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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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106/201

106.不調な婚約者の看病には、とっても真面目に取り組みます!やましいことなど……いたしません!?☆挿絵付☆

 プラチナブロンドの髪が、彼の頬の横で、さらさらと揺れます。


 馬車の動きに合わせてカーテンのように揺れるそれを、不思議な気持ちと若干の上目遣いで眺める私ことエリザベート・クローディス。 

 ただいま膝の上にシドさんの頭を載せ、心を込めて人工呼吸中でございます。


 時は4月(アプリリス)の15日午後。


「シドさん、苦しくない?」


 尋ねれば、漆黒の瞳が薄く開き 「大丈夫です」 と意外としっかりしたお返事。

 ちなみに先ほどから、お手々握ったまま、でございます。


「……続け……ください」


「本当にした方がラクなの?」


「……はい……」 瞳がまた閉ざされます。

 やはり体調はまだまだ悪そうですね!


「……気持ち、い……」


「……!?」

 なんですとっ!?


 思わずシドさんから、唇を放すリジーちゃん。

 今なんだか、びっくりしたような嬉しいような恥ずかしいようなっ……


 いやいやいや!

 こんな時は落ち着いて深呼吸、ですよ!

 リジーちゃんがしているのは、今までで一番マジメな人工呼吸、なはず。


 だって (こんな時にっ!?) と引きまくるリジーちゃんに、シドさんは苦しげな息の下からこう言ったのですから!


「少し、ラクに、な……と」


 なので、すなわち!

 アレですね。

 気持ちいい、とかいうのは、すなわち。


「……ど……した、ん……か?」


 シドさんが怪訝そうにまたうっすらと目を開けました。


「なんでもないのっ!」


 まさかこんな時にシドさんがイカガワシイことを考えてるなんて!

 そんなこと、ちっとも思ってませんからねっ!


 動揺を悪女らしく立派にごまかして、せっせと人工呼吸の続きをするリジーちゃん。

 髪の毛のヴェールが外界を遮断して、今まさに、ふ・た・り・の……


 なんてことは、思って、いませんともっ!




 そうこうするうちに、馬車はやっと家に到着しました。


 御者さんに待ってもらって家に入り、両親に知らせたりシドをハンスさんにお姫様抱っこで運んでもらったり、料金を払ったり……

 ひとしきりドタバタし、やっと落ち着いた頃にはもう夕方。


 薄暗くなってきた自室で、そこそこなお姫様ベッドに横になったシドの傍に腰を下ろして、口に耳を近付けて寝息を確認します。


 うん、規則正しい音ですね!


 ……ああ、生きてますねぇ。

 ってそれは、分かってるんですけどね!

 でも、良かった。


 ほうっ、と何回目かのタメイキ。


 よく考えたら、こんなに眠ってるシドさん見たこと、ありませんでしたよ。

 小さい頃は寝てたら、くすぐったり鼻つまんだり、顔の上に乗ったりして、無理やり起こしてましたし、ね!


 ……今も本当は起こしたいけれど、ガマン、なのですっ!

 代わりにもう1回寝息を確認。


 燭台の灯りが次第に壁を濃く染めていくのを眺めつつ、すうすうと規則正しい寝息を聞いて……


 ……………………と。あれ!?


 少し、慌てるリジーちゃん。

 なんとなれば。

 いきなり、止まりましたよ? 寝息。

 どうしたことでしょうかっ……


 と、心配しつつ慌てていると、寝息の代わりに。

 ガッ、と伸びてくる両腕…………あれ?

 首をかしげるリジーちゃん、です。


 ……なんでかな?

 一体どうして、体調悪い人が、こんなにも力強く、ぎゅうっとして下さっているのでしょうかっ!?


「……か、……さま」 泣きそうな声。


「お……あ……、ま、いかない、で」


 ピキーンと凍るリジーちゃん。


 なんか今、シドさんから。

 母親呼ばわり、されちゃいましたよっ……!?


 えええええっ!?

 いやいや、どう考えても明らかに夢だから! 152%、寝言だから!


 ……でも、なんだかショック。


 がーん、とよろめきたいけど、がっちりホールドされてよろめけない。


 そんなリジーちゃんの耳に、熱い息がかかります (どうやら熱が出てきたもよう)。


 シドさん、まだ泣きそうですね!


「やく、……くで……、ぼ、が……お、……きく……まで……、いっしょ、……アルデローサ……み、……? い……で……!」


 なんと言っているのでしょうか!?

 モゴモゴしすぎて、わかりませんね!

 ただ、それだけ滑らかに聞こえた、花の名前。

 シドが2人きりの時だけ、そっと呼んでくれる名前です……となれば。


 この流れで、言うべきことはただひとつっ……

 カユイ台詞も (たぶん) シドさんのため!

 頑張っちゃいますよ!


「アルデローサなら、ここにいるわ、シドさん」 なるべくシドの (推定) とっても美しきお母様、メイユさんのイメージで喋ってみましょうっ!


 会ったことはないけれど、なんとなくイイ女風にっ!


「心配なさらないで。大丈夫です。これからも、ずっと一緒ですわよ……約束しますわ」


 うなずき、ますます腕に力を込めるシドさん。……あのですね、えーと。


 この姿勢、微妙に苦しいんですけど。

 横から差し込んだ状態で、無理やり抱っこされておるわけなので。


 というわけで、靴、脱いじゃいましょう。

 んでもって、えいっとベッドに上がっちゃいましょう!

 心配要りませんね。問題もありませんね。

 もともと、リジーちゃんのベッドですからね!


 …………ふぅぅぅぅ。

 これで、落ち着きましたね!

 微妙におカラダずらしてるから、シドさんもそんなに重くないはず!


「お、じょ……さま」 落ち着いたところで早速シドから第一声。

 お母様からお嬢様、に戻ってますね!

 泣きそうでも、ないですね!

 よっし!

 内心で、なんとなくガッツポーズをするリジーちゃんです。


「アルデローサ、……ま」


「なにかしらシドさん」


 広いお胸に顔を埋めつつ返事をすれば、心臓の鼓動が近い、ですねぇ!


 気持ち良くて思わずすりすり、しちゃいますよっ……こんな時だけど。


 そして、そんなリジーちゃんに、朦朧としたシドさんは衝撃のひとことをくださったのでした。


「……あい、してます……」




挿絵(By みてみん)

 ©️秋の桜子さま

(シドは今、こんな夢を見ております!)

読んでいただきありがとうございます。


秋の桜子さまより幻想的なFAいただきました。

ヴェールの透け感、ドレスのデザイン、シドさんシルエットの……


細かい部分まで驚異の仕上がりでございます。


秋の桜子さま、ありがとうございます!

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©️秋の桜子 さま



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