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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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185. スパイス専門店はくしゃみカワイイ!?カワイイものに囲まれて、ご機嫌さんな変態悪女でございます!

「きゃーきれい! カワイイ!」


 瓶に入ってずらりと並べられた、色とりどりのスパイスにはしゃぐ、私ことエリザベート・クローディス。こう見えても伯爵令嬢でございます。


「最近何にでもカワイイって何ですかソレ」


「前世には 『カワイイ文化』 というのがあったのよ」


 前世のお年寄りのごとく顔をしかめる愛しの旦那様こと、シドさんに説明して差し上げます。

 リジーちゃん前世ではお堅い優等生でしたから、言葉遣いは常になるべく正しく、何にでも 『カワイイ』 というのは慎み……



「でもっ、カワイイものはカワイイんだもの……っ!」


「このヘンな匂いもですか?」


 たくさんのスパイスが入り交じった独特の、鼻を刺激する匂い。

 シドさんは慣れていないせいか、ちょっとイヤそうなお顔をしてますね。

 けど、リジーちゃんは嫌いじゃありません。…… 何より、こんな匂いかいでも全然気にならないのが、ツワリからの完全脱却を証明してて嬉しいですねぇっ!



「うん、エキゾチック感マシマシでカワイイっ!」



 こういうことを、同級生の女の子たちとキャアキャア言ってみる前世を送りたかったものです。


「でも、今シドさんとキャアキャア言えてるから、いっか」


「俺は全然キャアキャアしてませんが」


「うん、クシャミが出そうなのをガマンしてる旦那様もカワイイ…… ちょっと待っててね」


 マスターに頼んで、スパイスを少しずつ味見させてもらいます。

 カレーのスパイスといえば、ターメリックとクミン…… は、覚えているんですが、多分それで全部じゃない上に、名称が今世と前世では違いますからね。


 色と匂いと味で、アタリをつけていくしかない、のでございます……!



 …… と、無謀にも、異世界にてカレーを作ろうと試みている7月(ユリウス)は25日。実はシドさんの誕生日、でございます。



「この世界、前世とかなり似てるのに、どうして同じ料理がなかったりするのかしら」


「たまたまでは」


「うーん。これだけスパイスがあれば、暑い地域に発生してもおかしくないのに…… 防腐と食欲増進を兼ねた料理として」


「ジンナ帝国南東部以南では、防腐魔法がかなり発達しておりますので」


「……! 今、突然理解できたわ……!」


 なんと。

 魔法が世界の食文化を変えているとは…… 盲点も盲点、なのです。



 ――― と、あれやこれやお喋りしつつも、『カレーっぽい気がする』 スパイスをいくつか選んでお勘定を済ませます。



「さて、帰りましょう!」



 早速、エッセイ第2回の取材を兼ねたカレー作り、なのですよ……っ!


 ところが。


「え……」 ピタリ、と足を止めるシドさん。


「もう、ですか?」


「へ? 何か他に用事、あったかしら?」


「…… 俺とのデートが」


「だって、そんなことしてたら、シドさんの誕生日が…… せっかくプレゼントに新しいお料理を」


「俺へのプレゼントなら、デートしてください」


「はぅぅぅっ……!」


 まったくもう、何なんでしょうか。

 シドさんが、カワイイ。





 ――― というわけで。



「砂浜……! 前世ぶりぃぃ!」


 カレー作りは明日に回し、少々遠出して、寄せては返す波打ち際ではしゃぐリジーちゃん。と。


「あぶないですよ! 波にさらわれたらどうするんですか」


 心配性を発揮しまくるシドさん。


 お察しの通り、ただいまふたりきりの砂浜デート中でございます。


 ルーナ王国は北国のせいか、海水浴の風習がないのですよね。

 遊覧船に乗って港を周遊することはあっても、こうして海辺で波と戯れることは皆無、なのです。


「そもそもどうしてこんな所へ」


 シドさんが言うのも無理はありませんが…… リジーちゃんとしては。


「懐かしいから!」

 なのですよ、ねぇ。


「前世でね、同級生…… ううん、友達と行ったの」


 思い出したくもない、と思っていた頃には、前世といえば悪夢としてフラッシュバックしてくるものばかりだったのですが…… ここ最近、悪いことばかりじゃなかった、と思えるようになってきたせいでしょうか。


