179.甘々ハネムーンに向け、王女殿下が一歩前進!?改めて、作戦開始でございます!
「ね、ねぇ…… ラ…… ヘルムフリート?」
「はい、殿下。何でございましょうか」
「この後、ふたりで森に散歩に行かない?」
「はい、殿下。喜んで」
時は7月は16日。
近場の牧場から分けてもらった、新鮮な卵やチーズに焼きたてのパンが香る、朝食の席にて……
王女殿下夫妻の会話に、密かにグッドサインを送る、私ことエリザベート・クローディス。そして。
密かに舌打ちをして 「殿下ヤメロよ」 と口の中だけで宣う、旦那様こと、シドさんです。
グッドサインは、きちんと自分からお誘いできたことへの評価。
(緊張しすぎて 『ラズール』 とか言いかけた模様ですが、それは置いておきましょうっ)
そしてシドの舌打ちは、ヘルムフリート青年がまだ 『殿下』 呼びを続けていることに対して、ですね。
きっと昨日、何らかのアドバイスをしてくださっていたのでしょう…… 蒸し風呂で汗水垂らしながら。
「けど……」
こそこそとシドに耳打ちします。
「 『喜んで』 というのが良い傾向よね?」
「採点が甘過ぎますよ」
「いいのよ、事情が事情ですもの」
「どういうことですか」
「 ひ・み・つ ♡ …… ひあっ!」
ふふっ、と余裕で笑ってみせたところで、耳朶をペロッとされ、思わず声を上げてしまうリジーちゃん。
すると、今度はシドさんが、ふっと余裕の笑みを浮かべます。
「俺に秘密なんて持てると思ってるんですか?」
「じゃあ、ハンスさんが片想いしてた相手、知ってる?」
「ファルカです」
「がぁん……っ! なんで……っ」
リジーちゃんとハンスさんの秘密だと思っていたのにぃっ……!
「そんなもの、お嬢様とハンスがコソコソ話し合ってた後、速攻で吐かせましたよ」
「速攻で……」
「そこで腐った妄想されるの禁止です」
「あら違うわ? 煌々しい、筋肉どうしの交歓試合よ」
とまあ、それはさておき。
王女殿下もヘルムフリート青年も、良い傾向には違いありません。
これまでヘルムフリート青年が過度に遠慮していたのは、王女殿下のお心がご自分に無いと思い込んでおられたから、なのですから。
――― 先ほど聞いたところによれば、ヘルムフリート青年のプロポーズは 「殿下がこの国に留まるための踏み台として、私をお使いください…… 私のことならお気遣いくださいませんように。殿下のお側近くに仕えられぬことが、私にとっては1番の不幸です」 的なものだったそうで。
王女殿下としては、『それなりにはキュンときたからこその承諾』 だったとのことですが、残念ながら、ヘルムフリート青年には伝わっていなかったようです。
加えて、王女殿下ご自身も……
「なんだか、わたくし1人が幸せになるのも、ラズールに申し訳ないような気がして」
という思いが、常にあったそうで……
もちろん、リジーちゃんはキッパリと、申し上げましたとも。
「そんなことは、一切ございませんわ!」
「そうかしら……」
「ラズール様が口説いた人数と陥とした人数をそれぞれ、考えてご覧なさいませ。どう見ても、独身人生を楽しく気ままに謳歌しておられますわ?」
「でも、ラズールは他人に、悩みや弱みを見せない人だから…… もしかして胸中は」
「そんなこと、知ったことではございませんっ!」
もしかしたら、リーゼロッテ様もお気づきなのかもしれません。
ラズール青年の永遠の女性が、ただひとり、ということに。
…… でも。
ここは、心を鬼にして、ビシバシと語っちゃいますよ!
「もし、リーゼロッテ様のことがずっとお好きなんでしたら、傷心のまま出家でもなされば宜しかったんですわ!
ならば、リーゼロッテ様のお気遣いも理解できますけれど……
ラズール様の場合は、よその女性に甘えて比較して、挙げ句に 『やっぱり彼女じゃない』 などという理由で1回なされてハイ、サヨナラ。かつエロ小説のネタにするような、外道なことを繰り返しておられるのですよ!?」
改めて説明してみれば、ラズール青年ったら、女性たちに対して、とっても失礼な方なのです…… 腐れ外道は、幸せになれなくて当然。
…… と、言ってしまえば、王女殿下がまた気に病まれそうですので。
「そんなラズール様にとっては、今が一番お幸せでなくて、どうなさるのでしょう?」
「……そうね」
「もし万一、ラズール様がまだリーゼロッテ様のことを想ってらしても、きっと、『もういい』 とおっしゃる筈ですわ」
「そうかしら」
「そうですとも……!」
ええ。実際は、明らかに、違いますけどね。
今でも、モヤモヤした思い残しやら思いの丈やら理想の女性像やらをエロ小説にぶつけ、王女殿下の花を慈しみ…… 可哀想な程に痛々しい、フラれ男でいらっしゃいますけどね?
そんなこと、リーゼロッテ様のお幸せの前には、我慢するがいいのですよ……っ!
「ともかくも、ヘルムフリート様みたいな面倒な方を、お好きだと認識されたからには!
放蕩者のことなど、さて置いといて、全力でかからねばなりませんわっ」
かくして始まった 『王女殿下の甘々ハネムーン大作戦・改』 、ひとまずのミッションが 『長い散歩』 なのでございます。
こちらのミッションの内容は、以下の通り。
手順 0: 下見 ⇒ たまたま、昨日のうちにシドさんが、ヘルムフリート青年を案内してくださったのでOK!
手順 1: お誘い ⇒ たった今、リーゼロッテ様が頑張られたところですね!
で、その次は。
手順 2: 森の中で、腕を組んで歩く。
で、ございます。
――― 「腕なら組んだこと、あるわよ?」
「舞踏会のエスコート時のような組み方では、ないのでございます!」
怪訝そうなお顔の王女殿下には、実演つきで力説して差し上げましたとも。
「よく、幼い子が親にしてるように、こう、両腕で相手の方の腕に抱きつく感じで…… 」
「胸が当たって、双方が歩きにくいわ?」
「そこがイイのでございます! 折角の武器は、最大限に利用しなければなりません」
「そうね…… 」
曖昧な表情でうなずくリーゼロッテ様…… ああん、もう。
本当にヘルムフリート様のお腕に、しっかりムニムニおできになるのか…… とっても、心配ですねぇ!
これは、やはり、見に行かねば……っ。
「後で、わたくしたちも、少しだけ、森をお散歩しましょう?」
こっそりシドさんをお誘いしてみる、リジーちゃんなのでした。
読んでくださり、ありがとうございます。
先週に引き続き今週も、なんとか金曜日中に更新できました……!
いや、子供の学校行事が重なる時期って、こんなにも時間がなくなるものなのですね…… 世のお母さんお父さん方、まじにお疲れ様ですm(_ _)m
年末もすぐそこ、お忙しいでしょうが、なるべくお身体お大切にして、お風邪など召されませんようにお気をつけてくださいねー!
ではまたーーー!




