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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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148/201

148.純粋な女の子に、変態悪女の甘い誘惑!さぁ、張り切ってソッチの道に引きずり込みましょう!?

 かくしてまたしても少々の時が流れた5月(マイユス)は11日。

 誕生日と結婚記念日を迎えた私ことエリザベート・クローディス、本日も元気に工場の休憩室にて "リジーちゃんcafe" 開店でございます。

 さて、一番のお客さんは……


「リジー様……! できました……!」


 キエルちゃんですね!

 手には、ぎこちないながらも一生懸命さの溢れる文字が並んだ原稿用紙の束。


「ついに完成なのね!」


 そう。これは、キエルちゃんに1ヵ月ほど前に頼んだ 『イケメン魔法王子』 のお話なのです!

 ――― 「私にはお話なんて」 と渋るキエルちゃんを説き伏せて、記念日のプレゼント代わりに書かせてしまったリジーちゃん。

 ヤル気のない初心者に、いきなり〆切設けて原稿50枚も依頼しちゃうなんて…… 相変わらず、悪女です。 ―――


 けれども、真の悪女ぶりを発揮するのはここから。

 まずは前哨戦として……


「お疲れ様! 本当に嬉しいですわ!」


 ショコラティエ "ヴェルベナエ・ドゥルシス" から特別に取り寄せたコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れて、ニッコリとキエルちゃんに差し出すのでした。


 そして。


「はい、ここ過去形、ここも過去形、ついでにこっちも。会話文、言葉遣いがブレてる…… ここ、前後関係が飛んでて分かりにくい、説明入れてくださいね。それから逆にこっちは説明しすぎで話のテンポが悪い。

 ここは重要なところでしょう? ちょっと前にタメを作って目立たせましょうか。……こんな感じね。適当にアレンジして、もっと良い書き方があったらそちらでいいわ。

 綴り間違いはこっちで修正しておきますから、清書してきてくださいな」


 持参された原稿に、矢継ぎ早にチェックを入れていく、リジーちゃんことお色気作家ルーナ・シー。

 気分は、鬼編集長でございます。


 ビシバシとイッちゃいますよっ!


「ひ、ひぇぇぇ……」 アメと鞭、のアメ的に差し出されたチョコレートをお口でモゴモゴさせながら、キエルちゃん、かなり引いているもよう。


「せ、清書……ですか?」


「そうよ」 厳かに宣告します。


「プロたるもの、推敲と清書は必須! ……たとえそれが、精神をガシガシと削ろうとも! 怠っては次の仕事は来ないとお思い!」


 現実の編集長(ジグムント)さんは優しいから、実は少々の誤字脱字綴り間違いはOKなんですけれどもね。この際に、根性を叩き込んでおくのです!


「……え? プロって、何のことですか?」


 チョコレートを急いで呑みこんで尋ねてくるキエルちゃんに、次のチョコレートを勧めます。

 ふふっ、キエルちゃんのお顔、不思議そうですねぇ……っ!

 これからリジーちゃんが言い出すことを聞いて、もっと戸惑うが良いのです……!


「もちろん、わたくしが産休中の代打でしてよ!」


「……ええっ!?」 


 ふっ……驚いてももう遅いのですよ、キエルちゃん……っ!

 これからいよいよ正念場、なのです。


「ねえ……これから話すこと、絶対に秘密にしていてくださいませね?」


 キエルちゃんのお口にチョコレートをキュッと押し込み、小声で念を押せば。


「……」 場の雰囲気に呑まれて、コクリと頷く女の子…… 素直で可愛くて、罪悪感がうずきますねぇっ!


「実は、 "月刊セレナ" の "美しき鉱物学者と社長兄弟" は、わたくしが書いているのよ……!」


「えええええっ!」


「しーっ……!」 再び、チョコレートをキエルちゃんのお口に押し込みつつ、辺りを窺います。


「両親にも内緒な、秘密なのですわ! 大事なお友達のキエルちゃんだからこそ、打ち明けたのよ……?」


「リジー様……! そんな……!」


「あら…… わたくしは、お友達と思っていたのだけれど、キエルちゃんにとっては違ったのかしら……」 ここで、ションボリうつむいてみせます。


 あながち、演技でもありません。だって、だって……。


「それは、しっかり働いて家を支えている貴女(あなた)と、チヤホヤ甘やかされているだけで何の役にも立っていないわたくしとでは、お友達と思っていただけなくても、仕方ないのかもしれませんけど……」


 なにしろリジーちゃん、ギリギリ貴族とはいえ、生まれながらにして苦労知らずの特権階級ですからねぇ…… 一般的には腹立つ、と思われていても……。


 ああ、実際にそれ考えると、本格的に落ち込んじゃいますよ、もう……っ!

