしよう」 とドキドキしつつも、第7話 "なまめかピンクのポリー嬢" を書いたのでした。


 ポリーちゃんの下着はローズピンクのレース。白い肌によく映えてとっても愛らしく、もはや呼吸困難寸前の覗き見従者……という妄想(おはなし)なのです!

 発売は来月7月(ユリウス)の15日、乞う御期待。のはず。だってジグムントさんの評価付きだし!


 そんなこんなで、印刷所を後にした私とシド。

 今回は〆切より大幅に早かったので、わざわざ届けに行ったのです。


 帰りはちょっと街歩き、です。

「きゃあっ、デートですね!」 などとナターシャは大騒ぎしていましたが、悪女はそんな健全なことはいたしません。

 これからサボった罰に、下僕のナケナシの給料を搾り取る予定、なだけなのですよ。


「本当に何でも買ってくれるのね?」


 念押しすると、シドあっさりと頷きます。


「旦那様からいただいていた10年分の給料がほぼ手付かずですから、大体のものはいけると思います」


 覗きをサボった罰とはバラさず 「褒賞のお祝いをして♡」 と言ってあるので太っ腹ですね!

 後で気付いて吠え面かくがいいわ、おっほほほほ(高笑)


 しかし、シドはうちに住み込みで兄妹同然に育ってきましたから、基本は給料使うことがあまり無いのも、事実。

 お小遣いなどという庶民のための制度が無い我が家では、今やシドの方がリジーちゃんより金持ちだったりします。くそうっ


 3年分と思ってたけど、5年分は使ってやるぅ!

 そう心に決め、目抜き通りを腕を組んでブラブラ歩きます。

 いざという時逃げ出されては困りますからね、ガッチリホールドですよ。


 目抜き通りは、馬車が余裕で並行して通れる幅広の道の両脇に、店が並んでいます。

 もと写本屋だったバルシュミーデ兄弟社はこの通りの1番端、その隣が貸本屋と紙屋です。

 そして中心あたりに高級菓子や珍しい食品の店が数軒。


 やや王宮寄りにドレス専門店″イリセトウェヌス″の大きなビル。

 3階建てです。

 そこから王宮まではドレスやカバン、高級雑貨、宝飾品、など、金持ちのための立派な店が、どんどんどんっ、と、威圧的に並んでおります。


 しかし、いざとなると……欲しいものってそんなに無いのですよね。

 所詮は前世は枯れ庶民、今世は適度な金持ちの娘。

 ワガママ放題におねだりをしていた時期もありましたが、誕生日プレゼントに領地をポン、と貰ったりする大貴族の令嬢とは物欲の基準が(はな)から違うのですよ……

 というか現金ならまだともかく、領地って嬉しいのかな。謎です。


「品物見る気あります?」


 立派な構えの店の前でも足を止めることのない私に、シドが不思議そうに確認しました。


「ええ。ほら、そこの新しい店」


 指し示したのは比較的小さな宝飾店。

 最近になって開業したこの ″ルミニスマーレ″ がリジーちゃんでも知っているほど話題なのは、例の、悪女の噂もチラホラ聞こえる王女殿下が専属デザイナー兼経営者だから。

 言うなれば王女様の趣味のお店なのですね!


 それはさておき。

 このお店のメインは仰々しいお飾りではなく、若者向けのシンプルめジュエリーです。

 私の好みに合う上に、お財布にも優し……もとい、ちょうど下僕から搾り取りやすいお手頃価格なのだそう。


「いらっしゃいませ」


 店内に入ると、やたらとキラキラしい青年たちが出迎えてくれました。

 ナンパ系ガテン系インテリ系とそれぞれにタイプは違うものの 「デート商法でもするのかな?」 と疑っちゃうほどの美人さんたちです!

 王女様は美青年趣味なのでしょうか。


「こちらのお嬢様に合うジュエリーを」


 シドが言葉少なに伝えます。

 うん? なんだか初めてくらいの勢いで従者っぽいですね?

 そういえば元々が天然下僕体質だったんでしたっけ……やろうと思えばいつでも出来る子だったんですね!


 しばらくして出されたジュエリーはどれもなかなかセンスの良いものでした。

 うん、これならどれでもOK。


 あまり悩まず、推定シドの給料5年分のネックレスを手に取りました。


 中央に大粒のアメジスト、周囲は小粒のダイヤで彩られた、なかなか品の良いネックレス。

 チェーンは金、極小粒のダイヤが等間隔で配置されています。


「これでいいわ」 


 ところが。


「センス無さ過ぎです、アルデローサ様」


 シドさんたら、バッサリと斬り捨ててきましたよ?

 ええええぇぇぇぇぇっ!?

読んでいただきありがとうございます(^^)

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「素晴らしい! やはりあなたは真性のド変態ですね!」 とんだ褒め言葉もあったもんですw 罰というよりただのおデート? ただのおねだり? この悪女、可愛すぎる!
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