147.休憩室で盛り上がる、職業乙女たちのお茶会!取材に勤しむ、変態悪女でございます!?
さて、日が変わりまして4月は8日。
「部屋にこもって旦那さまのお顔ばかり拝見するのも飽きましたわ!」 とワガママ放題の、わたくしことエリザベート・クローディス。
(押し問答の挙げ句、結局は小説のネタになってくださらなかった旦那さまがイケないのです!)
本日は久々に旦那さまことシドさんと一緒に、クローディス家の工場に来ております。
"休憩室deリジーちゃんcafe" はこの度も盛況…… 紅茶を片手に焼き菓子をかじりつつ、お喋りに夢中になっている乙女たちの笑い声、華やかですね!
「あたしはオドさんがイイ! イケメン敏腕社長最高!」
「あら、至高はヴォルフさんよ! 少女のような美貌、類い稀なる知性…… す・て・き☆」
「オドさんとヴォルフさまのカップリングとか、萌えますよね♡」
実地で自作の感想を聞けるなんて、作者冥利に尽きますね!
しかし…… 少々ひっかかるのは……
「あの……? 副社長 (兼現場主任) のオットーさんは……?」
思い切って尋ねてみれば、彼女らから返ってきたのは 「ああー」 という、シラッとした目線。
「あんなの、普通ですから」
「え……?」
筋肉の地位、思った以上に低くないですか……!?
「筋肉なんて、男の人にはついていて当然でしょう!?」
「そうそう!」
「別に珍しくはありませんよねー?」
な、なるほど。
「ムダな筋肉など不要! それが上流階級の証です」
「その通り! 王子には筋肉など要りませんからねー!」
な、なるほど……。
「で、でも……」 しかし、どんなに王子志向が強くとも、究極の女子の夢といえば!
「いざという時に守って貰えそうな、頼り甲斐があったり、とか……?」
そう。前世の恋愛ものでは確か、そういうのが人気だったはず! 顔良くて金持ってて血統良くてメチャクチャ強くて (つまり筋肉ついてて) ワタシにだけ優しい……とかいう、超都合の良いヒーローがっ!
「そんなの、騎士や護衛の仕事でしょう?」
「いいよねぇ…… 常に騎士や護衛にガードされる生活……♡」
「憧れますよね♡ 『奥様。なんなりとお言いつけください』 だなんて……言われてみたいですっ!」
「同じ筋肉でも、私は騎士様なら有り、かなぁ♡ ま、一番は王子だけど♡」
ますます盛り上がる乙女たちに、唖然とするリジーちゃん。
(ジグムントさんがこれまで、いまいちモテなかったのは…… こういうワケでしたのね!)
リジーちゃんはこれまで、どちらかといえば庶民派のつもりだったギリギリ貴族令嬢ですが…… ここはまさしく、盲点でしたよ!
従業員の彼女らの憧れが理解できない時点で、大衆小説家として終わっている気が、してきました……。
でも、負けません!
――― "月刊セレナ" の新連載 "美しき鉱物学者と社長兄弟" は、兄社長 (オド) と鉱物学者 (ヴォルフ) との絡みを増やしていきつつ、オットー副社長の良い点をドンドコとアピールすべき、ですね!
そしていつか必ずや、ユーベル先生の 『お行儀良すぎる』 恋愛譚 "アーヴェ・ガランサス・ニヴァリス" を打ち負かして差し上げるのですわ……!
ちなみに "アーヴェ・ガランサス・ニヴァリス" は 『さらばスノードロップ』 という意味の古語です。
恋愛譚と言いつつ、国際関係や陰謀などがリアルで読みごたえがあり、その中でコマとなる運命に抗おうとする王女が…… って、はっ!
ほ、誉めるつもりなんて、毛頭ございませんからね! ―――
それはさておき、今、ここには。
リジーちゃんの優秀な指導とヤル気で、どうにかこうにか文字を覚え読書の喜びに耽るようになった乙女がワンサカといるのですから……
何を差し置いても、取材! でございます。
「では、例えば。ムキムキの筋肉を備えた王子、というのはどうですの?」
「あら、素敵!」 「えー……あたしは、ちょっと……」 「着痩せするタイプなら、イイかも。脱ぐとスゴいんです♡ みたいな♡」
「王子なら、筋肉より、『最強の魔法使い』 とかがイイ♡ そんでもって、オド社長みたいな濃いめのイケメン♡
で 『悪は滅ぶべきだろう?』 なんてサラッとおっしゃりながら、微笑みを浮かべつつ、問答無用で強盗団を火の魔法で焼き払うとか…… そんな人を人とも思わない狂った部分がチラ見えして……」
夢見る瞳で語り始めたのは、キエルちゃんです。
すかさず 「またまたぁ。お子ちゃまね」 と口々に揶揄する女の子たち。
「魔法なんてもう古いって」
「魔法の明かりや魔法加工だって、そのうち精霊たちの力を借りなくてもできるようになる、って言われてるのよ?」
「クローディスなんて、蒸気機関まで導入してるのに!」
ええ、確かに、今のルーナ王国で流行なのは 『科学』 …… 特別な人々しか使えなかった 『魔法』 とは違い、『科学』 は道具さえあれば全ての人が使える点がウケているのです。
冒険譚にしろ、戦記ものにしろ、あらゆる読み物には 『科学の力で無双』 『科学の力で成り上がる』 といったものが溢れています。
『魔法』 が生き残っているのは恋愛もの程度、ですね…… それも先月の "月刊ムーサ" 掲載短編に 「君だけのために作った 『科学の明かり』 だ……」 なんて発言が出ておりましたが。
そんな時代でも。いえ、だからこそ。
王子にさらに魔法を上乗せして、絶対な特別感を出すキエルちゃんの発想は、貴重だと思うのですよね。
「それで? どうなりますの?」
ワクワクと続きを尋ねますと、キエルちゃん、少しびっくりしたもようです。
「え? 考えてませんけど……」
「もったいないわ! 考えましょう!」
もしかしたら、次の "月刊セレナ" の書き手はキエルちゃんかもしれませんものね!
そう。この時、リジーちゃんの脳裏には、ピコーン、とある計画が閃いていたのでした。
読んでくださりありがとうございます!
相変わらずのコロナウイルス騒ぎ……どこまでいくのでしょうか。
家に籠るのもご自愛するのも飽きてきましたが(爆)いつか終焉すると信じて頑張りましょー!
感想・ブクマ・評価まことに感謝です。感想返信少し遅れておりすみません。必ず返信させていただきますーm(_ _)m
♡そうそう、ムーンにて R18スピンオフ 『理系眼鏡男爵夫妻のやり直しハネムーン』 連載中です!
リジーちゃんのお友達ダーナちゃんと、蒸気機関様との、趣味全開いちゃラブですww よろしくお願いします。