 かといって、今の身分を捨てることも到底できない、薄汚い女なのです…… リジーちゃんは……っ!


 と、キエルちゃん。

「……」 真剣な表情でブンブンと首を横に振ってくれています。


「いいえ、そんなことは!」


 嬉しい!

 思わず本気で、キエルちゃんの両手をとっちゃいますよ、もうっ!


「キエルちゃん……!」


「リジーさま……!」


「リジー、でけっこうですわ。お友達ですもの」


「あ、あの……じゃあ……リジーちゃん……?」


 おずおずと呼んでくださるのも、はにかんだ笑顔も、最高ですね!

 キエルちゃん、本当にすごくイイ子……! リジーちゃんには、もったいないくらい……!


「では、そういうワケで、9月(バックス)号からは代打ヨロシク!」


 心を込めたお願いに、またしても 「ひぇっ!」 と息を飲むキエルちゃん。


「そ、そんな…… 世界が違いすぎます……! 私、去年までは読み書きできなかったんですよ!?」


 ここで引かれてなるものか……!

 薄汚くても卑怯でも、"月刊セレナ" の連載には絶対、穴などあけませんことよ……っ。


「そんなの関係ないわ!」 悪女らしく、言い切って差し上げましょうっ。


「あなたには才能がある!」 ついでに、もうちょい誘惑してみましょう。


「ここで、わたくしの手を取り女流作家として、スリルに溢れた道を開くも、才能を埋もれさせ一介の工場従業員としてのみ生涯を終えるも、貴女(あなた)の自由よ、キエルちゃん……? さぁ、どちらを選ぶのかしら……!」


 ちなみにスリルは、『書けない症候群(スランプ)』 との闘いや、『ダメだしの恐怖』、『毎月の〆切』 など各種揃っております。


「……あの……」 キエルちゃんは、黙って次のチョコレートを呑み込んだ後、おずおずと、うなずいてくれました。


「リジーさま…… リジーちゃんが、真っ先に読んで直してくれるなら、なんとか……」


「もちろん、できる限りの協力はさせていただきますわ!」


 よっし!!

 自力で代打ゲットぉぉぉ!

 ――― なにしろ、ジグムントさんは忙しすぎて次の作家を見つける余裕がありませんし、社長に任せるとどんな人を連れてこられるか分かりませんからね! ―――


「ありがとう!」 キエルちゃんの手をぶんぶん振り回して、小躍りですっ!


 ……もともとヤル気の無い子相手に、こちらの地位と若干の友情だけを利用して、ハメてしまうなんて…… 己が悪女ぶりに、痺れちゃいますねぇっ、ふふっ。


 けれども。きっと、キエルちゃんにも、もう分かっているはず、なのです。

 一度味わえば、やめられはず、ありませんよね……?


「お話書くの、楽しいでしょう?」


 満面の笑みで、山盛りのチョコレートを差し出す、リジーちゃんなのでした。

読んで下さりありがとうございます。

学校が今週からボチボチ始まりそう……、って、春休み中やんかぁぁいっ! と叫ぶダメ母ですww

年度末何かとお忙しいでしょうが、ご自愛くださいませー。

感想・ブクマ・評価めちゃくちゃ感謝です!


♡R18スピンオフ 『理系眼鏡男爵夫妻のやり直しハネムーン』 もよろしくお願いしますー♡

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― 新着の感想 ―
[一言] はい、ここ過去形、ここも過去形、ついでにこっちも。会話文、言葉遣いがブレてる…… ここ、前後関係が飛んでて分かりにくい、説明入れてくださいね。それから逆にこっちは説明しすぎで話のテンポが悪い…
[一言] こうしたまた一人、作家沼に堕ちていくのであった……( ˘ω˘ )
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