176. 目指せ王女殿下の甘々新婚生活!目的のために手段は選びません、のです!?
覗いてくださり、ありがとうございます。
前半はシドさんサイドです。
「だから、神聖視しすぎです」
「当然でしょう、王女殿下ですよ」
「いや、王女殿下とて人の子でしょう」
「それは、いくらシドさんでも不敬すぎます!」
殿下は女神と言っても過言ではないほどに高貴なお方ですよ、と真面目な顔で諭してくるヘルムフリートに、シドが思うことはただひとつ。
何で結婚したんだコイツ。
である。
時は7月は15日の夕刻、所は別荘の蒸し風呂。
もうもうとしていた湯気も薄れがちになり、蜜雪もすっかり溶けるほどに議論したが、何ひとつとして納得してはもらえなかった。
最初に "ネーニア・リィラティヌス" の通りにしている、と言っていたのでさえ、男の要らぬ見栄であり、実態は。
…… 畏れ多くてイロイロできないとか、同じ理由でキスも当然軽いやつ止まりだとか、そもそも閨で手袋をしているとか、プライベートな場でさえ 『殿下』 呼ばわりとか。
そのいちいちが、『仲は良いはずなのに何となくよそよそしい ⇒ 何か怒ってるの?』 という結果に繋がっていることなど、明白であるというのに。
いくら説明しても、 「殿下は高貴なお方ですから当然です」 としか返ってこないのには、ほとほと疲れを覚える。後で妻に慰めてもらわなければ、自分も納得できそうにない。
『主には忠誠心を尽くし、無私無欲にて仕えるべし』
そして貴婦人には精神的恋愛で接せよ。
どこかしら嘘臭いルーナ王国の騎士道精神…… それが骨の髄まで染み込んだ男も存在することを、ここにきてシドは初めて知ったのだった。
◆♡◆♡◆♡
夕闇が浸しはじめていた居間を、暖炉の火がほのぼのと照らします。
「えええっ、上に?」
「あら、既にご存知かと思っておりましたのに! 以前、女性からの攻めをご提案くださったでしょう?」
「それとこれとはっ……」
真剣な顔で議論を重ねる、王女殿下ことリーゼロッテ様。と、私ことエリザベート。
ただいま、高原の夕風と蜜雪で冷えた身体を温めるため、暖炉の前で1つの毛布にくるまって顔を寄せ合い、お喋り中でございます。
そういえば子どもの頃、シドや両親ともよくいたしまたね……。しみじみ。
と、それはさておき。
「だだだだって、あの時は、もしリジーちゃんが受け続けで腹立つなら攻めてみては、ってことで…… わたくしがするのは、そそその、別っていうか!」
暖炉の炎のせいか、それとも羞恥のせいか、ほの赤く染まる王女殿下のお顔…… うぅぅんっっ……!
真性の変態だとずっと信じていたのに、意外と奥手さんだったとか、ギャップ萌過ぎますよ……っ!
「自分から上に乗って、その、アレをアレだなんて、そんな……っ」
「大丈夫ですわ。やってみれば意外とできるものですわ!」
「そそそそ、そういうものかしら?」
「頃合いを見て 『少し疲れましたわ』 とでも甘えれば、いくらヘルムフリート様でも、もはや手袋を脱ぎ捨てられるはずですっ」
握りこぶしで力説します。
といいますのも。
リーゼロッテ様のお悩みがわかってから、ふたりでアレコレと考えてみたのですが……
結婚しておきながらそこまで潔癖、ということは、きっと。
ヘルムフリート青年はなまなかな誘惑 (たとえばセクシー下着とか、唐突な緩い拘束プレイとか、ガーターベルトとか) には動じないでしょう。
そして、この推測から導き出せる当然の帰結 とは、これすなわち。
「まずは、攻めて攻めて攻めて攻めて攻め尽くして鉄壁要塞を破壊してしまいしょう!」
…… と、こういうことなので、ございます。
「夫婦間は百の話し合いよりも1回の本番の方が確実に有効でございますとも! こうして欲しい・あれはイヤと申しますようなことは、とりあえず、一山も二山も越えてから、ですわ」
「それは…… 言えてるかもね」
深くうなずいた後、はぁぁぁっ、と悩ましげなタメイキをつかれるリーゼロッテ様…… 王女殿下をこんな目に遭わせるとは、ヘルムフリート青年ったら、まったくもう…… なのですよっ!
「けど、ヘルムフリートの方が力が強いし…… もし逃げられたら、押し倒せないわ?」
「両手をベッドに縛りつけてしまいましょう」
「縛って……!」
「ついでに異議を唱えられないように、猿ぐつわも噛ませてしまいましょう」
「リジーちゃん……?」
「ヘルムフリート様のワインには睡眠薬を軽く盛りますわ。もしお望みでしたら、媚薬も」
「…… いつも、シドさんとそんなプレイを…… ?」
「それが、ですね」
今度はリジーちゃんがタメイキを吐く、番です。
「"美しき鉱物学者と社長兄弟" に新しい要素を取り入れたくて…… ぜひ縛らせて、と何度もお願いしてるのですけれど、シドさんったら、『絶対ダメです』 と申しますのよ」
「まぁ……! なら、任せてちょうだい?」
リーゼロッテ様のお顔に、やっと明るい表情が戻ります。
そう、王女殿下は下々のためなら、フットワーク超絶軽く動かれるお方!
「絶対に、とっても詳しくレポートして差し上げるわ」
「ありがとうございます……!」
当然よ、とぎゅっと抱きしめてくださるリーゼロッテ様。ご立派なお胸がむにむにと当たります。
ヘルムフリート青年にも、最初から妙に遠慮なさらずにこうしていれば…… あんなノーブル坊やなどイチコロでしたでしょうに……っ。
「睡眠薬は軽め、媚薬はマシマシでお願いね」
「マシマシで? いきなり大丈夫でしょうか?」
すごいことになりそうな予感がしますが。
「うん、頑張るからっ! あと、猿ぐつわはけっこうよ」
「……大丈夫でしょうか?」
「ええ。だって……」
アナスタシア様みたいなキスができないじゃない、とモジモジしながらおっしゃる、とってもお可愛らしいリーゼロッテ様、なのでした。
読んでくださり、ありがとうございます!
リーゼロッテ様の美少年ハーレムは、どうやらギリ健全だった模様です。少なくとも実戦には全く役立ってなかったことが判明w
作者としては少々ガッカリですが (怪しいこととか危ないこととかしててほしかった) 、じゃなければ、リジーちゃんの視姦萌え作品程度で悶えるわけありませんよね……
ではー!
朝晩めちゃくちゃ寒いので、お風邪などにお気をつけてくださいね。
感想・ブクマ・応援☆、いつもめちゃくちゃ感謝しておりますー!




