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ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手  作者: 水源+α
四章 アスター迷宮でスクスク成長編
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ボッチ、金持ちに呆れる

祝50話!

 『学区』は、今まで見てきた町並みとは一味違っていた。


 先ず、人々の服装だ。


 駿みたく、外から入ってきた少数の人達のような平民服ではなく、大勢の男女が黒いローブを纏い、それぞれエナンを被っている。


     ※......エナンとは、良く魔女が被っている大きいとんがり帽子の正式名称。



 そのなかに平民服を着ている駿は、少々場違いな気がしてならないが、しょうがないことだろう。


 建造物も一味違っていて、駿が道中見てきた、主に煉瓦と木材を使用した民家だったのに対し、ここ『学区』の建造物は焼き石だけを主に使用し、民家よりかは幾分か頑丈にしようとする意図が理解できる。


 それに、一回り大きいため、入ったときは少し圧倒された。


 特に、駿の目の前に広がるこの光景こそ、『学区』と平凡な町並みとの違いが明らかになるだろう。


 それは、徒歩で移動している者も居れば、箒に乗って移動している者も居るのだ。


 皆が平然とした顔で箒に乗っているものだから、常識を知らないのはこちらの方だとつい錯覚してしまう。


「確か......街の中では魔法の行使は出来ない筈だったんだが......」


......学区は特別、ということか


 そういえばと、ここ『学区』の区役所的な役割を果たしているのは魔術学園の上層部と駿は城へ流れてくる噂話で聞いたことがある。


 分かりやすく説明すれば、学園長が区長の役割を兼任し、教頭が副区長の役割を兼任しているということだ。


 どういう『学区』独自の条令を出しているのかは知らないが、そのなかに恐らく『学区』内での魔法の行使を許可するという項目が入っているのだろう。

 

 それにここグランベル王国唯一勉学に励める場所であるため、多少のことは王室から免除されていることだろう。


 話が逸れてしまったが、あの門番が言っていた通り、ここは特別だと実感する。

 


 まるで王国から独立した、魔術師の国に踏み入れたみたいだ。


 そんなことを思いながら、綺麗に整備された道を進んでいく。


「......ほぉ」


本当にイメージ通りの街だな......魔術学園直属の『学区』は


 ここに来る前に、実は『学区』と聞いて大体こうだろうと想像していた。


 箒に乗って移動しているのは予想できていなかったものの、道行く人達の服装が平民服ではないことと、この綺麗で清潔なところは予想が的中し、少々嬉しく思える。


 『学区』について自分が想像していたこと、それ即ち、そうであって欲しいという羨望。


 『学区』に踏み入れたこと自体嬉しかったのだが、羨望通りの光景がそこにあるのであれば、嬉しさは二倍だろう。


それにしても......やっぱり金とか相当援助されているのかな。皆が持っているあの本、あれ絶対高価な魔術書だよな


 金の刺繍が多く表紙に付いている、いかにも高そうな魔術書を全員が持ち運んでいるため、ついそう思ってしまう。


それにあの杖......───ユカ、あの杖ってどんな性能か分かるか?


 魔術書の他に、『1』と表記された腕章を着けている一年生なんだろうか。その生徒達全員が統一して同じ杖を持っていることが気になり、すっかり鑑定スキルの代わりになったユカに聞いてみる。


”───そうですね。特筆すべきはやはり、あの杖の先端に埋め込まれている魔石ですね”


魔石?


”魔石とは、魔物の体内にある核、即ち心臓の役割をしている闇属性魔粒子で生成された石です。世間では魔道具マジックアイテムを作るための動力源として取引されており、それが冒険者達の収入源の一部となっています”


へぇ......で、あの埋め込まれた赤い魔石がどう違うんだ?


”あの魔石は、王都近くに存在するアスター迷宮の十階層の中堅的な役割を果す魔物、マジックスイーパーという亡者アンデットから取り出した魔石でしょう。マジックスイーパーとは、主に幻惑魔法を行使し、敵を混乱させた後、素早く接近して敵の魔力を容赦なく吸収する常套手段を得意としている魔物です。その魔物の魔石は他の魔物とは違っており、マジックスイーパーの習性により、敵から吸収した魔力を全て溜め込んでいる魔石なのです。敵から吸収した魔力をマジックスイーパーはアンデットで器官がないため、唯一溜められる場所として、魔石に魔力を溜め込むような習性がついたと言われています。なので、他の魔石とは比べ物にならないくらいに魔力を高めることが出来る魔力上昇型の魔石なんです”


「......なるほど」


つまり、その魔石を使って魔法を行使すると、普段とは比べ物にならないくらいに威力が上昇しているってことだな? 


”はい”


それ絶対高価だよな......でもそんなものを『1』の腕章着けた生徒全員が持ってるというね。金持ちすぎだなこの学園は......


”確かに、高値で取引されていますね。ダンジョンが一定周期に魔物を生成させるため、数が少ないなどの稀少性はなく、本当でしたら物価は安い方ですが......性能が性能なので”


そうだな......この魔石を使った魔道具マジックアイテムは長持ちもするだろうし、大幅に性能を強化できるしな。そんな魔石が安価で出回ったりしたら、いつ悪用されるか堪ったもんじゃねえよ


”はい。なので、相当高値で取引されている筈なのですが......『1』の腕章を着けたまだ若い生徒達全員にあの魔石が埋め込まれた杖を支給する......そこまで資金を費やす学園の意図が全く以て理解できません”


それな。まぁ将来有望視されている生徒とかなんじゃないか? いや、そうとしか考えられない。そうしないと見返りが来ないし......


”私も同じ見解です”


「......ふーむ」


 ユカと話し終わった後、この学園のことを少し黙考しながら街中を抜ければ、漸く学園の校舎に到着した。


 一言で言い表すのならば、『砦』と『城』である。


 多分だが、この『砦』が『城』みたいな校舎の囲い的な立ち位置なんだろう。


 造りは手抜きなど一切されているように見えない、見るからに頑丈な造りを施している。


「......ここって本当に学校なのか?」


 呆然とそんな何もかもスケールがでかい目の前の建造物を見上げながら、そうぼやいてしまう。


 王城とは見劣りすれど、それでもこの建造物は他の国で建てても城と勘違いされそうな出来と大きささだ。


というかこの国は本当に潤沢だなぁ......宝物庫とかどうなってんの? 空っぽなんじゃないの? ねぇ? 


 王にそこら辺問い詰めたくなった駿だったが、「いや......何を今更って感じだよな。うん」と、金の多さに呆れながらも、ルリアとの約束を果すために、入『城』───いや、入校するのだった。



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