聖騎士は自由になる ~プロローグ~
初投稿です!!
あらゆる国が競い合い、争い合う中一つの国のみが圧倒的な強さを誇っていた。
『フロイツ聖王国』
その国は決して己から攻めることは無い。あくまで中立、公平、傍観者の立場を貫き続けた。
しかし、それでも土地と権威を求めた新興の国々は『フロイツ聖王国』に挑んだ。
………………古参の国が何故攻めないのか考えもせずに……。
「よーし!もう少しだ!そのまま門を打ち破れぇぇ!!」
銀色に輝くフルプレートに包まれた指揮官は叫ぶ。
そしてそれに呼応するかのように兵達は勢いを増していく。
「ふはははははは!何が聖王国だ!所詮はただの籠城するしか脳のない臆病な小国ではないか」
男の国は別に聖王国に恨みがある訳では無い。
他国進出に目障りであり、金山を一つ保有しているからそれを奪いたい。それだけである。
「これで我が国は勢いづくぞ……!」
とはいえ疑問はある。
何故門を焼かれても何もしてこないのか……。
何故開門して打って出てこないのか……。
しかし、目の前には魔道士達によって焼き尽くされ、先が金属で出来た破城槌が叩きつけられた門がある。
――そろそろか……。
疑問を頭から振り切り、指揮官は手を挙げる。
「全軍突撃体勢に入れ!一気に押し切るぞ!!」
兵、魔道士共に綺麗に整列する。
新興国ながら軍の統率は取れているようだ。
そして指揮官は最後の一手の指示を出す。
「魔道士隊!放てぇぇぇ!!」
「「「「フレイ……」」」」
最後の一手――魔法による一斉砲撃で門を破壊し待機しているであろう敵軍を貫く。これがこの軍の常勝手段だった。
もちろんそれが出来ればだが……
――やはり聖騎士長の言う通りだな。
勝利を確信した兵に魔道士、指揮官はその言葉が分からなかった。
何処からこの声は響いているのか……。
どういう意味なのか……。
「まさ――」
まさか我々は罠に嵌められたのか。
指揮官のその言葉は正解であった。
しかし、その回答を出す前に聖王国の門前は静寂に包まれた。
――崩天
「聖騎士長、全敵軍殲滅いたしました」
「ん、ご苦労。ツィロイツは門の修復に当たれ」
「はっ!」
ツィロイツと呼ばれた深緑色のローブに包まれた男は空気に溶けるように消える。
「エリーゼ、報告」
「はい、エルゼル聖騎士長」
一方聖騎士長の秘書であるエリーゼは、生活魔法『念話』を使いながら情報を集めていく。
「ふぅ……」とエルゼルは五つの椅子がある円卓の中央に座る。
今回は運良く敵がまとまった陣形だったから良かったものの……。
「まさか、設置型の罠に一切かからないとはなぁ……」
エルゼルはわかり易く肩を落とし凹んでいた。
そこまで罠に力を入れていた訳ではない。
しかしその全てが見切られバレるなど……
「罠の改良……か」
1人そう呟くと『念話』を終えたエリーゼがエルゼルの元に戻ってくる。
「エルゼル聖騎士長、報告が上がりました……」
「ん?ああ、頼む」
「はい、敵軍は東西合わせて約4万。新興国にし
ては数がありますね」
エルゼルは眉を顰める。
エリーゼの言う通り敵軍の数が多すぎるのだ。
新興国は自国防衛や運営に人を割かなくてはいけない。
なればこそ4万なんて数の兵を率いれるはずが無いのだ。
……ならば、
「他国の干渉があったのかもな。……後で裏も探らなければな」
エルゼルは戦いを仕掛けてきた相手には容赦はしない。
例え間接的でも敵は徹底的に叩き潰す。
それがこの国の常勝手段であり、聖王国が負け無しの理由だった。
ちなみにこのやり方を貫き通し続けたためか、軍の一部では「怒らせたら怖い人ランキング」の1位に輝いていたりする。
「承知しました。その話は後ほど……。次に被害ですが……今回も死者負傷者は無し――」
「そうか!!ならば後は門を直すだけか?!」
「は、はい。ふふ、その通りでございます。」
エルゼルは顰めていた顔をパアっと笑顔にして、年甲斐もなく喜ぶ。
もちろん騎士としては常に気持ちを締めておかなければいけない。
それでも誰も注意しないのは、こういったエルゼルの一喜一憂する姿がエリーゼのお気に入りだったりするからだ。
「あの、それとエルゼル聖騎士長……」
「ん?どうした?」
緊張の解けたエルゼルにエリーゼがにこやかに話しかける。
「明日は16歳の誕生日ですよね!」
「あ、ああ。そういえばそうだったな」
「来年もよろしくお願いしますね」
聖騎士長職は聖騎士長が誕生日を迎える度に国と契約を結ぶ。
つまり明日が契約更新の日なのだ。
「次の作戦の話をしたせいか勘違いしてるようだが……エリーゼよ」
「はい?」
「俺は明日で聖騎士長を辞めるぞ」
最低でも1週間に1話は更新していきます……。




