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伯爵令嬢に転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました。  作者: 砂礫零


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101/201

101.もしかしたら死にかけたかもしれません!?実は過労気味でした、変態悪女でございます!

 ふと気がつくと、そこは一面のお花畑。

 スノードロップに似ていますが、なんのお花かしら?

 見たことありませんねぇ……

 すぐ近くに小川が流れています。

 フワフワと楽しい気持ちになりつつ、お花をブチブチと摘んでいきます。


 切るものがあればラクなのに、と思った途端に、手には花鋏がっ!

 スゴいですね! リジーちゃんついに、書字じゃなくても魔法が使えるようになっちゃった!?


 変態悪女もここに極まっちゃいましたね!


 さて、小川の向こうもお花畑かな?


 何が咲いているのか、レッツ・ゴー……


「アルデローサ様」 後ろから急に裾を引っ張られました。


 振り返れば、シドが首を横に振っています。

 なんだか必死なお顔。


「行ってはいけません!」


 ……ん?

 このシチュエーションはもしや?


「どうして、わたくし死にかけなのかしら?」


 ふぅぅぅぅ、とすんごいため息をつくシドさん。

 夢の中のはずなのに、リアリティーありますね!


「連日徹夜で無理するからですよ。過労です」


 ……って、まじか。

 リジーちゃん、ヤりすぎですね!


「あら。それなら、人工呼吸して下さったら、生き返るかも!」


 ワクワクと目を閉じてスタンバイOK!

 となったところで、ペチンと額を叩かれてしまいました。


 夢なのに痛ひ。


「いや、まだ生きてますから、大丈夫ですよ」


「人工呼吸……」


 涙目のリジーちゃん。

 と、シドさんのお胸が顔に?

 んでもって、お手々が背中に……


 ぎゅうっとされて、おりますねっ!

 はぁうっ……

 これはこれで幸せ♡ 夢だけど。


 んー♡ ずっとこのままでイイかも?

 でもなんでかしら。

 この匂いは、お胸というよりは髪のような…………


 ………………

 ………………

 ……………ぱっちり。



 今度こそ本当に、目が覚めました。

 おはようございます。

 4月(アプリリス)は……3日くらい?


 生死の境から無事に舞い戻った私ことエリザベート・クローディス、享年いや違った、まだまだ生きてる16歳でございます。


 そのまま目だけをクリクリと動かせば、側には乱れたキューティクル・黒髪。

 シドさんですね!

 徹夜で看病してて寝落ち、ってところでしょうか。


 ……はぁぅっ!


 今、ズキュンとキちゃったリジーちゃん。


 な に そ の シ チ ュ 超 萌 え る っ …… !


 けれどもしかし!

 ここはこう……なんというか。

 萌えるのではなくて。


「ああっわたくしのためにそのような……次はわたくしが看病して差し上げる番っ」 というノリで、イキたいものですね!


 そしてメロドラマ的に婚約者としてポイントupを狙うのです!

 完璧ですね!


 シドを起こさないようにそろそろと身を起こしたところで、ナターシャがやってきました。


「まぁ、リジー様! 気付かれたんですね、本当に良かった!」


 そのままバタバタと両親を呼んできそうな気配。


「ちょっとお待ち」


「なんでしょう?」


「今は何日かしら?」


4月(アプリリス)の5日でございます」 ナターシャの言にびっくり。


 もう3日も寝ていたことになってしまいますよ……?

 ……どうやったら、そんなに寝られるんでしょうか。リジーちゃんっ!


「わたくし、こうしてはいられないわっ」


 がばっと立ち上がろうとして、お約束。

 ふらあっと、目眩に襲われ突っ伏します。


「ダメですっ!」 ナターシャが慌てて身体を支え、ベッドに戻してくれました。


「まだ寝ていらっしゃらないと。何しろ高熱がずっと下がらなかったんですから!」 


「ええ? ただの過労じゃないの?」


「過労をバカにしてはいけませんっ!」


 うーん確かに。

 工場経営の本にもありましたね!


