135.リラの香の中を雪が舞うハジメテの朝! イケない旦那さまに翻弄される変態悪女、なのです!?
「ふぅわぁぁぁぁ」
5月は20日の少し寒い朝、家から出たとたんに歓声をあげる、私ことエリザベート・クローディス。
吸い込まれるような青空の下、咲き誇る薄紫のリラの花に、雪がふわふわと舞っています。
リラ冷えの頃に風がマグナ山から雪を運べば、こんな光景が見られるのですね。
©️砂臥 環 さま
「少し歩きましょう。馬車は並木道の外で待たせてありますので」
愛しの旦那さまことシドさんの大きな手をおずおずと取る、リジーちゃん。
ううっ……手をつなぐのが、なんだか、恥ずかしいというか、テれるというか……
本日の未明頃に、この長い指がドコに突っ込まれてたかを思い出して、身悶えしちゃうというか……っ!
ついでに言っちゃうならば、指どころでないモノまでが……っ!
あんな……あんな……昔一緒にお風呂に入ってた頃は、あんなに大きくなかったし、あんなにピン、ともしてなかったのにぃぃぃ!
あれを……あれを……吸い込んじゃうなんて、いったい人体ってどうなってるんでしょうね!?
もう、自分のカラダが信じられない! のでございます……っ!
「どうしたんですか?」
「べ、べつにぃ……っ!」
イケないこととイイことが一度に蘇った衝撃に、いったんつないだ手を離そうとすれば、かえってぐっ、と引き寄せられます。
そのまま指先に落とされる、シドの温かな唇。
……そ、そういえば、このお口は、本日の未明前に……イヤ、もうイイから。
そこで再生しないでくださいリジーちゃんの脳ミソ。
再生されたらもう座り込んじゃうしか、ない。
そんな気分で、ございます。
「シドさん、なにも、こんなところでしなくても……」
「では、別荘でゆっくりと」 クスッ、と、満足そうな笑み。
なんか、腹、立ちますねぇっ
「それとも、馬車の中がイイですか?
4~5時間はありますから、カーテンさえ閉め切ればじっくり三番はできますよ」
「そ、それは……」 確か、ユーベル先生の "ネーニア・リィラティヌス" でもあったシーン!
確か、馬車の揺れでより悦楽が増したロティーナちゃんが、乱れに乱れるのでしたね……っ!
「む、む、無理です……っ!」 言い切って、歩き出します。
なんたってリジーちゃん、変態悪女とはいえ、リアル穴棒アーンは初心者なのですよ!
御者にわざと声を漏れ聞かせて楽しむなんて、そんな高度なことができるわけが、ないのです……っ!
「ねぇ。もっと、新婚夫婦らしい、初々しいイチャイチャから始めて下さいな?
でないと、取材にもならないわ」
「そうですか……」
不服そうにうなずくシド。
なんだか時々、リジーちゃんよりこのひとの方が変態なのかも、という気がしてきます、ねぇ……?
……と、次の瞬間。
シドが屈んだと思ったら、ふわりと足元を掬われました。
お馴染み、姫抱っこ強制回収スタイルですね! ……て、どうして今。
「わたくし、何かしたかしら?」
「初々しくイチャイチャしてほしいとおっしゃいましたので」
「……ここで?」
「馬車まで運んであげますよ、俺の奥様」
そのままゆっくりと、花の下を移動します。
甘いリラの香りと、それよりも近いシドさんの匂いと、温もり。
……言えませんね。今さら。
なんだか恥ずかしいからヤメテ、なんてことはっ!
ここは。
顔を広いお胸から若干そむけ気味にして息を殺し、耐え忍ぶのみ。
「なに恥じらってるんですか」
「別に、全然、ちっとも! 恥じらうわけなんか、ないでしょう!?」
気合いを入れてごまかします。
いくら悪女なリジーちゃんでも、「この度、初めて性差を実感しました」 とは申し上げにくい、ですからね!
そんなこと思ってるのがバレたら、きっとシドがガックリと落ち込むでしょう…… 「今まで何だと思ってたんですか」 とか言って。
せっかくの新婚旅行を、最初から残念な感じにしたくはありません。
……そうなのです!
新 婚 旅 行 !
実は、シドさんとリジーちゃんは、今日から 新 婚 旅 行 なのですよ!
(大事なことだから2度言いました♡)
何でも母が前からシドに、勧めていたらしいのですね。
常に両親や使用人が周囲にいる環境では、なかなか落ち着けないでしょう、という心遣い……さすがはお母様、なのです。
うふふふ。
ちなみにルーナ王国には新婚旅行の習慣はありませんので、クローディス家の別荘で、真面目に取材に励むだけ。
でも! でも……っ!
うふふふ。
旦那さまと、ふ た り き り で、あんなことやこんなことをしながらの10日間……! きゃっ♡
取材も、はかどりそうですねぇっ……!
「シドさん、わたくし、別荘で絶対に "アナスタシア様のとろとろハネムーン" 上げてみせますわ」
馬車に乗せてもらいながら宣言してみます。
「そうですか」 薄い唇の端を吊り上げて、応じるシド。
「頑張ってくださ」 最後まで言い切る前に、微笑んだ形の口をリジーちゃんに近づけてきます。
キスしながらカーテン閉めるとか、ナニを器用なことしてるんでしょうか、このひとは。
「ちょっと、馬車では無理って申し上げたでしょう?」
なるべく優しく振り払いつつ文句を言えば、漆黒の瞳がいたずらっ子のようにキラキラと輝いてこちらを見ます。
「声を上げなければ、いいんですよ」
……そういう問題なの、でしょうか……っ!?
読んでくださいまして有り難うございます。
感想・ブクマ・評価まことに感謝です m(_ _)m
ではー、お風邪にお気をつけてくださいね。




