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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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165. 繰り広げられる、扉越しの攻防戦! 思わぬ来訪にドキドキワクワクな、変態悪女でございます!?

「僕も、まだまだ甘かったな」


 扉の向こうで苦々しく笑う、砂糖まみれクリームてんこ盛りのロイヤルヴォイス…… 激甘のウィンナーコーヒーなど、想像してしまいます。


 時は6月(ユーニウス)は10日の夜、所はアリメンティス公爵家の客室にて…… 何が起こっているのか、と申しますと。


「あの親が、実の息子に薬盛る可能性くらい考慮すべきだった……!」


 なんと、アリメンティス公爵ご子息・ラズール青年こと、エロ小説家のユーベル先生は…… なんと。


 公爵夫妻に、媚薬または催淫剤(ムラムラするお薬)を盛られてしまった、と、そういうわけですね!


 しかも先生によれば、なんと今日のルームフレグランスは、イランイランとサンダルウッド…… つまりは、漏れなくソノ気になると言われている香りなのです。

 ――― 道理で、そこはかとなくムズムズすると思いましたよ、もうっ!


「……まぁ、普通は 『自分たちの盛った薬のせいで息子が、妊娠中の人妻を襲った』 なんて醜聞は避けたいものですから……」


「……その程度でコケる家じゃないってことを忘れてたよ……」


 むしろ、妊婦に怪しい薬を盛らなかった良識を誉めるべきか…… などと、扉の向こうでブツブツ言っておられますが。

 ……やはり、いかなユーベル先生といえども、親に一服盛られたショックは大きいことでしょう……。


 励まそうと、なるべく明るく 「ご安心くださいませ!」 と言い切ってみる、リジーちゃんです。


「鎧戸は閉めましたし、扉はしっかり、椅子と……しっかり……」


 ど、どうしよう…… リジーちゃんが自力で運べそうなの、椅子しかないぃぃっ!


 これでは鉄壁のバリケードは、築けそうに、ありません。


「な、なんとか鏡台も…… 頑張りますから……」


「済まないね、無理させて…… ウチに女性の使用人がいれば、そっちに行くんだが…… つい、ガマンできなくなってきて……」


 ふぅーっ、と、ユーベル先生の重たいため息。


「珍しいですわね、使用人が男性ばかりだなんて」


「まぁ、予想はつくだろう」


「ええ、まぁ……」


 もともと居たメイドさんたちをユーベル先生が次々と口説いた結果だ、ということくらいなら、大体は。

 敢えて確認する必要も、ない程度には、確信できちゃいますね!

 ……さて、それはともかく。



 ――― ここは、お互いのためにも、しっかりガードをしておかなければ。


 よいせっ、と鏡台を押して動かそうとします…… と、あ、あれれ?


 思ったより、スルスルと動いてくれますねぇ……っ! リジーちゃんったらもしかして、結構、力持ちなんでしょうかっ!?


 これぞまさに 『母は強し』 ってことですね!


 ――― なんてワケでは、まったく無く。


 何やら、こちらの鏡台、リジーちゃんが押さなくても、勝手に動いております。

 よく見れば、手と足が生えていますねぇ……


 んでもってついでに、キューティクルな黒髪が、鏡の裏側で存在を主張してるような。


「しししししシドさんっ!? どうして……っ?」


「…………」


 無言で、せっせと鏡台を扉の前まで運んだ後。

 どうやって首尾よく潜り込んだのか、アリメンティス公爵家の使用人服(お仕着せ)を着た旦那様は、こちらに、突き刺さるようなブリザード目線を向けてくださったのでした。


「ずっと部屋の隅に居たのですが…… まさか、ここまで気がつかれないとは思いませんでしたよ、アルデローサ様」


「…………」


 ふいっ、と目を()らす、リジーちゃんです。


 だって、どう考えても。

 気づかなかったリジーちゃんより、勝手に忍び込んでたシドさんが悪いですよねぇっ!?


 それに、バリケードが完成した今、すべきことは、急にわいて出た旦那さま(シドさん)のお相手などでは、なく ――― メモ帳とペンの準備! なのです……!



「ユーベル先生、まだそこに、おられます?」


「ああ……済まないね……迷惑はかけたくないんだが…… 自室に籠ってると、全てを破壊したくなったり、してね」


 ふむふむ。


 ――― 早速、メモメモ、なのです!


 そう。今、リジーちゃんがせねばならぬこと…… それは。


 取材、において他なりません!


