124.だんなさまとふたりきりでいざ、ハジメテの夜! 変態悪女の本領発揮、でございます!?
こんばんは。
ええ。夜でございます。
5月は11日、結婚式を終え、皆様から盛大に祝福していただき、父はハンカチを10枚ボトボトにし、母も嬉しそうに天使様の微笑みを浮かべつつ薄すら涙ぐみ……
もう思い残すことはない、私ことエリザベート・クローディス。
只今、慣れ親しんだ寝室で、よく存じ申し上げてるはずのだんなさまことシドさんと、2人きり、でございます。
ちなみに現在、たっぷりキングサイズに変更されたお姫様ベッドに並んで腰掛け、熱烈なキスをいただいている最中、でございます。
で、これから。
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……………………………………。
これから、どうしよう。
両親に改めて宜しくとの御挨拶。すませました。
夕食。いただきました。
お風呂。今日は薔薇とジャスミンの甘い香りのお風呂でしたね。
(ちなみに普段は、ローズマリー。夏はミントも使います)
部屋の防音……もとから、バッチリでございます。
さて。背中に回されたシドの片手が、なにげに肩に移動したところで。
「あ、そうだ!」 リジーちゃん、ちゃんと思い出しましたねぇっ!
「キエルちゃんたちから貰ったプレゼント、開けてみなきゃ!」
キエルちゃんたち、工場の休憩室で何やらゴソゴソとしていたと思ったら。
なんとなんと、リジーちゃんに内緒で結婚のお祝いを用意して下さっていたのです……っ
皆で少しずつお金を出しあって買い集めた材料で、作ったのだとか……もう、心臓に、ずきゅぅぅぅんっ、ときちゃうくらい、嬉しい!
何をいただけたのか確認しなければ、落ち着かないのが人情、というものでございます。
「今ですか?」
「もちろんよ!」
どうしてそんなに不満そうなんですかシドさん。
「なにかなぁ……」
テーブルに座り、心が籠っているとひと目で分かる、上質なリボンを丁寧にほどいて、箱を開けてみます。
何やら、丸くツヤツヤと黒い大きめの粒。
この色、テリ、そして香りは……
「チョコレートね!」
こんな高価なものを……キエルちゃんたちが……ううっ!
感動しすぎて涙が出ちゃいますね!
これからもリジーちゃんcafeがんばるぞ!
決意も新たに、早速、いただき……。
と。
「やめた方が良いと思いますよ」 1粒つまんだ手を上から軽く抑えて、首を横に振るシドさん。
何やら嬉しそうです。
「媚薬ですから」
「へ!?」
えええ!?
思わずヘンな声が出ちゃいますよ!
……だって、あのキエルちゃんが!?
リジーちゃんでも思い付かない、そんな悪女な発想を!?
「キエルさんのお祖母さんはポルトメリーの出身でしょう」 シドが解説してくれます。
「あの辺には、結婚式で本格的な媚薬を贈る風習があるのですよ。各家庭に秘伝の呪い歌も伝わっており、なかなかイイ効き目だそうです」
「……ずいぶん、よくご存知ですこと」
「アルデローサ様に近づく者の調査にはぬかりありません」
「………………」 絶句するリジーちゃん。
シドがそんなに過保護だったなんてっ!
今の今まで、知りませんでしたよ!?
もうちょっと、確認してみましょう。
「じゃ、じゃあジグムントさんのご趣味は?」
「仕事と靴磨きです」
「サラさんとはいつ結婚するの?」
「6回目のプロポーズが失敗したところですが」 黒い瞳が、ふっ、と和みます。
「今日のお2人のご様子なら、7回目は成功するかもしれませんね」
「す、スゴいわシドさん!」
リジーちゃん、もうクラクラですよ!?
