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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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114/201

114.いきなりですが、従業員の福利厚生に頭を悩ます変態悪女! 差し入れだけではまだ足りない、のでございます!?

 さて、かくして少々の時が経ち、雪がやっと溶けて消え、リラの蕾もほころび始める季節にと相成りました。

 結婚式も近づき、アナスタシア様の原稿はしばしお休み(考えてはおりますとも)。

 そんな、5月(マイユス)は5日でございます。


 父と一緒に工場に行くことが多くなった婚約者のシドと、そのシドさんにくっついてちょくちょく工場に行くリジーちゃん。


 差し入れ用クッキーも毎回ばっちり用意してますよ!

 しかも、書字魔法でくすねたんじゃなくて、ちゃんと焼いているのです。

 今年も小麦は豊作見込みですが、革命回避のためには日頃の仕込みが重要ですからね。


 そんな本日のクッキーは、ふっふっふ。


 なんとっ!

 チョコチップクッキー、なのです!


 "ヴェルベナエ・ドゥルシス" の普段はお店に出さない、原材料チョコを譲ってもらって、ファルカと研究して作った自信作。

 チョコレートの香りも芳しい、ややほろ苦く甘い大人の味です。


 そして、紅茶、コーヒー、ハーブティーの準備もOK!


 工場の休憩室で、カフェ店員よろしく働いちゃいますよっ。


 休憩にきた従業員のキエルちゃんも、どさんと置かれたカゴの中身を嬉しそうにチェックしてますね!


「まぁ、美味しそうなクッキー! いつもありがとうございます」


 こうして喜んでもらえるから、作り甲斐もあるというものですが。

 うーん……実は。

(ケッ、セレブめ) などと思われてないかと……そんなことも気になっているのですよね。


 だって、目の前にいるのは、リジーちゃんとそう変わらない年の女の子。

 なのに、あからさまな格差がっ……!


 清潔だけど質素な服装に、荒れ気味の手を見ると、なんだか胸が痛みますね!


 これまで、前世の日本とそう変わらない生活を、『ちょっと恵まれた方』程度と思ってきてた脳ミソにゲシゲシと蹴りをいれたいっ……


 仕立てのいいエプロンの胸元レースをなるべく隠すようにしながら、オーダーの紅茶をいれます。


 まずはポットとカップをお湯で暖め、ポットに入れた茶葉は少し蒸らしてからお湯を注ぎます。

 ふぅわぁぁぁ……


「いい香りですねぇ」


 目を細めてくれるキエルちゃん。

 んー♡ こうやって、人と同じことを感じるのが楽しいから、やめられないんですよねっ


 うん、たとえ (セレブめっ) と思われていようとも!

 負 け ま せ ん よ っ !


 我が道、すなわち 『革命回避しつつシドさんとのラブラブ生活をネタにお色気小説を書く』 を貫くのです!



 ※※※※※



「そんな決意をしなくても」 と、首を少々傾げつつおっしゃるシドさん。

 "ザ・工場 de リジーちゃんカフェ" も無事に終わって帰宅し、現在リジーちゃんのお部屋です。

 ちなみに、怪しいことはしていません。

 ただの立ち話、でございます。


「従業員の皆さんは普通に喜んでおられますよ」


「そうなの?」


「ええ。うちほど待遇のいい工場は近隣ではありませんし。おかげで良い人材が集まるので、やりやすいですね」


 おおっ!シドさんがなんか、賢いことをっ……あ、もともとデキる子だったんでしたっけ。

 そうですよ。

 シドさんの特技はお色気だけではないのです!


 いつもリジーちゃんの取材に協力していただいてるイメージしかなくて忘れていましたね。てへ。


「でも、工場に意外と女の子が多くて驚いたわ」


「今日行ったのは、織物と刺繍の工場ですから。製紙や紡績は男性が多いですよ」


 なるほど、とうなずくリジーちゃん。

 女の子たち、働いているのなら皆、字は読めるのかしら。


 もしあの子たちに字が読めるなら……ジグムントさんに、女性向けの月刊誌を作ってもらっても売れるかもしれませんね!

 工場の休憩室にも置いて、皆に楽しんでもらうのです!