 ――― 実際にお薬を盛られて、しかもガマンしなきゃいけない方を取材できるなんて…… ユーベル先生には申し訳ないけれど、滅多に無い機会ですものねっ♡



「それは、どうしてですの? やはり、怒っておいでですの?」


「……そうだね。それに、ムラムラを紛らわせたい、というのもあるし……」


 普段の激甘ヴォイスに、乗っけられた苦味…… なかなか、素敵です。


「ちなみに、今のわたくしの声などは、どう聞こえまして?」


「………………そこに、旦那さん居るんだろ?」


「ええ」


「なら、言わない方が良いかな」


 ほうほうほう。

 ――― 夫の前では言えないような、ご感想なのですね。


「絶対コロス」

 シドがぼそり、と呟きましたが、放っておいて、取材を続行いたしましょう。


「それで、わたくしの服を脱いだ姿なども、妄想しておられますの?」


「いや……どっちかといえば、君の脱いだ姿がロティーナちゃんのソレであるような幻妄に襲われているよ…… 違うのは分かっているんだが……」


「なるほど」


 ロティーナちゃんは、小説 "ネーニア・リィラティヌス" のヒロインにして、ユーベル先生の理想の女性(ウェヌス)、永遠の女神(セレナ)です。


 もともとが、お子様っぽいリジーちゃんとは雲泥の差があるお方なのに…… そんな幻妄で惑わしてくるなんて。


 アリメンティス家の秘伝のお薬、半端ないですねぇ……っ!


「いいですか、ラズール様。お聞きください」


 シドが扉に向かって、めちゃくちゃ嫌そうにユーベル先生の本名を吐き出しています。


「興奮、抑制の欠如、幻覚…… その媚薬はおそらく、ポルトメリー産のものでしょう」


「よく分かったね」


「……妻と試したことがあるので」


 えええ? と首をかしげるリジーちゃんに、「結婚式のお祝いで貰ったアレですよ」 とボソボソと説明するシドさん。


「ん? でもシドさん、幻覚とか見てなかったような……?」


「俺にとっては、あなたが至高の理想そのものですから。一服盛られて踊らされてる、どこかのスズメ蜂とは違います」


 ユーベル先生に聞こえるように、小っ恥ずかしい台詞の一語一語まで、ハッキリと口にしてくださってます。

 ……つまりは、ユーベル先生に  『引っ込んでろ』 とおっしゃりたいのでしょうね、シドさんったら。


 ――― でも、それなら、リジーちゃんにも、申し上げたいことが、ございます!


「あの媚薬ですの? それでしたら……」


 当時の旦那様を思い出すと、ユーベル先生の方をフォローもしたくなる、というもの。


「あれでここまで落ち着いているだなんて、ユーベル先生ったら、意外と自制心がお有りだわ」


 シドがジロリ、とブリザードな視線を投げてきますが、だって本当ですもの。


 扉の向こうからは 「ダテにナンパで鍛えてないよ」 という自慢が聞こえてきます。


 ふむ。ナンパの成功率は自制心に関係するのでしょうか…… これもついでに、メモしておきましょう。


 それはさておき。


「……で。そこまで知っているからには、対処法もあるんだろう?」


 当然の如くに他人任せなユーベル先生の問いに、シドは短く 「はい」 と答えたのでした。

読んでくださり、ありがとうございます!

前回の更新から2週間あいてしまいまして、申し訳ないです m(_ _)m

実は…… リジーちゃんとシドさん出演のコラボ小説を、完結させておりました。

コラボのお相手は秋の桜子さまです。

桜子さま、どうもありがとうございます!


さて、気になる作品はこちらです。じゃん!


⇒『新妻達がリボン手に持ち迫る夜。〜令嬢たちは誠実な夫に溺愛されている。~ 』

https://ncode.syosetu.com/n7291gj/



シドさん、リジーちゃん、ナターシャさんが、別荘でお客様 (異国の王太子夫妻とお付きの令嬢夫妻) を迎えます。

時期はシドさん・リジーちゃんが新婚3ヵ月頃の夏…… 3組の新婚さんのキャッキャウフフなやり取りをぜひ、お楽しみください!


(ちなみに、砂礫は普段から、「シドさんはノーマルの皮をかぶったヤンデレ」 と主張しておるのですが、そのシドさんのマイルドヤンデレぶりが爆発している貴重な資料とも、なっておりますw)



ではー! 感想・ブクマ・応援☆、いつもとっても感謝しております!

暑くなって参りましたので、熱中症や夏負けにもお気をつけくださいー!

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関連作品 i483018 

楓くんはこじらせ少女に好きと言えない~夏の匂いの物語~

☆FAいただきました!☆
砂臥 環様 作品タイトルファンアート(プラチナ様のメーカー使用)
©️秋の桜子 さま



≡≡≡日常系好きにオススメ!≡≡≡ i463137 
― 新着の感想 ―
[一言] お忙しい中ありがとうございました。 Σ(゜∀゜ノ)ノキャーシドさんったら、忍び込んでいたのですか!(≧∇≦)b、流石です。
[一言] ヤンデレキターーー!!!!www でも最近ノーマルの皮をかぶりきれてなくない?( ˘ω˘ )
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