「あの時はあまり気持ちが動かなかったんだけど…… 思い出してみたら、それなりに楽しかったんだなぁ、と思うの、最近。…… 私ちゃんと、前世でも生きてたみたい」


 前世ではそんなことするの物語の中だけと思っていたこと…… 砂に文字なんて、書いてみるのです。

 ルーナ王国にはない、日本の字。


 親しかった人たちの、名前。


「何、書いてるんですか」


「うん…… 好きだったかもしれない、男の子の名前とか…… あ、()いた?」


「当然でしょう。同じ世界なら、探し出して抹殺もできますが」


 どこにあるかも分からない世界の男なんてどうしようもないじゃないですか…… と、不機嫌そのもののシドさん。


 そんなのただの妄想だ、と言うこともできるのに。丸ごと受け止めてもらえることで、私がどれだけ安心しているか…… なんて、申したりは、しませんとも。


「もう、シドさんったらカワイイんだからぁっ♡」


 ちょっとお腹が邪魔ですが、抱きついてチューして差し上げるのですよ……っ。


 傍目にはウザい感じにイチャイチャする私たちの足元で、波が、砂に残った名前を、消していきます。



 ――― もう、会うことはない、たくさんの人たち。


 彼らが今もこれからも、幸せでありますように。


 自己満足ではありますが、そう思えることが結構嬉しい、リジーちゃんなのでした。




 …… さて、明日はいよいよカレー作り。果たして成功、するでしょうか!?

読んでくださり、ありがとうございます!


さてさて、今回のカレー作りの流れは、1年半くらい前に書いた、リジーちゃんの前世の話からになります。

割と悲惨な話なんで特に推奨はしないんですが、そのラストに番外編として、リジーちゃん初めて妊婦さんな夏のカレー作り、を入れたのですよねぇ…… やっとリンクできそう……(しみじみ)


今から見ればあまり上手な作品でもないのですが、これをきっかけに交流が増え、初めてFAいただき、と思い出深い作品です。


懐かしいのでFAも自慢させてください!


挿絵(By みてみん)

秋の桜子さまよりいただきましたー♪

宝物です!


さて。いよいよ年末ですね。

年内にもう1回更新したいので、今回はまだ年末のご挨拶いたしません!(自分を追い込むスタイルw)


皆様お忙しいでしょうが、お風邪などお気をつけてお身体お大切にしてくださいませー。

感想・ブクマ・応援☆いつもとっても感謝しております!



~・~・~・~ 


この度、円さまからレビューをいただきました。

円さま、どうもありがとうございます!


⇒円さまのマイページはこちら

https://mypage.syosetu.com/2042080/

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関連作品 i483018 

楓くんはこじらせ少女に好きと言えない~夏の匂いの物語~

☆FAいただきました!☆
砂臥 環様 作品タイトルファンアート(プラチナ様のメーカー使用)
©️秋の桜子 さま



≡≡≡日常系好きにオススメ!≡≡≡ i463137 
― 新着の感想 ―
[一言] リジーちゃああああああん!!!!!(ブワッ) 今回のお話メッチャエモかった( ˘ω˘ )
[一言] >「…… 俺とのデートが」 シド様が……か、かわいい♡ (←オッサンが言うなw 抹殺←だんだんシドさんがヤンデレを拗らせ中? (;'∀')ww 前世作も好きでしたよ☆彡 奇麗じゃない現…
[一言] ふぉぉ!前世!いやいやそれよりシドさんの 抹殺←www。さすがは微ヤンデレ!かわいい!かわいいよシドさん! 魔力ある世界なので、なんか術行使して炙り出しそう……。この世界に産まれてない事…
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