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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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104/201

104.婚約者の花嫁姿に大興奮の変態悪女!でも婚約者は少しお疲れ気味、のようです!?

「やっぱり!思った通りですわ!」


 大興奮の私ことエリザベート・クローディス。

 そして。


「まぁぁぁ。小さい頃からもしかしたら似合うのではないかと思っていましたけど、大きくなっても似合うのねぇ……」


 感動にじんわりとにじむ涙を押さえる母、アメリア・クローディス。


 それから。


「……………………………………

 …………………………………………

 ………………………………………… ありがとうございます」


 もっのすごい長い沈黙の後、礼を言う、婚約者のシドさん。


 時はめっきり春めいてきた4月(アプリリス)は7日の午後、所は衣装部屋。

 開け放った窓からのそよ風が優しく、薄いレースのベールを揺らし、その下のシドの仏頂面を撫で上げて去って行きます。 


 そう!

 今、リジーちゃんと母の目の前には!

 ヴィンテージのウェディングドレスを纏ったシドさんがいるのです!


 慎ましやかながら、若干透け感のある長い袖。鎖骨の下から首の半ばまでを覆う小花柄レースの襟元。肩を覆うヴェール。

 これらが見事に、男性らしい部分を隠しております。従って今のシドさんを表現するならば……


 美しい花嫁は (超絶) ご機嫌ナナメ!


 というところでしょうかっ!

 いや、不機嫌なお顔も良いのですよ。

 ヴェールの下からチラ見えするキューティクル・黒髪と黒い瞳が……はぁぁぅぅ (感嘆)


 ヨダレでちゃいますね、もうっ♡


 ついでにこのまま……とばかりに、説得にかかってみましょうっ


「後ろのホックが止まらないのが残念だけれど、もっと長いヴェールをかぶせれば大丈夫よね」


「……ここだけの約束では」


「だって! すごくお似合いなんですもの! わたくしが着るよりシドさんの方が絶・対、イイわ!」


「それはちょっと」 母が口を挟みました。


「似合っているけれど、結婚式には親戚も呼ぶのよ。後であれこれと言われたいのかしら、リジーちゃん?」


「平気よ! だって……」 おっと。母に悪女、とか言えませんね!


「きっと分かって下さるわ!」


「俺はイヤですね」


 シドがきっぱりと言い切ります。


 ああぅ……その花嫁姿で『俺』とか!


 シドさんったら、どれだけリジーちゃんの新しい扉をこじ開ければ、気が済むんでしょうかっ


 もっと、もっと聞きたい!


「そんなっ! 結婚式するの、わたくしの誕生日なのよ」 わざとらしく唇を尖らせてみます。


「わたくしへのプレゼントなのだから、当然シドさんがキレイにラッピングされる方でしょ!?」


 シドがコンコン、咳払いをしました。

 一緒にヴェールが揺れ、少し赤らんだ顔が見えます。


 ……? シドさんでも恥ずかしがることがあるのかな?


「とにかく俺はイヤですから!」


「…………お・ね・が・い♡ ね?」


「そんな上目遣いしてもダメです」


 なによぉっ!

 と、内心で毒づくリジーちゃん。

 しかしふと見ると、ドレスを脱いで立派な大平原のようなお胸を晒しているシドのお顔が、まだ少し赤いような……


「もしかして風邪?」


「いえ、少し寝不足が続いて体調を崩しただけです」


「あらあら。それはいけないわね」 母が心配そうに顔を曇らせました。


「今日のお仕事はいいから、お部屋に戻って寝てらっしゃいな」


「いえ、そういうわけには」


 やっぱりね。言うと思いましたよ。

 シドさんってそういう人ですからね!


 けど、そこで 「あっそ。じゃあせっせと働いてね」 というのでは、前世のブラック小企業みたいですよね。


 そこで、ぴこーん! と閃くリジーちゃん。


「じゃあじゃあ、シドさんが本格的に体調崩して寝込んでしまったら、またシッカリ看病してさしあげるわね!」


 そうです!

 寝込んでしまってもリジーちゃんの愛あふれる看病があれば、全然問題ないですよね!


 さぁ、シドさん!

 せっせと働いて、程良く過労になるのです!

 ふっふっふっふっふっ……


 ところが。


「いえ」 と、服を手早く身につけつつ首を振るシドさん。

「やっぱり、休ませていただきます」


 ぇぇぇぇえ! つまんない!


 唇を尖らせるリジーちゃん。

 けれどもシドは、服を着終えてあっさり退出していきます。


 シドの姿が見えなくなると、母は改めてニッコリと微笑みかけてきたのでした。


「さて、リジーちゃん。あなたもドレス、着てみましょうか?」


 ……つまんない、なぁ。




 ※※※※※




 とまぁ、そんなこんなでドレスの試着も無事に済み、後は母とナターシャに丸投げの私ことエリザベート。


 4月(アプリリス)は15日の本日、シドと一緒に活版印刷所・バルシュミーデ兄弟社へお出掛けです。


 何しろ毎月15日は我らが大衆文芸誌 "月刊ムーサ" 発売日!

 最近は発売日には、バルシュミーデ兄弟社の前にちょっとした行列ができちゃうほど、人気なのです!


「これでまたアナスタシア様が有名になっちゃうわね!」


 ご機嫌で行列の後ろに並ぶリジーちゃん。


「ロティーナの方が有名でしょう」


 ツッコミが入るのは相変わらずですが。

 うーん。

 どうも、普段のシドと比べるとキレがないような。それに、最近は顔色も良くないのですよね!


「シドさん大丈夫? お腹痛くない?」


「実は」 口ごもるシドさん。

 これはかなり調子が悪いと見ました!


「頭痛が少し」


 えっまじですか! これは大変です!

 病気ひとつしたことない人なのに!

 というより、なんで今まで気付かなかったんでしょうか、リジーちゃんったら!


 …………うう。最低…………


 とか、落ち込んでる場合じゃあませんねっ!


「帰りましょう!」


 きっぱりと言い切って(きびす)を返した時。


 ぐらり、とシドの身体が傾き、崩れるように地面に落ちたのでした。

読んでいただきありがとうございます!

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