180. 王女殿下の甘々ハネムーン大作戦はまだ始まったばかりです!?妄想にひたすら悶える、変態悪女でございます!
「きゃあっ……!」
深い広葉樹の森に響くのは、王女殿下ことリーゼロッテ様の少々わざとらしい悲鳴。
「ふっ…… 作戦通り」
悪女らしくほくそ笑むのは、私ことエリザベート・クローディス。
「はい、ここまで確認したら、帰りましょうね」
そんなリジーちゃんを、サッと姫抱っこで強制回収にかかるのは、愛しの旦那様こと、シドさん。
時は7月は16日の朝食後、王女殿下の甘々ハネムーン大作戦(改)・ミッションその1 『長い散歩』 の途中、でございます。
手順 0:下見、手順 1:お誘い、手順 2:腕をがっちりとホールドしての歩行…… を経て、ただいま、手順その 3 即ち 『散歩中にわざと川に落ちる』 を確認したところで、ございます。
この距離からでは、お声だけしか聞こえませんでしたが、どうやら上手く落ちられたようですね!
――― 今は夏とはいえ、高原では水に濡れてしまえば少々、肌寒いはず。
森の奥の神聖な大樹のウロには、ナターシャが先回りして 『いかにも焚き火しやすそうな』 焚き付けセットを置いてくれています。
「きっと 『寒いわ』 とリーゼロッテ様がガタガタなされば、ヘルムフリート様は焚き火をおこして、お洋服を交換されようとするはずよね」
「そうかもしれませんね」
「それで、ヘルムフリート様のシャツを中途半端に着崩したりされれば、全裸よりもむしろ、お色気倍…… いえ3倍増よね」
「そうですか?」
「そうよ! だって、リーゼロッテ様にはメガパイがあるのよ?
あれをムニムニ押し付けられた挙げ句に、チラ見せさせられて、ソノ気にならない方なんて、いるわけないもの」
「俺は、なりませんけど」
「うそ、絶対なりますって!」
「なりません」
耳元に口を押し当てて、「アルデローサ様がしてくれるなら別ですが」 とボソボソ囁いてくる、イケない旦那様…… 最近覚えた特技は 『甘える』 です。
「ま、それはともかく。そしてリーゼロッテ様、迫る!
『寒いわ…… 抱きしめて』 『では、失礼します』
遠慮がちにそっと抱きしめてくるヘルムフリート様をウルウル上目遣いで悩殺!
『どうして愛してくれないの?』 『いえ、愛しております』 『そうじゃなくて、もっと……っ』
戸惑うヘルムフリート青年にこう、にじり寄り、 『もっとカラダごと愛してほしいの』 『り、リーゼロッテ様……! 』 『ああっ、ヘルムフリート……! 』 だなんてぇ……っ♡」
完璧なプランですねえっ♡
妄想すると、つい身悶えしちゃいますよ、もうっ♡
「…………」
ニマニマしつつクネクネするリジーちゃんを抱っこしたまま、不機嫌そうなお顔になるのは、シドさんです。
「………… 俺、言われたことないですが」
「必要なかったもの…… もしかして、言われたいの?」
「もちろんです。あと、その、パイをムニムニしつつの歩行とやらも……」
むっすり、と言明されるところによれば。
「俺、1回もしてもらってません」
「…… そうだったっけ?」
「そうですよ。なのに、どうして思い付くんですか?」
「んー? お父様におねだりする時にはしてたから。あ、あと、執事さんにも2回くらい!」
まだ、膨らんでない時分でしたけどね。
「…………」
ガックリとうなだれるシドさん。
どうせ俺は何でもホイホイ言うこと聞く下僕ですよ、とか呟いていますが。
いつ誰がホイホイ言うこと聞いてくれたのか、さっぱり、思い出せませんねぇ?
「じゃあ、今からしましょうか?」
頬をペタペタしながら尋ねてみれば、嬉しそうに姫だっこ解除し、そっと降ろしてくださるのでした。
「では、いざ。」
シドさんの腕に、ぎゅうっと取りつきます。ええ、もちろん、武器もきっちりムニムニしておりますとも。
「リーゼロッテ様たちが、ちゃんと焚き火できてるか見に行きましょう!」
「それは、ダメです」
「…………」
本当に、いつ、誰が、ホイホイ言うこと聞いてくださった、というんでしょうねえ!?
◆♡◆♡◆♡
「…… と、そんなこんなで、ここのところシドさんったら、変に甘えてこられるのよ」
「それ、お子様に張り合ってるんじゃないですか?」
「お子様って、お腹の赤ちゃん?」
「さようでございますわ」
早めに別荘に戻り、お茶を飲みつつのお喋り。
ナターシャが、くすくす笑います。
「お腹も目立つようになってきましたし、きっと、リジー様を取られる気がして、お寂しいんでしょう」
「…… 産まれるのを楽しみにしてるものとばかり」
「それとこれとは別のようですよ」
赤子に乳をやってたら 『俺も』 っていう、ちょっと鬱陶しいタイプですわね…… と、やたらキッパリ断定する、ナターシャです。
「それって可愛いんじゃないの?」
「可愛いと思えるのは…… 赤子が産まれるまでですわ」
ふむう。
実感がこもってますねぇ…… ゲルハルトさんが、そういうタイプだったとは意外でしたが。
(これ以上想像すると、次に馬車を馭してもらう時に吹いちゃいそうですね!)
さて、そうこうしているうちに。
「王女殿下とヘルムフリート様がお戻りです」
「あら。では、昼食の支度をお願いね」
「かしこまりました」
ファルカの知らせに、エントランスへ急ぎます。
随分と早いお戻りですが、作戦はどうなったのでしょうか…… まさか。
「お帰りなさいませ、リーゼロッテ様、ヘルムフリート様…… ああっ……」
そこで、リジーちゃんが見たのは、濡れそぼり、水滴をポタポタ垂らす、高貴なおふたりのお姿でした……。
読んでくださり、ありがとうございます!
リジーちゃんが見に行きたいのは、断じて出歯亀ではなく、本気で心配しているからなのですが…… シドさんが他人には良識を見せる人で良かった(笑)
先週先々週と金曜日更新だったのですが、今週は今日水曜日更新。現在は、曜日不定で週1更新というペースです。よろしくお願いしますm(_ _)m
ではー! 年末に向け、忙しくなってきそうです。お風邪などにお気をつけて、ご自愛くださいね。
感想・ブクマ・評価☆ いつもとっても感謝しております!