『従業員の休養および福利厚生にはじゅうぶんに注意を払うべし』


 ばっちり覚えてますよっ!

 なにしろこの脇に、注意書きを加えといてあげましたからね!


『※福利厚生と銘打って社内研修や花見に駆り出しては、いけない』


 あ、ルーナ王国には花見の習慣なかったっけ。てへ。


「でも、もう大丈夫よナターシャ」 フラフラしつつも気を付けて立ち上がります。


「わたくし、まだまだお勉強しなくてはっ……時間はいくらあっても足りないわ……!」


 感動的に決まりました!


「お嬢様……!」


 ナターシャも瞳を潤ませています。

 よっしチョロいですねっ!

 早速、活動開始です……!


 ええ、本当に忙しいのですよ!

 お勉強のほか、アナスタシア様の原稿と結婚式の準備もありますからね!

 特に原稿執筆。これ最重要。

 もちろん、家の者には言えませんけれど。


 さて、と。

 まずはシドさんをリジーちゃんのベッドに引きずり込み……


 と、ここで。


「ダメだよ寝ていなくては」 この穏やかな声は、父ですね!


 渋みチョイ増しのイケメンパパ41歳様が、瞳を潤ませて近づいてきます。


「本当に危なかったんだよ、リジー。薬が効いて熱が下がらなければ、どうなっていたことか」


 頭をナデナデ、コツンとオデコを合わせて下さるのが、なんだか懐かしい感じですね!

 至近距離からのガン見にも耐えうる美貌もよろしい。


 が!

 リジーちゃんが気になったのは……


「薬? どなたかが飲ませて下さったんですの?」


「ああ、それなら……」 なんだか複雑そうな表情ですねお父様!


 これは……ワクワク。


「シドが」


 ぉぉぉぉうっ! 来ました!

 病気シチュ最大の萌え!

 すなわち。


 く ち う つ し ♡


 ですわねっ? ねっ?


 令嬢らしく、ぽっと頬を赤らめて口元を押さえるリジーちゃん。

 その手の下で唇がニンマリと歪んでしまっております。


「ど、どなたか目撃者が……?」


 捕まえて詳しく状況をきかねばっ。


「いや……その時はまだ、伝染病の疑いがあって……お父様たちはシドに追い払われたんだよ……それはもう、スゴい剣幕と……黒すぎる脅しで……」 ふぅぅぅぅ、と深いため息。


「お父様もリジーについていてあげたかった……! お母様なんて、心配のあまり寝込んでしまわれたし」


「お母様が!? わたくし、すぐにでもお見舞いしなければっ」


「大丈夫だよ、リジーが回復したと聞いたら、きっと元気になられるさ」


 父の説明によれば、母は私の部屋の前を飲まず食わずで一睡もせず彷徨い、オソロシイ状態になってしまっていたのだそう。


「書字魔法で無理やり眠らせて……効かなければ一服盛ろうとかそんな話も出たな」


「効いて良かったですわね」


「全くだ。たぶんお母様も、限界だったんだろう」 父、またしても深いため息でございます。


「それで、リジー」


「なんですの?」


「シドとも話し合ったんだが、その……」 口ごもっておられますね。

 言いにくそうです!


「やはり、工場はシドに継いでもらおうと思うんだ」


「あの? わたくしは?」


「その、リジーはちょっと……向いていないんじゃないかと」


 の、のぉぉぉぉぉぉっ!


 父からの宣告に、がぁぁぁん! とショックを受けてよろめく、リジーちゃんなのでした。

読んでいただきありがとうございます。


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≡≡≡日常系好きにオススメ!≡≡≡ i463137 
― 新着の感想 ―
[一言] お父様が八面六臂の大活躍ですね (`・ω・´)b ☆彡 正直、シドよりお父様萌えです(断言) 嗚呼……やっぱり工場長の身分が orz ww
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