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猫の憂鬱

えーと、一応百合っぽいんで注意かもです?

「にゃあ……」


 まるで溜息を付く様な仕草をしながら、屋根の上をトボトボ歩く一匹の三毛猫が居た。


 彼女の名前はモモ。つい最近カケルが名付けをしたばかりの、ネームドの大型新人である。

 そしてカケルの安易な名付けにより、雌猫モドキに性転換と種族転換してしまった被害者でもある。


「ニャウ!」


 そこの可愛いお嬢さん、そんな溜息付いてると、可愛いお顔が台無しだよ?


 そんな意味の気障(きざ)な言葉を掛けて来たのは、モモがこの街で知り合った真っ白な毛並みが特徴の雌猫である。

 そう、これだけ気障な言葉を言っているが雌猫なのだ……。


「にゃ?」


 何、ベルデバルド?

 ボク今ちょっと、アンニョイなんだけど……。


「にゃにゃ!」


 おやおや、それはいけません!!

 モモ様ともあろうお方がアンニョイとは!!


 私が適当な男共を連れて来て、モモ様に貢がせましょうか?

 貴女ほど美貌があれば、多くの男共が貢ぐと思いますよ!!


「にゃんにゃっ!」


 言わないで!

 ボクはまだ男で居たいんだよ!!

 男に貢がせるなんて絶対嫌!!


 彼女にとって、雄猫を(はべ)らせたり貢がせたりしても全く楽しく無かった。

 そもそも、アンデッドになってしまった事で頓挫したが、元々は可愛い狼系の女の子と(つがい)になりたかったのである。

 それが、どうして雄猫を侍らせる事になるのか……。

 そんな気持ちを悟ったのか、ベルデバルドがいつもの気障な言葉で彼女に何があったかを尋ねた。


 元々最初にベルデバルドと会った時は、雄猫のしつこいナンパを受けてうんざりしていた時である。

 モモは猫モドキになった影響か、猫の美醜が分かる様になっていたのだが、間に入って来たその猫は他の猫と違って中性的な美しさがあった。

 日本で言うところの宝塚と言うところであろうか。


 その美しさにモモが少し目を奪われていると、あっと言う間に雄猫を追い払って助けてくれたのだ。

 その時この街に来たばかりだと彼女に言うと、色々な場所を案内してくれたりと親切にもしてくれた。

 その後も街でちょくちょく会い、更に他の猫よりも知能が高くしっかりと会話が通じる為、モモにとっても大切な友人になっていた。


 だが色々と慌ただしかった事もあり、ベルデバルドに過去の事を話す事も無く、モモ自身も自分が雌猫になったと言う事をやや忘れ掛けていた。

 それが今日久々にナンパに遭い、忘れたかった雌猫になったと言う事実を突き付けられていたのだ。

 しかし、それを知らなかったベルデバルドは、まだ男で居たいと言う言葉に疑問を抱く。


「にゃ?」


 男で居たい?

 貴女程の美しい方が、男になりたいと?

 それは世界の損失ですよ!?


「にゃんっ!」


 違う! ボクは元々男の子だったんだ!!


「にゃうん?」


 元々とはどう言う……?


「にゃ」


 そう言えば、今まで話してなかったね。

 じゃあ、少しだけボクの事を話そうかな……。


 そうして、モモは少し前の事を振り返りながらベルデバルドに自分の事を話すのだった……。


 ◇ ◇ ◇


 ベルデバルドには前に言ったと思うけど、ボクには下に二人弟が居るんだ。

 それで、ボクは元々長男だったんだよ。


 ボク達三兄弟は昔から仲が良くて、いつも三匹一緒に暮らしてたんだ。

 でも気が付いたら、三匹一緒にスケルトンウルフになっててね。


 スケルトンウルフが分からない?

 うーん、何て言ったら良いのかな……。

 骨だけで動く、アンデッドって言ったら分かる?

