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村への補償と街への帰り道

この話でアンデッド退治の話が完結する予定でしたが、少し長めになったので二つに分けます。

ストックが無くなったのが原因の時間稼ぎとも言います……。

「コテツ、レッシュ、モモ、待て!!」

「ワン!」「ガウ!」「ニャー!」


 カケルの眷属となった三匹が、三度目の村に突撃しそうになったのをカケルが止めた。

 彼等は肉体を得てから落ち着きが無かった。

 それも仕方無いかも知れない。

 何故なら彼等は、久々の肉体を得たのだから……。

 だからと言って、流石に三度も続けられるとカケルも注意せざるを得ない。


「良い? 君達はこれから、迷惑を掛けた村に謝りに行くんだよ? 今回は僕が補填するけど、次に迷惑掛けたら相応の罰を与えるからね?」

「ワウ!?」「ガゥ!?」「ニャー!?」


 カケルは驚いている三匹に対して、もし約束を破った際の罰を淡々と述べる。

 例えば彼等の目の前で美味しそうなご飯を食べつつ、彼等には何も与えないとか……。

 毛皮に(のみ)散蒔(ばらま)きつつ、お座りさせて我慢させておくとか……。

 どれも単なる犬や猫であれば虐待レベルだが、彼等にしてみても虐待レベルまではいかないものの非常に嫌な罰であった。


「これは、脅しじゃないよ? 分かった?」


 淡々と罰の事を述べるカケルに怯えたのか、三匹は真剣に首を縦に振りつつ分かったと声を上げていた。

 それは先程の盗むのが悪い事だと言って注意した時とは真剣さが段違いで、カケルは(ようや)く安心する事が出来たのである……。


「あ、後ミミ。少し、頼みたい事があるんだけど良いかな……?」

「はい。なんでしようか?」

「実は――」


 ミミに頼み事をしたカケルは、用事を済ませてから当初の予定通り村へと向かう事にしたのだった――。


 ◇ ◇ ◇


「すいませーん! 依頼のアンデッドの対処をしたので、報告に来ましたー!」

「本当に戻って来やがった……」

「マジかよ……」


 先程のやり取りや、カケル達が魔物と言う事のせいだろうか。

 やはり歓迎されてはないようだ……。

 とは言え、依頼を受けた以上はカケル達には報告の義務がある。


「ええと、報告良いですか……?」

「あぁ……。どうせ俺等に選択肢はねえしな……」


 そう言いながら、カケル達の中に居るミミをチラッと見る村人達。

 どうやら、先程の脅しが効いていたようである……。


「別にしっかり対応して頂けるのであれば、私は特に何もしませんよ?」

「そうかよ……」

「あのう……。報告しても……?」

「あぁ……、頼む……」


 カケルは先程あったアンデッドの事を正直に話した。

 三匹のスケルトンウルフがカケルに懐き、今は姿を変えて付いて来ていると……。


「つまり、その犬と猫が元アンデッドだと?」

「はい、そうです」


 村人達の(いぶか)しげな視線が、三匹のウルフモドキに注がれる。

 その視線を受け、三匹はカケルの前へて出て来た。


 だが、その行動に村人達はやや腰が引けていた。

 カケルからの説明が本当だとするなら、この三匹が今まで自分達を苦しめていたアンデッドなのだから……。


「な、何だよ……! やるのか!?」

「お、お前らなんて怖く無いぞ……!」


 言葉を震わしながら、鍬等を構える村人達。

 その姿にはは、先程の犬っころを殺してやると言っていた面影は無かった。

 余りにも姿が変わり過ぎているのが、彼等の目には不気味に映るのだろうか?


