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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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132/201

132.傷ついた心を癒す甘い魔力! やめられない変態悪女と、なんだかお久しぶりなあのお方、なのでございます!?

 てろりと黒光りのする地肌に鼻を近づければ、芳しい香りが五感を高めます。

 あまりの愛しさに、ペロリペロリとその輝かしい表皮を舐めあげれば、硬い舌触りが徐々に蕩けていくのです。

 耐えきれずに、ぱくんっとその固まりを口いっぱいに頬張ってレロレロと転がし……トロリと溶け出る甘みを、ゴクンっと飲み下します。


「はぁうぅぅぅ……」 思わず漏れ出でる、香り高い吐息。


「す・て・き……っ……さ・い・こ・う……っ…………ん……」


 口の中に残っていた後味を喉の奥へと送り込み、コーヒーをひとくち。


 ふぅぅぅぅ。やっぱり。


 チ ョ コ レ ー ト は 芸 術 で す ね っ !


 ちょろり、と舌先で唇を舐めつつ、次の美女(ターゲット)を品定めする、私ことエリザベート・クローディス。


 時は5月(マイユス)は19日のオヤツ時、(ところ)はお馴染みのショコラティエ "ヴェルベナエ・ドゥルシス" 、リジーちゃんは旦那さまことシドさんと待ち合わせ中。


 かつ、久々の自棄(ヤケ)チョコ大人喰い中でございます。

(シドさん早くこないと奥さん太っちゃいますよ!)


 なんとなれば。

 先程、"アナスタシア様のとろとろハネムーン" の原稿を、事実上、突っ返されたから。


 それは、こんな経緯でございました。


 ―――原稿を読んだ後の恒例・トイレタイムを済ませ。

 我らが大衆文芸誌 "月刊ムーサ" の編集長にして、バルシュミーデ兄弟社の副社長・ジグムントさんは、似合わない眼鏡を中指でクイッと押し上げつつ。

 こう、おっしゃったのです……!


『いや素晴らしい! 今まででも一番、興奮しましたよ! さすがシー先生です』


 ここまでは良かったんですが。


『けれど、その……』 なにやらもごもごと口ごもっておられますので、『いかがなさいまして?』 と、ドキドキしつつ聞いてみましたところが。


『読者向けの前宣伝(えげつないあおり)と比べると、その、品がよすぎると言いますか……』


『ええ!?』 リジーちゃん、めちゃくちゃ驚きましたとも!


『こんなに、総合格闘技しておりますのに……っ!?』


『確かに、そうなんですが……もう少し、単なるフェチとの違いを出したいところですね。

 普段のアナスタシア様なら相手は宝石(いし)の精霊ですから、一方的でも構わない、と思うのですが……』


『つまり、相手が生身の人間だと物足りない、と……?』


『そう、それです!』 ほっとしたお顔で、さすがシー先生、とホメてくださるジグムントさん。


『互いの交流が感じられると、より読者の心を惹き付けるモノができると思いますよ』


『……確かに』


『シー先生ならきっと書けますよ!』


 信頼しきった瞳で晴れ晴れとした笑みを浮かべつつ、原稿をそっと返す、ジグムントさんなのでした。―――


 その後、7月号は原稿お休みにしてユーベル先生との座談会にしますから、という打ち合わせやら何やらを経て、ここ "ヴェルベナエ・ドゥルシス" にいるリジーちゃん。


 美女たち(チョコレート)を品定めする目も、つい、うつろに泳ぎがち、なのです。


 ―――なんだかもう、宿題を早く終わらせたい気分で、本番取材しないままに走ってみましたが……


 や は り 、 だ め 。


 ということ、ですもんね。―――


「ふぅぅぅぅぅ……」


 ため息ついて、もう1つ、濃褐色の美女(ダークチョコレート)(ピック)でグイッと突き刺します。


 ―――せっかく、せっかく……っ

 徹夜して妄想に身悶えしつつ、書いたのに……っ!


 相互の交流だなんて、いかにも本番経験者でなければ分からないことを……っ!