「アルデローサ様だってご存知でしょう?」
「でも、プロポーズの回数までは数えてないわ? やっぱりシドさんたら」
ジグムントさんのこと……
「違いますから!」 おや真剣なお顔で疑惑を否定ですね。
そして、そのまま。
「……アルデローサ様……」
またリジーちゃんのお目めなど覗き込んでこられる、だんなさまことシドさん。
続きまして、2回目の熱烈キスでございます。
んんん……ヤバいシドさんがソノ気だどぉ考えてもそうだ……ええと……
「あ、そうだ!」 そうそう、リジーちゃん、またしても、ちゃんと思い出しましたよ!
「取材が先だったわ!」
「…………」 シドの視線が、明らかに恨めしげなものになってきました。
「それは3回目からの約束でしょう?」
「そうじゃなくてね?」 イソイソと王女殿下からいただいたガーターベルトを取り出します。
そう。たとえ新婚の夜といえども!
アナスタシア様の原稿優先!
当 然 で す よ ね !?
「シドさん、どれがイイ?」
三種類のガーターベルトを並べます。
どれを選んでくれるのか、ワクワクしますねぇっ……!
が。
「………………」
複雑そうなお顔で、また黙り込まれちゃいましたよ?
もしかして……シドったら、どのガーターベルトもキラキラすぎて好みに合わないのでしょうかっ!?
「あ、あのね! この黒玉とエメラルドなんて、いかにもアナスタシア様っぽいんだけど、前も同じ宝石だったから、別の方がいいかなぁ、なんて!
ラピスラズリとかどうかしら? 亡き旦那様の瞳の色なんだけど!」
ああ……なんか、言い訳がましい!
けれども、ここは、なんとしても……っ!
「アルデローサ様」 大きな手が、そっと頬を撫でました。
「もしかして、怖い、ですか?」
ぎくっ……!
さっきから強ばりっぱなしだったおカラダが、さらに固くなっちゃいます。
図星、でございます。
おっかしいなぁ……
お相手は、シドさんなのにな。
取材でアレコレした挙げ句、欲望のままにイチャイチャベタベタしてたはずなのに。
結婚式の前なんて、「さぁ、いよいよ!」 とウキウキワクワクしていたはずなのに!
どうして、この期に及んで、こんなに緊張しちゃってるんでしょうか、リジーちゃん!?
自分に聞いても、わかりませんっ!
だって、まさか、怖くなるなんて思わなかったんだもん!
けれども、しかし。
ここで素直に 「怖いの」 だなんて、申しませんとも。
リジーちゃんがするならば、こちら。
さぁ、はじめ! なのです……っ。
「ほーっほっほっほっほ!」 高笑い、決まりましたね!
そうです!
ハジメテだろうと何だろうと、堂々と落ち着いて殿方を喰らうのが、真の悪女!
「わたくしをアマく見るなど、承知しなくってよ!」 次のセリフも、バッチリですね!
「もちろん! 取材が終われば、本番もさせていただきますとも!」 ベッドにドカン、と片足をつき、魅惑的な太ももモロ見せ、OKですね!
「ドンとかかってらっしゃいませ!」
ふーっ。
MISSION COMPLETE!
完 璧 で す ね っ !
さぁシドさん!
わかったら、サッサとガーターベルトを選ぶのです……っ!
「わかりました」 シドが、プラチナとダイヤとルビーのガーターベルトをさっとつまんで渡してきました。
「今夜は一晩、脚の取材だけにしましょう」
「え、いいの? 本番は?」
「それは、落ち着いてからでイイですよ」
「だってシドさん、楽しみにしてたんでしょう?」
もちろんです、と嬉しいような困ったようなお返事。
「だから、取材のついで、とかではなく、本番は本番で一晩でも二晩でもかけ、ゆっくりじっくりしましょうね!」
イイ笑顔でキッパリと言い切った、シドさんなのでした。
ナターシャ:……!今、お嬢様の高笑いが聞こえなかった? どんなプレイを……
ファルカ:ふふふ。後で夜のお菓子でも差し入れてあげましょ。
ちょっと書いてみたかっただけです。
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読んでくださりありがとうございます!
感想、ブクマや評価などめちゃくちゃ感謝しております!
では。寒くなってきましたので、温かくしてお風邪召されませんように~