 だが、今回に関しては別に怖がる必要は無いのだ――。


「ワフ」「ガウ」「ニャー」

「「「え……?」」」


 三匹のウルフは、カケルに言われた通り村人達に謝りたいだけなのだから。


 三匹は立ったままだったが、村人達に向けて首を下げてお辞儀をしたのである。

 それで誠意が伝わるかは分からないが、カケルからは誠意を示すなら態度からだと言われていたのだ。


「この子達の保護者になった僕からもお詫びします。こちらは、被害の埋め合わせに役立てて下さい」


 そうして、カケルが頭を下げつつも村人達に差し出したのは一つの皮袋だ。

 村人の一人が恐る恐る皮袋を受け取り、その皮袋の中身を確認した。

 すると――。


「金貨!? それも、十枚も!!」

「マジかよ……!?」

「本物か……?」

「はい、勿論本物です。後、その中には新鮮なお肉も幾つか入っているので、そちらも役立てて下さい」


 それを聞き更に皮袋を探ると、出て来る出て来る。

 この辺りには居ない魔物が、十体ほど出て来たのである。


「おいおい……!」

「コイツはまさか……、マジックアイテムか!?」

「しかもこの量……」

「はい、先程作ったばかりなので効果は高くありませんが、お詫びの印としてお受け取り下さい」


 そう。ミミへの頼み事とは、この収納用のマジックアイテの作り方を教わる事だったのである。

 勿論、そんな短時間で作ったマジックアイテの効果が高い訳も無く、体長が半ナレイ程の魔物が十匹入れば限界で、時間の流れに関しても一切手を加えていなかった。

 とは言え、辺鄙な村にとっては十二分に価値がある代物で、通常であればまず手に入る様な物では無かった。

 なお、入っていた金貨はキーリが持っていたうちの一部で、魔物に関しては帰り際に遠回りをして狩って来たウルフ系の魔物であった……。


「し、しかし、こんな高価な品物を……」

「あぁ、そうだな。確か収納ポーチは最低でも金貨数十枚はする筈だろ?」

「それに、こんな量の肉まで……」


 そんなカケルの誠意が伝わったのかそれとも麻痺したのか、恐怖よりも困惑が表に出て来た村人達。

 彼等からしたら、金貨十枚でも大金である。彼等にとって金貨とは、一枚あれば大人一人が二年は暮らせる大金なのだ。

 それが十枚。つまり、大人二十人が一年丸々過ごせると言う、普通は見る事の無い様な大金なのである。

 因みに日本円だと一千万円程に該当するのだが、彼等の使うお金の量が極端に少ない為、下手したら十倍程の価値に跳ね上がっていたりする。


「えと、確かに金貨十枚は大金ですが、貴方がたの被害を考えればこのくらいは必要なのかなと……」

「確に食い荒らされた家畜の補填は、結構お金が掛かるが……」


 死んでしまった家畜の命が戻る事は無い。

 その為、何処かの村から譲ってもらったりして、再び育てる必要がある。

 その際に譲って貰う代わりに、返礼品として物品やお金を渡すのだ。

 勿論、同じ年齢くらいの家畜を譲って貰えれば一番良いのだが、交渉する村の家畜の状況によっては譲って貰えても子供の状態と言う事も有り得る。

 その場合、成長するまで時間が掛かり余分にお金が掛かる可能性すらある。

 だから、カケルが渡したお金が多過ぎると言う訳でも無かったりする。


「兎に角、それはお持ち下さい。勿論後で返せ等と言うつもりもありませんよ?」

「だが、いくらなんでもこれは……」

「貰っておけば良いじゃろ」

「「「村長!?」」」


 村長と呼ばれた杖を突いた老人は、村人達に一言告げるとカケルへとゆっくり歩み寄った。


「骨の坊主よ。本当に貰って良いのじゃろう?」

「はい。どうぞ、お納め下さい」


 結局村長が間に入った事により、村はカケルからのお詫びの品々を収める事となった。

 そして、その後はウルフ三匹を含めた全員で歩いてゆっくりと村を後にする。


 なお、行きと違い歩きになった原因は言うまでも無く三匹のウルフが原因である。

 無理やり乗ろうとすれば、キーリに乗る事も可能なのだが安定しないと言う理由で止めておいたのである。

 因みに、ツィードの糸で(くく)り付けると言う手もあったにはあったが、そっちは流石に可哀想と言う事でカケルが止めていた……。


「ワンワン!」「ガウガウ!」「ニャー!」


 (もっと)も歩きになった事は、肉体を得た三匹にとっては事関係無かったらしい。

 今も肉体がある事にに喜びながら、魔物を狩っていた。

 カケルが名を与えた事により急激な能力の向上があった訳だが、その変化にすぐさま適用するのは流石野生の獣と言ったところか。

 なお、お腹が空いていたのかどうなのか、三匹は狩ってすぐに何匹かの獲物は丸かじりにしていた。


「凄いね……。何度見ても、犬や猫とは思えない……」

「犬や猫ではありませんからね」

「見た目は動物の方にそっくりやけどな」

「カケルの名付けの影響だな」


 彼等の能力は厄災級のリッチの二十五パーセントもの魔素を与えただけあって、そこいらの魔物等目では無く蹂躪と言っても良い様な光景を作っていた。

 凄まじい速度で正面から近付き殴り殺したり、背後から音も無く忍び寄り首を掻っ切ったり、挙句の果てには警戒の及び難い空中から強襲していたりもした。


「心配する必要は無いみたいだけど、あまり遠くに行かないようにねー!」

「ワン!」「ガウ!」「ニャー!」


 カケルの言葉を分かったのかどうなのか、三匹はカケルの周囲を縦横無尽に跳び回りながらも、そこまで遠くには行かずに暴れ回っていた……。


 そんな風に見える範囲の魔物を一掃しながら、カケル達は遅くならないレベルでゆっくりとシャンティナへと帰って行くのだった……。


次でアンデッド話は完結します。

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