166. ひとたび盛られてしまったら、解毒しようがありません!?媚薬の効果に大興奮の、変態悪女でございます!
さて、急にわいて出た、アリメンティス家の使用人服姿版・旦那さまこと、シドさんによると。
ルーナ王国の南部、ポルトメリーで作られる媚薬は 『少量のダチュラとマンドラゴラ、数種の果物と種子、古酒などを、各家庭にそれぞれ伝わる呪いで仕上げた』 ものだそうで、要は。
「複雑かつ多様すぎて、解毒剤はありません」 ということだそうなのです。
……って、シドさん。
今、「対処法はある」 とおっしゃったその舌の根も乾きませんうちに、何をしれしれと……
と、ジト目を旦那さまに向ける、私ことエリザベート・クローディス。
そして、「解毒剤がない…… まぁ、シドさんがいるなら、僕が万一バリケードを突き破っても安心か」 と、それなりにホッとしているらしい、アリメンティス公爵家ご子息こと、ユーベル先生……
現在、実の両親から媚薬を盛られて果てしなくムラムラ中でいらっしゃいます。
「さようでございますね」
扉の向こうにうなずいてみせる、シドさん。
「そうなった場合には、お嬢様の方の無事だけはお約束できますが」
「それで、じゅうぶんだよ」
……と、そんなやりとりが、急にパタッと静かになった、6月は10日の真夜中。
「……やっと、睡眠薬が効いたようです」
扉の外の気配を伺ったシドさんが、ボソリ、と言いました。
「そんなものを盛っておられたの?」
「ワインに混ぜました…… 一晩寝てしまえば、大抵の媚薬は効果が薄れますから」
……実感のこもった、お言葉ですこと。
と、ツッコミ入れる間もなく。
ふわり、と身体が浮き上がります。
「帰りましょう。おそらく今、館の者はほぼ全員眠っているはずですから」
……シドさんによる、姫抱っこ強制回収スタイルですね!
「待って、まだ、公爵様ご夫妻に御挨拶していないわ」
「……こんな目に遭わされて、何を悠長におっしゃってるんですか。とっととズラかりますよ」
「それは失礼でしょう?」
はぁぁぁ、と大袈裟に、シドさんがタメイキをつきます。
「こっちだって、余程、失礼なことをされてるんですが」
「だとしても。何事も無かったことにして差し上げて、ニッコリきれいにお暇し、後に禍根を残さないのが、悪女というものですわ!」
そう、敵の弱味というのは、ケンカしていて握れるものではないのです。
『あなた方の企みは知っていてよ。けど、秘密にしておいて差し上げるわ! おーほっほっほっほ!』 と、恩を押し売りしてこそ、次に活かせるというもの。
……黙って去るだなんて、生温いことは、いたしません! なのです。
「ふっ…… このわたくしをナメたこと、後でたっぷり反省なされば宜しいのよ!」
「……そんな悠長に構えて、また危ない目に遭ったら、どうするんですか」
「あら、大丈夫よ。シドさんがいて下さるんですもの」
きゅーっ、と首に抱きついて、頬にキスして差し上げます。
……シドさんとも、ケンカ中といえばケンカ中ですけど…… いらっしゃると、悪女が捗るのもまた事実、ですねぇ……っ!
「……騙されませんよ」
「けれど、付き合ってくださるでしょう?」
「………………もう、どこにも行かないと、約束されますか?」
「 し な い わ ? 」
さらりと返せば、じとーっ、と恨めしそうな眼差しが、こちらに注がれます。
……やっぱり、可愛いですねぇっ!
久々に、なんだかムラムラきちゃう気が……っ!
――― イランイランとサンダルウッドの香り効果でしょうか。
もう少し、真面目にきちんと話し合うつもりでいましたのに…… リジーちゃん、ガマンできそうにありません……!
うん、こんな時は。
キューティクル黒髪ナデナデ&お口チュッチュで決まり、なのです。
「約束はしませんけど…… シドさん大好き。すごく好き。愛してる」
「……どこぞのエロ作家の影響ですか?」
「だとしたら、妬いてくださいます?」
「……俺にこれ以上、妬けとか」
おお、シドさんの肩の力が、少し緩みましたね!
