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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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139/201

139.まだまだ続く、悪女の戦い! 極悪最凶の変態よりも、普通のお色気作家を目指します!? 

「いいですか。取材というのは飽くまで取材でしょう。

 作品にそのまま垂れ流すのは あ ま り に も 芸 が あ り ま せ ん よ ね」


 6月(ユーニウス)は2日午後、カフェ "アクア・フローリス" の店内。


 大きな花瓶にどっさりと活けられたた薔薇の陰で、愛しの旦那様ことシドさんにコンコンと説教されているのは、もちろん、私ことエリザベート・クローディスでございます。


 目の前には、手つかずのケーキ。

 紅茶も、どんどんと冷めていってしまってますねぇ……。


「……でも、あんなにビリビリにすることないと思います」 恨みを込めて、ボソッと呟いて差し上げましょうっ!


「一生懸命書いた原稿だったのに……」


 肩をがっくりと落とし、ずぅぅぅぅん、と沈み込んでだって差し上げますとも!


 あ、涙出た。

 良いタイミングですこと。



「うっ……」


 ポタッと手の甲を濡らす(しずく)に、シドが息を呑みます。



 ふっ。ザマを見なさいませ!

 相手の弱味を握っているのは、旦那さまの方ばかりではないのですよ!


「わ、わたくし……シドさんが口でリボンをほどいてくださったのが嬉しくて……だから、クライマックスは絶対にそうしようとしか、思えなくなってしまって……」


 ええ。

 これなら、ユーベル先生を打倒できると、確信したのでございます。


「で、でも……俺だって……」


 おおっ、珍しくしどろもどろですね、シドさん!?


 恥ずかしい?

 大丈夫です!

 これ読んで、 「ほほう、シドさんったらそんなことを♡」 と思うのは王女殿下とヘルムフリート青年とユーベル先生だけ!

(ジグムントさんには 『妄想』 と主張しておきました)


 あとの人にはわかりませんて。


 そもそも、己の恥部を曝さずしてなされる創作など、魂籠ってないも(はなは)だしいのです!


 そんなんで、人を深く惹き付けるモノが書けるなど、天才以外はあり得ません!


「わたくし、普通のお色気作家ですし……」


「だから何なんですか」


 よっし、釣れました!


 ここは、ちょっとモジモジとしてみせたりして……(悪女はこんな技も使えるのです)


「シドさん以上の理想など、思い付かないのですわ……っ」


 どうだっ!

 お目めウルウル & ザ・誉め殺し!

 ダブル技を受けてごらんになって!



「う……そんな手には、乗りませんから」


 とか口ではおっしゃりながら、微妙に泳ぐ漆黒の瞳。

 つまり、シドさん、タジタジですね!


 よっし!

 も う ひ と 押 し。


「ね……お願い……。わたくしには、シドさんしか、いないの」


「…………」


 しばしの沈黙の末、ふぅぅぅぅっ、とタメイキをつくシド。


「わかりました」


「ほんと!?」 意外と早く堕ちましたね!


「シドさん大好き!」


 ぱぁぁぁっ、と光が射し込むような笑顔を意識しつつ、ケーキを切り取りお口にあーん、としてあげます。


 もぐもぐと噛み締めたケーキを喉へと落とし込み、紅茶をひとくち飲む、シドさん。


「ただし」


「何かしら?」 


 ちっ……まだ何かあるのでしょうか。


 紅茶をもうひとくち飲んだシドは、厳かにこう、言い放ったのでした。


「本番書くのは、これきりにしてくださいね」




 ★★★★




「というわけで」 


 明けて6月(ユーニウス)は3日。


 徹夜で書き上げた原稿を、"月刊ムーサ" 編集長ことジグムントさんの前に置きつつ、静かに告げるリジーちゃん。


「これが、わたくしの。最初で最後の、渾身の、本番でございますわ」


「……最初で最後……?」


 ぴくっ、と震えるジグムントさん。


「とりあえず、読んでごらんになって」


「では……」


 読み進めるうちに、次第にジグムントさんの鼻息が荒くなってきます。


 うん。シドにビリビリ引き裂かれる前よりも、反応がイイですね!


「ちょっと、すみません! これ!」


 おや。

 まだ途中なのにトイレタイム。


 駆けていくジグムントさんの背中を見送り、ページを確認します。


 あ、これは最初の馬車の中ですね。


 そうです。

 イチから書き直すことで、現実のスゴくなさを徹底的に排除した結果、めくるめく愛欲の旅を表現することができたのです……!


 ジグムントさんの反応からしても、どうやら、 大 成 功 のもよう。


(シドさん、破ってくださってありがとう)


 心の底から、感謝の念を送ります。


 鬼コーチは、シドだったのですねぇ……。


 今後は感謝を込めて、もっともっと、大事にして差し上げましょう。うふ。





 さて、そうして、その後。


「いやぁ、素晴らしいですよ」


 いちいちの濡れ場(シーン)でトイレに行きつつ完読して下さったジグムントさん。


「シー先生ならヤってくださると思っていました!」


 若干、汗ばんだ手でニギニギとリジーちゃんの両手を握りつつ、「紛れもなく名作です!」 と激賞してくださいます。


「いえー、それほどでもありますわ」


 嬉しくなっちゃいますねぇ!

 ついついおカラダも、くねくねしちゃいますよ、もう……っ!


「ところで」 そんなリジーちゃんに、真面目な声音の質問が投げ掛けられました。


「本当に、本番モノはこれだけですか?」


「ええ。これっきりにいたしますわ」


「もったいないですよ……!」


 おおっ!

 ジグムントさんのお目めが、かつてないレベルで真剣ですよ?

 なんと、有難いことでしょうか……っ!



 けれども。

 リジーちゃんには、シドさんの方が大事なのです。

 シドさんが嫌がることは、1度だけしかしないと、決めているのです!


(1度は譲歩していただきますけどね!)



「いいのよ」 軽々と微笑んでみせて、差し上げましょう。


「わたくし元々、普通のお色気作家ですし」


 それに。


「ねぇ、ジグムントさん。

 至高のエロスとは……何かわかって?」


「う……」


 詰まっておられますね。


「ねぇ……? お分かりにならないの?」


 これでわからなければ、担当編集失格でしてよ!?


 そんな意図を込め、似合わない眼鏡の奥のエメラルドグリーンの瞳を覗き込みます。

 次いで、快活な口元、日焼けした首筋、シャツの上からでも分かる筋肉……と順に視線で撫でさすって差し上げて、と。


「さあ、そろそろ、わたくしの気持ち、お分かりになるかしら?」


 さぁ、ファイナルアンサー!

 バシッと答えてくださいませ!


「し、視姦……でしょうか」


 なぜ今さら、頬を赤く染めて恥じらっておられるんでしょうか、ジグムントさんったら。


 まぁ、よろしい。正解ですからね。



「そう。わたくしの戦いは、視姦モノでユーベル先生を打倒するまで、終わらないのですわ!」



 ダンッ、と、靴を脱いだ片足を勢いよく椅子に上げてガーターベルトをちら見せさせ、高らかに宣言する、リジーちゃんなのでした。

読んで下さってありがとうございます!


感想・ブクマ・評価まことに感謝です m(__)m


ではー!

風邪と新型肺炎にお気をつけてくださいね。

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[一言] >そもそも、己の恥部を曝さずしてなされる創作など、魂籠ってないも甚だしいのです! よく言った!!! それにしても、本番を書いてからまた軽エロに回帰してきたリジーちゃんが、砂礫さん自身とリンク…
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