 うん、そう。それは人型のスケルトンだね。

 ボク達はウルフ型のスケルトンで、元々は狼系の魔物だったんだ。


 え? そうは見えないって?

 まぁね……。ボク達は、ご主人様の眷属になって名付けをして貰ったんだ。

 その時に、種族が変化して今の姿になったって訳。性別が変わっちゃったのもこの時なんだよ……。


 ボク達がスケルトンウルフとして、意識を取り戻した後の事……。


「ガウ……」


 兄ちゃん、お腹空いた……。


「ガウン?」


 俺も空いたのかな?


「ガウガウ?」


 僕達って、お腹無いけどお腹減るのかな?


 今ではコテツと呼ばれてる末の弟は、スケルトンになった筈なのにお腹が減ったと言い始めたんだ。

 その頃はボクもお腹か減るのが完全におかしいとは思って無くて、疑問に思いつつももう一人の弟の現在レッシュと呼ばれている次男と一緒に流され気味だったんだよね。


 そこから、近くの村で野菜や肉を奪い始めたんだ。

 尤も、これも悪い事だって分かって無かったけどね……。


 それを数ヶ月くらい続けた頃かな?

 ボク達を討伐する為に、ご主人様の一行が村に派遣されたんだよ。

 ご主人様達は村で情報を仕入れると、ボク達の住処までやって来たんだ。


 最初は他の魔物が縄張りを奪いに来たと思って、隠れていると思われる場所に威嚇してたんだよね。

 でもご主人様を見た時、そんな考えは全部拭き飛んだ。

 アレはボク達の勝てる相手じゃない。絶対に敵対しちゃいけないと……。


 それなのに……。弟達が、いきなりご主人様に向けて走り出したんだよ!!

 ボクは焦って追い掛けたんだけど、コテツはご主人様に噛み付いて、レッシュは遊んで欲しそうにグルグルご主人様の周りを回っていた。

 それを見たボクは、もう駄目かもって思ったね。


 殺されちゃうかも知れないけど、敵対するつもりは無いって事を示したくて腹這いになってみたよ。

 正直、何で(ゆる)されたのか分からないけど、ボク達はご主人様の眷属になったんだ。

 でも、ご主人様は存在の怖さと違って、凄く寛容だったね。

 ボク達が人に危害を加えたり、物を盗ったりする事は禁じたけど、自由に行動する事は許可してくれたからね。


 その時に弟二人は犬に、ボクは猫に種族が変化したみたい。

 あの時の衝撃は忘れられないよ……。

 いつの間にか、いつもよりも視線が低くなってて、しかも身体が女の子になっていた事に混乱しっぱなしだったなぁ……。


 その後は迷惑を掛けた村に謝りに行ってから、この街へとやって来たって訳だよ。


 ◇ ◇ ◇


「にゃう」


 そう言う経緯で、ボクは女の子になっちゃったんだよ……。


「にゃご……」


 それは大変でしたね。

 まさか、既に性転換されていたとは……。

 ですが、その割には非常に女性らしいと思うのですが?


 ベルデバルドがモモの心を(えぐ)る様な質問をする。


「にゃ……」


 うぅ……。確かにボクは、昔も男らしく無いって言われてたけどさぁ……。

 でもでも、兄弟の中で体は一番大きかったんだよ!


「にゃにゃん?」


 ですが、話を聞いていると弟様達よりも、今は身体が一番小さくなったのでは?


「にゃぐ……」


 言わないでぇ……!!

 言われなくても分かってるよ……。

 今のボクに男らしさが皆無だって事は……。


「にゃーご」


 それは失礼。

 ふむ……。

 因みにモモ様は現在、男性がお好きですか? それとも、昔のまま女性が?


 ベルデバルドが少しの間熟考すると、性転換の根本の問題部分を尋ねた。


「にゃうん……」


 うーん……。正直分からないかな?

