103.気品あふれるヴィンテージドレスに膨らむ妄想!?結婚式への期待が高まる、変態悪女でございます!
さて、そんなこんなで4月は7日。
シドさんの看病のおかげですっかり元気になった、私ことエリザベート。
「ウェディングドレス?」
ただいま、母の前でコテンと首をかしげております。
「ええ、そうよ」 柔らかな美貌をニッコリとほころばせてうなずくのは、母ことアメリア・クローディス。
今年でもう37歳、でもやっぱり不変の天使様、でございます。
「そろそろ試着して、お直ししておかないとね」
ふむふむ。
それで、衣装部屋なんぞに呼ばれたワケですね!
衣装部屋には、普段使わないドレスやらテールコートやらがドーン!と並んでいるのです。
窓からは咲き始めの薔薇の香りをほのかに含んだ微風。
リジーちゃんがここ前に入ったのは ―――シドさんと隠れんぼした時ですね!
何歳だったっけ……ん? 6歳くらい?
確か、その端っこに掛かってる 「誰が着るねんっ」 くらい裾の長いドレスのスカートの中に隠れまして。
良い場所を見つけたと思っていたのに、割かし早めに見つかって、シド少年と一緒にスカートの中に入ってコソコソとお話などしたんですよね。
重なった白いレースと絹に隠された、秘密の指切り。
何の約束かって?
な・い・し・ょ、ですよ。―――
ふふふっ。
幼気な子供時代など思い出して、ちょっと笑っちゃうリジーちゃん。
あれからもう10年以上経ったのかぁ……はやっ。
と、感慨に耽っていると、母が尋ねてきました。
「クローディス家の花嫁は代々伝わるドレスを着るのだけれど……リジーちゃんもそれで良いかしら?」
新しく作らせても良いのよ、と優しい母に 「いいえ! もちろん、お母様と同じがいいわ!」 と可愛く首を横に振ってみせます。
だってっ。ヴィンテージドレスですよっ! 300年も前の、ですよ!?
……どれだけ、ボロボロなんでしょうかっ!
妄想が膨らんじゃいますねっ!
そんなわけで、レッツ妄想スタート!。
―――神聖な結婚式の最中に、イケないところがボロッと剥げ落ちて 『キャッ』 などと赤面する花嫁。
『ああ大変。見ない振りをしなきゃ』 と気を遣う皆様っ!
『ああっ……! 隠してあげなきゃ! 今余計なことを考えるな俺っ!』 と頑張る花婿。
いつ剥げ落ちるかというドキドキ感と、ボロリと崩れた後の、不特定多数からのそこはかとない視姦―――
おふぅぅっ♡ なかなか、萌えちゃいそうですねぇっ♡
あるいはあるいは。
結婚式の後、2人きりの控え室で、花婿がふと花嫁のドレスに手を触れた途端にボロっと崩れ落ちたりしたら!
ああんっ♡
その後、一体どうなっちゃうことでしょうかっ♡
――― 花婿の慌てっぷりと、でも抑え難い欲望!
熱い視線を浴びて戸惑いつつもカラダの奥がウズいちゃうことに、さらに不安になり、その不安でますます抱きしめられたい欲が掻き立てられる花嫁!
欲望! 戸惑い! 欲望! 不安! よくぼ……果てしないループっ……(悶絶) ―――
これいいんじゃない?
ジグムントさんの宿題 (ザ・単行本袋とじオマケ用短編) にちょうどじゃない?
もしかして、本番の取材とかしなくても、アナスタシア様と亡き旦那様の蜜月アレコレを書けちゃったりして!
いやぁん、リジーちゃん天才っ!
「そう、良かったわ」 湧き出る妄想と自画自賛をぶった切るのは、嬉しそうな母の声と眼福スマイルです。
「ヴィンテージとはいっても、そこまで古くはないのよ。その都度丁寧に直して、古くなった布やレースは代えていますからね」
「えっ……」 一気にテンション下がっちゃう、リジーちゃん。
……つまりはそれは。
普通の 『古くさい型のドレス』 なのでは?
いや、型が古かろうと別にいいんですけどねっ。何しろ人間、脱いだ後が勝負ですからっ!
けど。
スリルは?萌えは?
……一体、どこにっ……!?
「では着てみましょうか」
ドレスを取る母の手を、押し止めます。
「少しお待ちになって!」
「あら、どうしたの? やはり新しく作ってほしい?」
「そうではなくて、わたくし、シドがドレスの方が良いわ!」
そう!
たった今、思い付いたのですが!
リジーちゃん、まだ1回も、シドさんのドレス姿、見てませんねっ♡
ボロリ萌えが期待できない以上は別の萌えを探す……これ、正当ですよね!
だって悪女だもんっ♡
母を籠絡すべく、ニコニコと天使の微笑みを意識するリジーちゃん。
が、母の方はぴたり、と固まっています。
その心境は……(誰に似たのかしら)ってところでしょうかねぇ?
「え……けれど、それはシドに同意してもらわなければならないし……シドも、イヤがるのではないかしら……」
んん?
なんだか思ったより、微妙な反応ですねぇ!
もしかして! 母も観たいのかしら?
シドさんの、ウェディングドレス、す・が・た♡
読んでいただきありがとうございます!