リジーちゃんを抱っこしたまま、ベッドに腰を下ろす、旦那さま。
「鬼ですか、アルデローサ様」
「うん♡ そうなの♡」
えいやっ、と姿勢を変えて、お膝の上にまたがり、両手で頭を包み込んで、額からまぶた、頬、鼻……と順番に口づけていきます。
「わたくしは、誰から何と言われようとも、勝手にさせていただきますから♡ せいぜい、心配してくださいませね♡」
「……語尾を可愛くした程度で、誤魔化せると思わないでください」
「なら、シドさんだって♡」
「何がですか」
「ご自分の意見を通すために♡ 世間の常識やら、両親やらを使うのは♡ やめてくださらないと♡」
もういちど、心を込めてお口にチュー、なのです。が。
……久々のせいか、止まりません、ねぇ……っ! ……これは、失敗した、かも。
なんとなれば、旦那さまの返礼が、思いの外、熱心なものでございまして…… どうにも、シチュエーションを間違えた感が、いたします。
最後まで、『妻の主張』 だけは、きっちりと、言い切りたいのに……んっ……
「んんっ…… ずるい、のです、わ……っ♡」
「……それでしたら、俺の言うことも、半分は聞いていただかないと……」
「ぁん……っ、あちこち、触りながら、おっしゃらないで……」
「お嬢様だって」
「ん…… わたくしは…… あ…… いいのよ」
やはり、ダメです。
このままでは、明らかな劣勢です。
シドさんは 『誤魔化さないで』 とかおっしゃってますが、同じ言葉を返して差し上げたいのです……っ!
とにかく、スキンシップごときで何とかなる、などと、思わせてはなりません!
「ぁん…… とにかく、わたくしの幸せが…… んんっ…… いちばん、ですからね?」
そうです。
これまでいろいろモヤモヤしていたのは、ここでリジーちゃんが、ガラにもなく遠慮しちゃったせいに違いありません!
そもそもが、いくら、良かれと思ってしてくれてることであっても、それでリジーちゃんが幸せじゃないなら、そこには何らかの欠陥があるはず。
……そして、その欠陥を、遠慮会釈なくビシバシと指摘してこそ、悪女というものっ!
もう、負けませんとも!
……と。
シドさんの手が、ぴたり、と止まりました。
「……いつでも、そうしていますよ」
「そうね…… そのつもりでいらっしゃることは、存じておりますわ」
それはね。考えるまでもなく、リジーちゃん、知っていますよ。
いつもいつも、大事にしてもらって、こうして、何かあればすぐに助けにきてくれて。
「けれど、たぶん、どんなに相手のことを想いあっていても、ずれることって、あるんじゃないかしら…… お互いに」
「……ずっと、アルデローサ様。あなたの幸せは、俺の幸せだと思ってきたんです」
シドさんの目から、涙がひとつぶ、こぼれました。
「……なのに、どうして、今になって違うのかが、わからない。どうしたら、元に戻れるのか、わからないんです」
……どうやら、シドさんはシドさんなりに、傷ついて、悩んでおられた様子。
……リジーちゃん、ちっとも気付きませんでしたよ。てへ。
「たぶん、ズレるのが、不幸なのではないんだと、思うの」
腕を回して、シドさんの綺麗な髪をゆっくりと撫でます。
「ズレがあるって、わからないのが、不幸なのではないかしら」
――― 親子も、夫婦も。
どんなに近くても、違う人間なのですから、同じでない部分があるのは、当たり前ではないでしょうか。
「きっと、ぴったり一致しなくては、って思うから、不幸になるのよ」
うん、これですよ……!
ついに、答え出しちゃいましたねっ……!
――― 一瞬、テンション高くなるリジーちゃんでした。が。
「……俺は、ずっと幸せでしたよ」
「…………!」
思わぬ告白に、絶句しちゃいます。
……シドさんったら、なんって可愛さなんでしょうか、もうっ!
はあうううう…… ほだされそうぅっ!
いやいやいや。
ここまで来て、中途半端に終わらせてはなりません。
たとえ断ちがたい情であっても、ビシッと断ち切ってみせます……っ!
「じゃあもっと、幸せになれるわ、きっと」
コツン、と額など合わせて、間近から黒い瞳を覗き込んで、みましょうっ!
「だって、ズレてても、好きって、わかるんですもの…… これからのことは、ゆっくり考えましょう?」
「で、俺がゆっくりしてる間に、あなたが思い通りにする手段を考える、というわけですね、アルデローサ様」
……あら。バレて、ましたねぇ……。
ボソボソとツッコんでくるシドさんに 「えへ♡」 と上っ面な笑みで応じ、もう一度、時間をかけてキスなどしてみる、リジーちゃん、なのでした。
読んでくださり、ありがとうございます!
実はこの度、改題いたしましたー!
異世界転生 ⇒ 伯爵令嬢に転生
に変えてみました。
……なんでかっていうと…… 長期連載のマンネリ感(←作者が一番感じてるw)対策です。
何か変えたいんだけど、内容を見直すとか膨大すぎて嫌なんで、手っ取り早くタイトル変更w
……これまで気に入ってくださってた方、申し訳ありません! けどこれからも宜しくお願いいたしますーm(__)m
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