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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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153/201

153. まだまだ続く、男同士のハダカの付き合い! 入りすぎると危険な蒸し風呂、なのです!?

引き続きヨハネスさん目線です。

 さて時は5月(マイユス)14日の夕方早め。

 ルーナ王国は街角の公衆浴場では、特に珍しくもない光景が繰り広げられていた。


 すなわち、蒸し風呂の片隅で汗を流しつつ話し込む3人の男たち。

 周囲に邪魔にならぬよう、声は完璧に密やかに秘められている。


(取りあえずは、良かった……)


 ムキマッチョの編集長ことジグムント・バルシュミーデが現れたことで、連れの客人にちょっかいかける連中もいなくなり、内心でほっと安堵の息をつく、ルーナ王国イチの科学者ことヨハネス・ヴァット。


 このムキマッチョに、客人こと妻の友人の夫ことシド=アーロン・クローディスとの仲を誤認された時には 『もう詰んだ』 と思ったものだが……

 シドの冷酷なまでの無視により、「あ、違いますよね、当然……スミマセン」 とスゴスゴ謝罪してからは、とんでもなく助かっているのである。


 ――― たとえ彼らが周囲から見たら、 『タイプの違う三つ巴』 的な妄想を掻き立てるとしても。

 そんなことは、この3人のうち誰1人として、知ったこっちゃない。


 それよりも問題は。


「……心配しすぎと思われるのは分かってますし、彼女がそう思ってるのも明白なんですが……」


 ボソボソとムキマッチョに訴える、初めての妻の妊娠で戸惑いまくってる哀れな男からの相談事、である。


 やっぱり居合わせてくれて良かった、とヨハネスは再び、内心でムキマッチョに感謝した。自分ではとても、そんな相談には乗れないだろう。


 シドの主張はボソボソと続く。


「人生なんて何が起こるか分からないんですよ。失う時のことを考えたら、どんなに心配してもしすぎということはないと思うんです……」


 昔の自分なら、と考えるヨハネス。

 ――― これは 「それは確率的に考えるべきでしょう。我々には分からないのですから、心配なことは助産師に尋ねた上でその意見に従うべきです」 とでも答えるべき案件だ。


 しかし、ダーナと結婚して約2年、彼はしばしば思うようになってしまった。


 どうやら人の心というのは、どんなに割り切ろうとしても余る部分が出てきてしまうのだ…… そして、余ったその部分が、困りもすれば愛しくもあるのだ、と。


(もっとも、だからと言って、対処の仕方が分かるかというものではないが……)


 さて、ムキマッチョがどう答えるのか、と見ると……


「まぁ元気出してくださいよ、シドさん!」 とバシバシと背中を叩いている。


 ……なにげに接触が多いな、と思うヨハネスである。……


「確かに先には何が起こるか分かりませんよ。全てを失ってしまうことも、それはあるでしょう」


 ジグムントの言に、シドはうつむく。


「俺は…… 彼女と会ったから、生きてこれたんです……もし、失うことになったら……」


 その声は、わずかに震えていた。……重い。人の感情に疎いヨハネスにすら分かるほど、重い。


(ふ、普通の人は、こんな重い会話を風呂の中でしたりするものなのか?)


 考えるヨハネスだったが、彼が話すのは主に奥さん(ダーナ)と仕事相手だけであり、日常会話には疎いのでよく分からないのが事実である。


 代わりに内心で、三度ジグムントに感謝するヨハネスであった。


 そしてジグムントはというと……


「でもですねー、シドさん!」 あくまで、明るい人である。


 眼鏡をクイッと押さえようとして、今その眼鏡を外してることに気づき、その指で頭を掻く。


「どんなに心配しても失ってしまうこともあれば、何も考えずに幸せを夢見て過ごしてその通りになることだって、あるんですよ」


「……まぁ、それはそうですが……」


「でしょう? 先のことなんて、誰も分からないんですから!」


 頭を掻いた指が、シドの鼻先に戻ってきて、ちっちっ、と振られた。


「つまり、心配しても心配しなくても結果はほぼ同じ! 必要なのは用心であって心配じゃないですよ!

 心配なんて、するだけ損、損♪」


 なんだこれは、とヨハネスは思った。


(思いっきり割りきってるではないか……!)


