14.変態趣味にも仲間が欲しい15歳の乙女な私。美青年下僕をその道に誘惑します!でも一方では誘惑し難い方も?!
そんなこんなで悪女として転生後14年にして視姦(される側)に目覚め、変態の世界を模索する15歳の秋続行中の、私ことエリザベート。
けれど秋といえばそれだけでないのは、ここルーナ王国も前世と同じなのです。
次第に短くなっていく陽差しの中で、あらゆる生物がその残り少ない命を燃え上がらせる美しい季節……そう、秋といえば芸術ですよね!
というわけで。
この休日、我がクローディス伯爵家のサロンではリジーちゃん発案・デッサン会を開催中っ!
参加者代表は父こと苦み走った美貌を誇る39歳、清純正統派な容姿に色気が加わりますます美しい母、そして、リジーちゃん。天使の皮を被った極悪最凶変態女、でございますっ♡
ちなみに使用人も自由参加……をを!なんと!
侍女は全員、きてますね!?
ナターシャも、もちろんいます!
私の乳母として入った彼女はそのまま侍女になって15年、いつの間にやら34歳。でも年齢バレすると必ず「ウソっ?!」と言われる可愛らしさです。
今もキラキラした瞳で真新しいクロッキー帳を小脇にはさみ、手にはなんと木炭ではなく双眼鏡を握りしめています。頼もしいですね!
こんなにも侍女の参加が多く、かつナターシャの持ち物がなんだかオカシイのは、ひとえにモデルのおかげ。
そう、本日のモデルは天然下僕体質の美青年シドさんなのです!
お気付きの方も多いとは存じますが、このデッサン会、真の目的は『シドを楽しい視姦(される側)ワールドに引き込もう!』なんですよね、くくくっ(悪女的笑)
もちろん両親には芸術的体験ということで納得していただいております。
さて、ではそろそろ始めましょうか。
シドが皆の真ん中に進み出て、無造作に自らのシャツの胸をはだけて脱ぎ捨てます。
それだけで赤面し、くらあっとよろめく侍女数名。まじか。
シド、椅子にどっかり腰を下ろし、感情の見えない表情で斜め上の何かを睨んでいます。
きっと怒っているんでしょうね。
しかしまぁ、両親にまで賛成されてしまっては、逃げ場はございませんことよ?
観念してこっち側にいらっしゃい♪
おーっほっほっほっほ! (高笑)
シドの正面に私と両親が座り、後は皆適当に好きな位置に陣取り、デッサン会スタートとなりました。
ふと父を見れば、片目でシドを眺めつつ片目で紙面を確認し、さっとパースをとっております。全身像のようですね。
パースをとり終わったら大ざっぱに形を決めます。この間わずか3分程度。そして、足元から細かく描き込みはじめました。
描いている間、父の顔は殆ど動かず、目だけが動いています。
なんだか玄人はだしですね!
さすがお父様、なのですっ!
しばらくして母は、と見れば……なかなかこちらも良い仕事なさってます!
主に裏の意味で。
柔らかな天使様のお顔の中で、私と同じアメジストの瞳が真剣に光り、じっとシドに注がれています。
いやもうこれは!
萌萌すること、間違いナシでしょうっ!
妄想したら、ああっ……
リジーちゃんまで身悶えしそうっ!
「お母様、今なにを描いてらっしゃるの?」
わざとシドに聞こえるように問えば、返ってくるのは悪女もうっとりの微笑み。
「お顔を……。こうして見ると、随分と立派になって、ああ、成長したんだなって……」
そうでしょうとも!
なにしろ母は、シドが我が家に来たときから彼のお母さん代わり……って、なんかちょっと方向性違いますね。
「リジーちゃんは何を描いているの?」
「そうですね……」 微笑みと声だけは天使を心掛けつつ、お返事。
もちろん、シドに聞こえるよう、音量調整もばっちりですともっ!
「まず身体全体を覆う触ってみたくなるような繊細な産毛。上半身下から、引き締まったお腹の真ん中のおへそとその隣に並んでる小さなホクロ、そこからつっと目線をあげますと、いつの間に鍛えたんだコイツ悔しいっという感じの厚い胸板。
ちょこっとついた乳首がキュートですね!
それから、胸から肩、首への筋肉のラインと、同じく胸から脇、腕への筋肉のライン。どちらも偉大な彫刻家の作品の如くに流れるような自然さで……」
滔々と述べるのに合わせ、侍女たちの目線がシドの下から上まで舐め回すように動くのが分かります。
ふっ、どうかしら。
これでもまだ『視姦(される側)ワールド』の良さが分からないというなら、逆に誉めて差し上げてよ!
「あの……」
それまで仏頂面でじっとしていたシドが、初めてモゾモゾと動きました。
「少し寒くなってきたんですが」
「あ、そ、そうね。そろそろシャツを着ていいわよ。お開きにしましょう」
母の笑顔が若干引きつっています。どうしたんでしょうね。
「それにしてもリジーちゃん、よく見ているのねぇ。びっくりしたわ」
「あの程度ではまだまだですわ、お母様! いつも詩を教えて下さるときにおっしゃっているではありませんか」
詩といえば、私は父に似てさほどの才能はないようで母には全然かなわないのです。今のところは廚2精神で誤魔化しているだけですね。
で、今、リジーちゃんが都合よく持ち出した母の教え。
それはこんなことなのです。
―――細部までよく見なさい、そしてその内面まで見透すようによく想像なさい。それらを的確に表せる言葉をたくさん覚えなさい―――
ルーナ王国の上流階級がたしなむ詩の場合、詠われる対象は主に事物、自然の景色、人の心の動きなどです。
人の身体そのものに焦点が当てられることはあまりありません。
でもですね。
思うに、母の教えの通りにできるのなら多分、サルウス・プロスペル・エッケバッハ様の片鱗の『へ』くらいには行ってるんじゃないでしょうかっ……
すなわち。
母に視姦作品執筆をお願いすれば素晴らしいものが、できそうっ……ということに、最近気づいてしまったリジーちゃんなのです!
実はその時から、相反する2つの裡なる声にしばしば悩まされておりまして。
たまにヘンな夢まで、みちゃっているのですよ……!
その2つの声とは。
「お母様の視姦作品! きっと素敵に萌萌できるわっ! 絶対に読みたい!」
「だめよリジー! 天使様を変態の世界には引きずりこんではダメ! 変態になったお母様なんてあなた見たいの?!」
これですね。
あまりにも悩み、今日こそはデッサン会の後ででも打ち明けてしまおう、と決意したリジーちゃん。
ちょうど、詩の話も出たし、切り出すのに良いタイミングですねっ……
さぁ、今ですよ!
勇気を振り絞って、お願いしてみましょうっ
「ねぇ、お母様」
「あら、何かしらリジーちゃん?」
「わ、わたくしのためにっ……お、お、おはなっ……」
しかし、結局。
「リジー様。お話中すみませんが、来客ですよ」
最後まで言い切ることのないまま、ナターシャが来客を告げたのでした。
読んでいただきありがとうございます(^^)