(きっとサラさんと大いに進展したに違いありませんね、ジグムントさんたら!)―――


 艶やかな果実に歯を立て、中から溢れ出す蜜をむさぼりつつ (どうやらブランデー入りだったようです) 、ガックリと肩を落としていると。


「あらぁ、リジーちゃん?」 凛とした中にも華やかさを持つ、よく通る声が頭上から降ってきました。


 目を上げれば、そこには、色々な春の花がバランスよく配置された紫のお衣装は、懐かしの春の女神(フローラ)様……すなわち。

我らがコスプレ好きの王女殿下ですね!


 今日はヘルムフリート青年(ノーブルなおまけ)はおられません。


「リーゼロッテ様!」 結婚式でお目にかかったばかりなのに、なんだかずいぶんとお会いしていなかったような……っ。


 お久しぶりです、と淑女の礼をとれば、かたっくるしいわねぇ、と懐かしいケタケタ笑いが返ってきます。


シド(ジェット)が見えないけど……迷子?」


「いえ、シドとは待ち合わせしておりますの」


「ではどうして、そんなにしょげておられるのかしら?」

 リジーちゃんの差し出す茶色い令嬢(ミルクチョコレート)のボンボンを、真珠のような前歯で豪快にかじり取るリーゼロッテ様。


 うーん滑らかな口どけがたまらないわねぇ、などとコメントを下さりつつ、湖の色のお目めをじっと、こちらに注がれています。


 しかし、リーゼロッテ様はまだ未婚の身。


「ありがとうございます。リーゼロッテ様が結婚なさったら、相談させていただきますわ」


「あら。ということは、あっちの方のお話ね!」


 物分かり早っ……。


「ええ。そっちの方のお話ですわ」


「うまくいかないの?」


 まさかの問いに、チョコレートを持ったまま、ずざざざざっ、と後退(あとずさ)りしちゃいますよ!


「……どうしてそんなことまで……っ」


「あら、わたくしも、初めての時は全然うまくいかなかったもの!」


 お、お、王女殿下!

 まさかの告白ですよ……!?


 ルーナ王国の貴族全般はあれだけ 『嫁入り前は云々』 だの 『大衆誌は下品』 だのと、よく分からない何かを大切にしているというのに。

 どうして王室がこれだけ自由なんでしょうか……っ!?


「では、もうヘルムフリート様と……?」


「いいえ?」 あっけらかんと言う、青い艶やかなお髪がファサっと揺れます。


「ラズールよ!」


 ええええっ!? なんですと! 

 ……あの鬼スズメ、リーゼロッテ様にまで毒針を向けておられたのですね……っ。


「おのれっ、許せません……っ」


 チョコレートを味などそっちのけでギュムギュムと噛みしめるリジーちゃんの目の前で、青いウィッグがまたふぁさっと揺れます。


「違うのよ。ほら、わたくしたち大昔に婚約してたでしょう? その時のことよ!」


「ますます許せません……っ!」


 きっとリーゼロッテ様が美少年趣味の変態になったのは、ラズール青年のせいですね!


 しかし王女殿下の方は、ケタケタと相変わらずの明るい笑い声を立てつつ、チョコレートをあぐっ、と口に放り込んでおられます。


「だから、きっと力になれるわ! なんでもきいて?」


「その前に、今度ラズール様をこらしめてもよろしいかしら」


 尋ねれば王女殿下からは、肩をすくめた含み笑いが返ってきたのでした。


「やめてあげて? わたくしは大丈夫よ?

 今こうしてリジーちゃんを助けてあげられそうで、嬉しいもの!」

読んでいただき、ありがとうございます!


ちょっと早いですが……


Merry     /⌒〇

 Christmas (二二ニ) コソーリ

       (・ω・`)

  _ ∧,,∧._田⊂  ヽ

  | .(-ω-`) | .しーJ

  ./⌒∪⌒∪⌒/|

 /⌒⌒⌒⌒⌒//

./⌒⌒⌒⌒⌒//

|⌒⌒⌒⌒⌒|/


お風邪お気をつけて、よいクリスマスを!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぇ? 海軍の軍人さんが王女様と……Σ( ̄□ ̄|||) [気になる点] リジーさまは、その……ブランデー入りがお好きなんでしょうか?(どうでもいい質問w) [一言] >5月は19日のオヤツ時…
[一言] この、バトル漫画とかでよくある、主人公のピンチに強者が颯爽と駆けつけるような展開!! 萌え……、いや、燃えますねッ!!w
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