 ボクとしては女の子が好きなままのつもりだし、男を見ても何とも思わないんだけど……。

 ただもしかすると、男女の問題じゃなくて相手が猫だからって可能性もあるんだよね……。

 相手が狼だったら、また違ったのかも知れないかな?


「にゃうにゃう」


 ほうほう。

 では、私にもチャンスがあったりしますかな?


 そうベルデバルドは不穏な事を口にする。


「にゃにゃ!?」


 ベルデバルド、何言ってるの!?


「にゃごにゃご」


 いえね。私、元々他の猫とはかなり違っていて、会話が全く合わなかったんですよ。

 寧ろ人であるご主人との方が、やや一方的ではありますが会話が通じた程です。

 そんな中、私はご主人に惚れてしまったのも仕方無いと思いませんか?


 仕方無いかどうかは別にして、会話が合わないと言う事は非常に心に伸し掛かる事だろう。


「にゃにゃあ……?」


 えーと?

 それは仕方無いのかも……?


「にゃごん!」


 そうです! 仕方無いのです!!

 ですが、ご主人には既にお相手がおりましたし、ご主人が私を対等と存在として見て下さる事はありませんでした。


 寧ろ恋愛対象として見てたら問題である。


「にゃん……」


 それは……。


「にゃにゃ!」


 そんな時に出逢ったのが貴女様です!


「にゃ……?」


 へ……?


「にゃんにゃんにゃん!」


 私と同等な会話が出来るどころか、貴女様の方が頭が良いくらいです!

 しかも、こんなに可愛い見た目と裏腹に、途轍もない力を秘めていらっしゃる!


「にゃにゃにゃん……!?」


 ちょ、ちょっと待って!!

 会話がしっかり出来るって部分は分かるけど、可愛い見た目って……。

 ベルデバルドも女の子だよね……?


「にゃ」


 些細な問題です。

 ご主人も女性でしたしね。


「にゃにゃにゃにゃっ!!」


 いやいや!

 些細な問題じゃないよね!?

 女の子同士じゃ番になっても、子供出来ないよ!?


「にゃん……」


 それは悲しい事ですが、だからと言ってあの低脳共を番にするつもりはありません!

 それとも、モモ様は私の事がお嫌いですか……?


 ベルデバルドが少し悲しそうな顔をしてモモに尋ねた。

 そう尋ねられると、モモも無碍にする事は出来なくて、つい甘い事を言ってしまう。


「にゃにゃっ!!」


 嫌いじゃないよ!!

 嫌いな訳無いじゃないか!

 ボクだって、会話が出来るのはベルデバルドだけだもん!

 だから、ボクにとってベルデバルドは大切な人だよ!!


「にゃあ!」


 モモ様……! そんなにも私の事を……。

 では、すぐにでも番になりましょう!!


「にゃ……?」


 あれ?


 甘いを通り越して、ほぼ告白の様な台詞吐けばそうなるのも当然だろう……。

 そして、にっちもさっちも行かなくなったモモは屋根の上へと逃げ出した。


「ふみゃー!!」


 うわーん、ベルデバルド正気に戻ってー!


「みゃみゃ!」


 モモ様ー!

 私と番になってー!!


「ふみゃーん!」


 これも全部ご主人様のせいだ~!!


 その後、屋根の上で三毛猫を執拗に追いかける白猫の姿があったとかなんとか……。


TSでボクっ娘で猫耳で百合まで加えた、設定マシマシキャラなのにただの猫です……。

何故こんな濃い設定になったんだろう……。


取りあえず、モモとその親友の情報を載せておきます。


・モモ

カケルに雌猫もどきに進化させられた被害者。

現在の悩みは殆どの猫と会話が成立しない事と、親友で唯一会話が成立するベルデバルドに番になる事を迫られている事。


・ベルデバルド

中性的な美しさを持つ真っ白な雌猫。

高すぎる知性の為に、雄猫に目もくれず自分の女主人に恋をした。

だが、現在はその知性に付いて来れるモモに夢中である。

なお、これらが本物の恋かどうかは定かではない……。

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