 これって良くない?


 そしたら、いつぞやのボツネタ 『イケメン変態鉱物学者のお話』 も浮かばれるというものっ!


 なんてことをツラツラと考えていると、不意に。


 真剣な漆黒の瞳が、覗き込んできました。


「女性が多くても、絶対に浮気はしませんからね!」


「…………はい?」


 急な宣言ですね?

 一体、なんだというのでしょうね?


 対するシドさんは、思い切り(しまった)というお顔をされています。

 珍しいこと、と思った瞬間に、パチン、パズルのピースが合わさる感覚。


 これは……もしかすると、もしかして?


「シドさん?何かございましたの?」


 敢えて穏やか口調で問いただせば、またしても気まずそうな表情です。


 表情そのままに、言い訳もいつもに増してボソボソしていますね!


「いえ、色目とかではないと思うんですが。ただ面白がってからかってるだけだと……」


「………………!」


 リジーちゃん、絶句。


 どうやら工場の従業員の一部に、シドさんを狙う人々がいるようですね?

 …………なんということでしょうかっ!

 いえ、何とかしなければ、なりませんねっ!


 対策を立てようと、リジーちゃんの脳内にはニューロンが忙しく飛び交います。


 …………うん。

 これからは、"リジーちゃんカフェ" を強化し、ジグムントさんには絶対に女性向けの "月刊ムーサ" を発行してもらうことにしましょうっ!


 娯楽を強化して、工場の人々にはシドさんのことを忘れていただくのですっ!


 娯楽が増えれば、色恋への関心は薄くなるしかありませんからね!


(それから、書字魔法で月1の幻灯会はどうかしらっ……)


 福利厚生も強化できて、一挙両得、ですよね。


 イロイロと考え込むリジーちゃんを、またしても気遣わしげに覗き込むシドさん。


「アルデローサさま、大丈夫ですから」


 どうやら、シドはリジーちゃんが、ダンナ浮気フラグに心を痛めていると思っているもよう。


 覗き込んできた顔がそのまま近づいてきて、ついつい目を閉じてしまいます。

 唇に温かく柔らかい感触。ついで、ちゅうっと吸っていただいていますね!


「んっ……ん……」


 なんかこのシチュエーション。

 浮気がバレかけたダンナが色仕掛けでごまかす、ような感じがしないでもないですねぇっ!


 イラっとしてつい、シドさんの舌を甘噛みです。


「……ん……」


 歯の攻撃にもめげず、きっちり入りこんで、お口の中を丁寧にお掃除して下さるお舌さま。


「……んんっ……」


 うっかりロティーナちゃんが降臨してしまいそうな箇所になると、お掃除が3倍丁寧になるオプション付き。

 あううう。どうしよう。

 また、膝の力抜けてきた。

 合同婚約式をこっそり抜けてのミッション、再び、なのです。


 シドさんズルい、ズルすぎる。


 こんなことでは、浮気がバレかける度に色仕掛けで誤魔化されること必至、なのです!


 あううう。

 せっかく脳内をくまなく飛び交っていたニューロンが、一部に集中してしまう、のです。

 そんでもって、脳細胞が若干、死にかけております。


 「……ぁんっ……」


 ガックリと尻もちついてしまいそうになるところをすかさず姫抱っこ強制回収して下さるシドさん。

 続けてソファ上でのお膝抱っこ。

 続けて背中に手を伸ばして、ぎゅうっとしつつの熱烈なお掃除、再び。


 本っ当に、ずるいですね!

 

 「……ん……」


 たとえロティーナちゃんがいくら降臨しようとも。


 油断など、いたしませんともっ!


 と、心に誓うリジーちゃん、なのでした。

読んでいただき、ありがとうございます!


ブクマ・評価まことに感謝です。


これまで読んでくださってる方、新たに読んでくださった方に、モフり用の尻尾を捧げます。


では、外出時に雨などあわれませんように。

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― 新着の感想 ―
[一言] >お舌さま 凄くいい表現だと思います (∩´∀`)∩~♪ もう一つの足のアクセサリーってなにかな (。´・ω・)? (゜∀゜)/ 尻尾下さい ☆彡
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