 きっと奥さん(ダーナ)なら、こう応えるに違いない…… 『あなたが人の気持ちを分からない方ということは、もう存じておりますわ』


 しかし、シドの反応は違った。


「確かにそうですね」 と言ったきり、考え込んでしまったのだ。


「…………」 「…………」 「…………」


 気まずい沈黙をカバーしようと、ジグムントがヨハネスに話しかける。


「もしかして奥様、ペーパークラフトが得意だったりされます?」


「ええ……確かそんなのが、趣味のようですね……」


「ああやっぱり!」 


 嬉しそうなムキマッチョ。


「シー先…… いや、リジーさんが、この前嬉しそうに話していたんですよ。近々、お友達の家に泊まるって」


「え……?」 シドが、顔を上げた。


「……ジグムントさんには話してたんですか?」


「には、って!」 またしてもバシバシと、シドの肩が叩かれる。


「当然、シドさんも聞いていたでしょう? 仲良いですもんね! 羨ましいくらい!」


「……いえ……」 シドは再び黙りこくった後、真剣な顔で呟いた。


「……やはり……筋肉の差でしょうか……」


「…………」 「…………」 「…………」


 よくは分からないが、それは絶対違う気がする…… と思う、ヨハネスである。


 再び沈黙が3人の間を支配した後、ジグムントはゆっくりと尋ねた。


「もしかして……ずっと、そんなことを……?」


「はい…… だって、彼女が俺よりも貴方に懐く理由なんて、筋肉以外にないでしょう」


 真面目な表情で繰り出される失礼な台詞にも、ニコヤカにうなずくジグムント。


「まぁ、そうかもしれませんね!」


「…………」

 そのスルースキルを分けてほしい、と切実に考えるヨハネス。

 きっとそれだけで、奥さん(ダーナ)との、なんとも形容しがたい微妙なすれ違いは、ぐっと減るに違いない。


「けれどですね……」 ジグムントの口調は、明るさを失わないままだ。


「リジーさんが正直でなくなったとしたら、何か理由があるはずでしょう?」


「それは……」 うなだれる、シド。


「俺が口うるさいからだとは思うのですが……大事な時期ではあるし、少しくらいは」


 言いかけた唇を、しっ、と片手で制するムキマッチョ。


「それは、リジーさんを信用してないということですか?」


「それとこれとは別問題です」


「心配なのは分かりますが、リジーさんは赤ちゃんではありません。

 それに、誰よりもきちんと、お腹のお子さんのことも考えられる人だと思いますよ。あの原稿への執念を見ても!」


「あれは原稿だけです。日頃は、とてもそうは……」 言いかけて、シドがハタ、と口をつぐむ。


 どうやら、何か気づいたらしい。


 またしてもしばらく黙り込んだ後、「もう少し考えてみます」 と立ち上がった。


「そうそう、それがいいですよー」


 のんびりとうなずくジグムントに 「では」 と挨拶しかけて、ふと思い付いたように、シドが尋ねた。


「……もし、サラさんが妊娠されたら、ジグムントさんなら、どうされますか?」


「そうですねぇ……」 ムキマッチョの瞳が、急にとろん、と(とろ)ける。


「……サラが安心して赤ちゃんと過ごせるように、いつもガードしてあげたいなぁ…… お手伝いを雇って、家事も絶対させないようにして、のんびり…… ああでも、サラは嫌がるかも……」


 ひとしきりブツブツと妄想を繰り広げた後、彼はニッコリと白い歯を光らせたのだった。


「どっちにしろ、サラが幸せなのが一番ですよね!」


読んでくださり、ありがとうございます!

ヨハネスさんにバシッとシドさんを説得してもらう予定が…… 流れ流れてフニャフニャに……

やはり蒸し風呂は入りすぎると危険ですね(微笑)


でーはー!

ストレスたまりやすいご時世ですので、できるだけ発散させていきましょう!! 

踊るとか歌うとかもイイですよね。

実は書くのもいいんですよ!一説によるとコーヒー飲む○倍のリラックス効果があるそうです。


感想・ブクマ・応援、まことに感謝ですー!

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― 新着の感想 ―
[一言] >そのスルースキルを分けてほしい、と切実に考えるヨハネス。 (∩´∀`)∩~♪ 確かに原稿の上だけの類似とかで、表向きだけとかよくありますよね (;'∀') コーヒーの〇倍もあるのです…
[一言] ジグムントさんイイなあ!ww こんな風に生きたい( ˘ω˘ )
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