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100/201

100.マジメなお勉強会に潜む呼吸困難の罠!?イケない妄想から逃れられない、変態悪女でございます!

 さてこうして婚約式も無事に終わり、一晩明けた4月(アプリリス)は2日。


「♪ムズムズしすぎてムズムズすーるわ、ムズムズしたらばイケないこーとを、ムズムズしーなーがーら考えまーしょう、そしたらはかどる執・筆さーぎょう♪」


 昨日に引き続き前世の楽聖ベートーヴェン様の 『歓喜の歌』 を鼻歌する、私ことエリザベート・クローディス。そして。


「何なんですかその歌は」


 そんな私を、遠慮の欠片もなく白い目で見る (もうナンチャッテじゃない) 婚約者のシドさん♡


 ここは例によって、リジーちゃんのお部屋です。

 ソコソコなお姫様ベッドには、母お手製のレース編みベッドカバー。

 ルームフレグランスは春に合わせたスミレの香り♡


 ナターシャさんもお母様もありがとう、なのですっ。


 さて、そんなお部屋でシドさんと2人きり、なのは。

『例によってアブないお色気小説の取材中?』 とか思ったお方!


 ハ・ズ・レ、でございますよ? うふっ (ウザ笑)


 なんとなんと!

 リジーちゃんとシドさんは、テーブルに向かい合い、マジメにお勉強中。なのでございます!


 本日のテーマは 『工場経営における100の基礎知識』


 ……………………。

 ……………………そう。

 ひゃく、もあるなんて! 詐欺でしょうか!


 でも、やると言ったからには、やらねばっ……なのです。


 シドのノートはすでに見開き半分ほど、やや角ばった読みやすい文字で埋まっています。


 けれども、しかし!

 リジーちゃんのノートは……


「その絵は? 蒸気機関ですか?」


 ひょい、と覗き込んでくるシドさんから、広げたノートを手で覆って隠します。


「どうして蒸気機関に見えるのかしら」


「安全マニュアルのことを考えておられるのかと」


「だからそれは、シドがお書き」


 蒸気機関の安全マニュアル。

 いえね、全く考えなかったワケじゃないんですよ?

 でもですね。


 婚約式での会食中にも、ヨハネスさんから少し伺ったのですけれども。


 リジーちゃん、サッパリ、わかりませーん (てへ) なのですっ!


 どうやら今世の私の脳ミソは、愛とエロと芸術以外には、動かなくなっているようですねっ。

 いーんだ別に。

 才女じゃなくて悪女だもんっ☆


「じゃあこれは、何なんですか」


「いやぁん、やめてっ」


 ノートを奪おうとするシドさんと守ろうとするリジーちゃん。

 おっ!? このやりとりはなんだか……


 甘酸っぱい青春の1ページっ!?


 ……ドキドキ。

 ならば、なすべきことはただ1つっ!


「じゃ、じゃあ見せちゃおうかなっ……」


「なんですか、もったいぶって」


「じ、人工呼吸してくれたらっ……」


 目を閉じてやや上を向き、スタンバイOK!

 いらっしゃいませ、青春の輝きっ……!



 と、その時。


「さあ、もう1時間経ちましたよ」


 バタンと扉が開いて顔を出したのは、執事のエデルベンノさん。


 実は工場経営にも詳しいという、なかなかスゴいナイスミドル様だったのです!


 リジーちゃんとシドさんは今、この方から工場経営の知識を学び中、というワケなのですねっ。


「いくつ書けましたか?」


「まだ42コです」


「ふむ、なかなか優秀」 シドがノートを示せば、エデルベンノさん目を細めます。


「お嬢様は?」


「わたくしは……全てを超越するのですわっ」 いえね。一応、本は読みました。3回。


 それで思ったんですけれども。


「実地でやってみて分からなくなったら、調べるとか誰かに聞けば良いのではないかしら」


「「お嬢様……」」 仲良くハモるシドさんとエデルベンノさん。


「いいですか、工場経営は俺たちだけじゃない。従業員の生活もかかっているんですよ」 とシドさん。


「その通りね」


「失敗は許されないのです。そのための基礎知識なのですよ」 とエデルベンノさん。


「だって……」 うなだれてスカートの裾をいじいじするリジーちゃん。


 面白く、ないんだもの。


 そんなこと言っちゃいけないのは分かっているけれど。


 供給量の調整? 需要調査? 在庫? 生産調整? 危機管理?

 何ソレ美味しいの?


 ですよ!

 言っとくけど、私のせいじゃないですからね!

 リジーちゃんの脳ミソのせい、なんですからねっ!?


「で、どれだけ書けたのでしょうか?」


「あっダメっ……!」


 今度はエデルベンノさんと、またしても青春な……


「さっさとお見せしなさい。あとでしっかり人工呼吸して差し上げますから」


 ん? シドさん?

 今 『しっかり』 とおっしゃいましたね?

 約束ですよ!? (てれっ)


 顔面崩壊しかけつつ、上品な微笑みを浮かべるナイスミドル様にノートを差し出します。


「……こ、これは……!?」


 おっ! 上品スマイルが一瞬で困惑顔にチェンジ!

 やりますねリジーちゃんっ! さすがは変態悪女っ!


 誰にもホメられない時は、自分で自分をホメるのですよっ……!


「……足、ですね……」


 しかし、横から覗き込むシドも、やや困惑気味。


「ふっ……」 ほくそ笑む、リジーちゃんです。


 なにしろ、これは。

 タダの足ではございません!

 シドさんの足、なのですよっ。


 勉強しつつチョイチョイと足先でつつき、ナデナデさせいただいた挙げ句のイメージ図、なのですが……


 果たして気づかれるでしょうかっ!?


 ワクワクとシドのお顔を注視していると、隣でコホンと咳払いの音。

 エデルベンノさんです。


「で、この足はナニを表しておられるのですかな?」


 それはモチロン、リジーちゃんのデレとアナスタシア様の物語の続きを暗示しておりますのですよ!


 ……とも言えないので、適当に誤魔化しましょうっ。


 さぁ、お色気作家の底力、とくと見せて差し上げてよっ!?


 というわけで、レッツ・スタート!


「……生産効率を上げ、ミスや事故をなくすためにはフットワークを良くしなければなりません。すなわち動線の確保。しかもただ移動しやすいだけではなく、なるべく作業員にストレスのかからない、工程に沿った配置を心がけねばなりません。より良い作業環境を確保するためには、随時の見直し即ちカイゼンが必要であり、それには作業員からフィードバックを得やすいシステムと人間関係を構築しておく必要があります。随時のフィードバックと速やかなカイゼン。それが作業環境をより良いものに保ち、ミスを減少させ、生産効率を上げ、ひいては作業員のモチベーション向上にも繋がるのです!」


 ふぅーーっ。


 難しそうな言葉、並びましたね!

 エデルベンノさんもシドさんも驚いておられるようですね!


 そして、リジーちゃんは。

 一気にまくしたてすぎましたね!


 ……ああ、なんだか……息が……


「お嬢様っ!?」


 慌てたシドさんの声が聞こえます。


 うん? なんか足元、ふらふらしますねぇ?


 と思ったら。

 がっしりとしたお胸が、後ろからしっかり抱き止めてくださいました。


 心落ち着くシドさんの匂い。

 嬉しいなぁ……もぅ、デレデレしまくっちゃいますよっ……


 ……でも。なんか目の周囲暗い。

 星がチカチカ飛んでる、気がします……おかしいなぁ……リジーちゃん今日は、酔っ払ってない、はずなのに……


「シドさん……人工呼吸……」


 最後まで言いきらないまま、闇に意識を呑まれてしまったリジーちゃん、なのでした。


読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか読んでいて、朝ドラの「〇が来た!」を思い出しました。鉱山と保険屋さんでしたっけ? (。´・ω・)? ま……まぁ、無理に工場をやらなくても……と思ってしましました (;'∀') ダメ…
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